第12弾は、東工大です。今年の理系向けのラストの大学です。
<概略> (カッコ内は筆者が解くのにかかった時間)
1.素数生成式(22分)
2. 複素平面上の正三角形 (88分)
3. 空間内の4点が同一円周上に乗る条件 (49分)
4. sin関数を軸回転した立体の体積 (40分)
5. 極限の収束条件 (70分)
合計269分 (参考:試験時間180分)
<体感難易度>
易レベル:なし 、標準レベル: 1、やや難レベル:2 、難レベル:3,4,5
難易度は、鬼畜だった去年のさらに上をいく難易度だと思いました。
明らかな捨て問がない分、一題当たりの比重が増した格好です。
完答は、第1問だけで十分だと思います。
第1問
素数生成式に関する問題です。
かつてオイラーが、「nが40以下なら、n^2-n+41は全て素数である」ということを発見した逸話を参考にした問題と思われます。
今回のセットの中では一番易しい問題ですが、一筋縄ではいきません。
(1)は、「3を法として2と合同である」なんて仰々しい言い回しをしていますが、要するに、「3で割った余りが2である」と同じ意味です。
まず絶対値の中身が正か負かで場合分けです。今回はxは自然数なので、境目はすぐに分かります。
あとは、負の時は個別に数字を入れて3で割った余りをチェック、正の時はxを3で割った余りで分類です。
(2)は、(1)で調べたときに分かることですが、xを3で割った余りが2の時は必ず
|x^2-x-23|は3の倍数になります。しかもx=5のとき以外は必ず3より大きくなります。ということは、x=5の周辺以外では、必ず3個おきに素数でない数が入ってしまうことが分かります。
よって、xの連番数kをできるだけ大きくしようと思ったら、x=5の周辺を調べるしかないことが分かります。ということで、xが小さい場合に書き下してしまえばいいです。
この問題はせめて取っておきたいです。
<筆者の答案>
第2問
複素平面上の正三角形についての問題です。
これは計算をかなり工夫しないと泥沼にはまります。。
(1)は、まず正三角形だったらどんな条件が成り立つかを簡単な形で書くことが第一歩です。ABCが正三角形だとすると、辺ACは、Aを中心に辺ABを(どっち向きでもいいので)60°回転したものになります。この回転という要素は、複素数の世界では、複素数をかけることに相当します。これで簡単な条件式が立ちます。
(γ-α) =(cos60°±isin60°)(β-α) です。これを使って、「ABCが正三角形⇒与式」を証明するときには与式のγを消してしまいましょう。この時、積極的にγ-α、β-αの形を作るようにしないと、泥沼です。
逆の「与式⇒ABCは正三角形」を示すときは、(γ-α) =ε(β-α)とでもおいて代入し、εが cos60°±isin60°になることを言えてしまえばOKです。
(2)は、計算を工夫しないと、冗談抜きで死にます。
工夫の第一歩は、正三角形の重心を原点に持っていってしまうことです。
つまり、α+β+γ= 0とやってしまうことです。これを前提にすると、(1)を使って
αβ+βγ+γα=0も言えます。こうしてしまえば、P(z)と置いたとき、|α|=|β|=|γ|=|z|=Rが言えるので、大分見通しが良くなります、それでも計算は結構大変です。
<筆者の答案>
第3問
空間内の4点が同一円周上に乗る条件を考える問題です。
これは、(個人的に)盲点を突かれた問題でした。。。
(1)は、Hの式、ACの式、BCの式を出して連立するだけです。これは確実に取りたい問題です。
問題は(2)です。「同一円周上」というのをどうやって表現すればいいのか?
