ちょぴん先生の数学部屋

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リーマン予想って何だろう?

大分期間が空いてしまいましたが、いよいよリーマン予想の主張を説明したいと思います。

 

これまでの記事一覧です。本記事ではこれまでの記事の内容を前提にお話しするので、先にこちらを読んでください。

導入記事

https://stchopin.hatenablog.com/entry/2020/02/13/193838

素数の数は無限にある

https://stchopin.hatenablog.com/entry/2020/02/14/205857

調和級数

https://stchopin.hatenablog.com/entry/2020/02/22/170740

バーゼル問題

https://stchopin.hatenablog.com/entry/2020/02/22/182338

ゼータ関数素数のつながり

https://stchopin.hatenablog.com/entry/2020/02/23/124950

 

 前回の記事で、ゼータ関数という関数を下のように定義しました。

f:id:stchopin:20200222181630p:plain

そして、このゼータ関数は、素数を使って下のようにもかけました。

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このことから、ゼータ関数はすべての素数の情報を含んでいると考えられるので、ゼータ関数の性質を調べれば、素数の性質もわかるようになる、と考えられるわけでした。

 

さて、皆さん、「関数の性質を調べる」となると、まず何を調べます?

 

グラフを描きたくなりますよね。

 

グラフを描こうとすると、大体以下を調べたくなると思います。

微分したらどうなる? → グラフの増減、凹凸がわかる!!

・無限大に飛ばしたらどうなる?

0になる瞬間(ゼロ点)はどこ?

 

リーマン予想は、最後の「0になる瞬間はどこ?」に着目した予想になります。

 

お待たせしました。リーマン予想を簡単に書くと、下のようになります。

 

ゼータ関数ζ(s)が0になるようなsは、

 すべてs=1/2 + it (tは実数)となるだろう」

 

図で描くと下のようなイメージです。

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ゼータ関数が0になるs (ゼロ点)がすべて同じ直線に乗ってしまう(かつそれ以外にはない)だろう

という一大予想です。

 

これが分かると何が嬉しいか?

 

リーマンは自分の研究の中で、ある自然数N以下の素数の個数を計算する公式を作っていました。

 

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正確な式は難しすぎて書けないですが、ざっくり上の式のような感じです。

 

ゼータ関数の情報がなくとも、N/logNだけで大雑把には素数の個数を数えることができますが、どうしても誤差が出てしまいます。その誤差を解消するのに「ゼータ関数のゼロ点」の情報が必要になるわけです。

 

このゼロ点にきれいな性質があると分かれば、この誤差の式が書けるようになる⇒素数の個数を正確に数えられる⇒素数の規則性が分かる!!

 

という筋書きです。

 

後の数学者たちの努力によって、

「例の直線の上には無限個のゼロ点がある」ことは無事証明され、

虚数部分の小さい順に2兆個のゼロ点は全部この直線上にあることが、コンピュータの計算によって確認されています。

 

しかし、「この直線から外れた例外は1個もない」という証拠を誰も掴めていないのが現状です。少なくとも2兆個のゼロ点には例外がないのですから、正しそうな気がしますが、数学的な証明にはなっていません。

 

ないことを証明するのは難しい、いわゆる「悪魔の証明」というものです。

 

リーマンがこの問題を出題してから150年、この予想を完璧な形で証明した人物はまだ誰もいません。幾多もの数学者が挑戦しては敗れ去り、中には精神病になったり自殺したり、、といった例も少なくありませんでした。

 

こうしたことから、手を出してはいけないタブーのような問題扱いをされてきました。

 

ところが、このゼータ関数のゼロ点の並び方と、原子核のエネルギーの並び方が酷似しているという事実が分かり、にわかに物理学の方面からもリーマン予想が注目されるようになります。

 

こんな経緯もあって、現在では数学者と物理学者が共同でリーマン予想に取り組むプロジェクトが動いており、つい先日、「物理の問題を解く過程でリーマン予想の証明に成功した!!」とする論文が発表され、審査されている最中だと思われます。

(※残念なことに、その論文を書いた人は亡くなってしまいました)

 

ひょっとしたら、数学の世界だけではどうしようもない難問が、物理の力を借りることで解かれるのかもしれませんね。

 

 

 

ということで、長くなりましたが、リーマン予想について簡単に紹介しました。

もし興味を持たれましたら、ぜひ賞金1億円かけて挑戦してみてはいかがでしょうか?(冗談です)