一番安易なのは、「3点を通る円の方程式をつくって残り1点が通ればいい」というごり押し戦法ですが、今回は残念ながらごり押せません。第一考えている点の乗っている平面が座標軸に対して斜めっているので、そもそも円の方程式を簡単に作れないからです。
となると、初等幾何の力を借りる以外になさそうです。
初等幾何の知識で、4頂点が同一円周上にある四角形の性質として、次のようなものがありました。
「お互いに反対側にある2つ角度の和は180°である」
私は最初、この方針で解くことにし、計算を進めました。角度はベクトルを使えばcosの形で計算できるし、行けるかと思いました。ところが、蓋を開けてみれば、とてもじゃないが手に負えないほど汚い数式になってしまい、途中で断念。(答案では、あえてその部分も消さずに残しました。式の悲惨っぷりがよく分かると思います)
他に手はないか、ついにはGoogle先生で調べてしまいました。すると、別案が見つかりました。「方べきの定理」。完全に忘却の彼方にあった初等幾何の定理でした。確かに学校で習ったはずなのに、、、
ということで、この問題、方べきの定理を使えばきれいに計算できます。これを試験場で思いつけというのは相当厳しいと思います。
初等幾何は、高校以降では何かとないがしろにされがちですが、こんな局面で盲点を突かれてしまうとは。。。恐ろしい問題でした。
<筆者の答案>
第4問
sin関数を、斜めの回転軸で回転してできる立体の体積を求める問題です。これも(2)が難問です。
(1)は、Pをxで書いているのが不親切極まりないと思います。xと書いてしまうと座標軸のことを言っているのか、個別の値を言っているのかが分からなくなります。よって、答案では、P(t, sint)と置きなおして進めました。
(1)は計算こそ長いですが、さほど難しくありません。
(2)は、(1)で断面積が分かっていても、難問です。
(※経験的に、わざわざ「(1)を使って」と書いてある問題は、それに+αが必要な難問なことが多いです。(1)を使うこと自体は書かれてなくても誰だって思いつくので。)
「断面積出して積分すればいい」というのはその通りなのですが、それでは「何で積分すればいい」のでしょうか?このとき「xで積分」と答えてしまう人は、勉強不足ですよ。
大事なポイントは、「断面積を出して、断面に垂直な方向に積分する」です。x軸は、今回の断面とは垂直じゃないのでxで積分はできないのです。
(2)が難問たる所以は、「断面に垂直な軸をどう作るか?」を考えないといけない点だったのです。
ということで、答案では、直線lの上に、新たにs軸という座標軸を設定し、sで断面積を積分することにしました。
(1)で求めた断面積はsできれいに書けないので、最終的にはsでの積分をtでの積分に変換する置換積分を使って進めました。
<筆者の答案>
第5問
極限の収束性を考える問題です。
発想力が必要なうえに、どういうときに発散して、どういうときに0に収束して、どういうときに0以外に収束するかという深い理解がないと解けません。十分に難問です。
(1)は部分積分を駆使して愚直に計算してください。
(2)で既に発想力が問われます。
kakの極限値を聞かれているので、(出題者の意向を忖度して)akは0に収束するのではと推測できます。それをまず示しましょう。
最初に出ているakの積分表示に注目すると、まず積分の中身が正なので、積分値も正ですね。そして、sinは1以下という事実を使うと、はさみうちの定理が使えます。
次に、kakは、どっかで見覚えがあるはず、、、(1)で出した漸化式ですね。これをkak=の形にして極限を飛ばしてみてください。見事にkakは定数に収束します。
(3)は、とりあえず与えられた式をdkとしてをk^nで括ってみましょう。
n>1なので、まず明らかにk^nは発散します。もう一方の因数k^(m-n)ak-Aは、m-n=1の時に0に収束することは(2)で確かめていますし、もしm-n>2だったらこれも発散する羽目になります。よって、dkが収束するには、最低限m-n=1でないとマズいことが分かります。
このときに、kak-Aを、(1)を使って計算すると、ak+2/(k+1)の形になりますから、あとkを2回かけてあげれば、0でない値に収束する可能性が出ます。
こんな形で、この問題は解いていきます。
(4)は(3)に輪をかけて難しいです。
(3)でも出ましたが、収束する可能性を作るには、∞×0の形になっていることが条件です。それを使えば、まずq,rをpの式で書けます。あとはpを決めるのですが、
このときdk-Bが十分大きなkではkの何次式で書けそうなのか?という発想が必要になります。
このような近似式を作る発想は、理学部数学科よりも工学部のほうがなじみ深い発想だと思います。
とにもかくにも大変な問題でした。。。
<筆者の答案>