ちょぴん先生の数学部屋

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平成の東大理系数学 -2006年-

このシリーズでは、平成の東大理系数学の問題を1年ずつ遡って解いていきます。

東大の数学の問題は、難易度は高いですが良問の宝庫であり、演習価値が非常に高いです。

(時々、どうしようもなく難易度が高く、筆者の力量でも解けない問題が出てくることがありますが、どうかご容赦くださいm(_ _)m )

 

14回目の今回は、2006年の問題です。

第1問

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点列が特定の曲線上にあるかどうかを判定する問題です。見かけはベクトルですが、ベクトルっぽいことはほぼしません笑。

 

(1)と(2)は独立しているので、それぞれ考えましょう。

 

(1)は、P1とP2の座標を文字で置いてP3を表現、P3のx座標y座標の掛け算が1にならないことを証明することになります。ツールとしては、相加相乗平均が有効です。

 

(2)も同様に、P1~P3の座標をsin,cosで書いて、P4とOとの距離が1になることを示せばよいです。

 

<筆者の解答>

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第2問

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文字列の出方を考察する、確率の問題です。易しめの問題です。

 

(1)は、あり得る文字列を列挙すれば終了です。

 

(2)は、xが途中に一個も出ないとき、xが途中に1個だけ出る場合で場合分けですね。

文字の種類が変わるタイミングが何回出るかに注目すればよいでしょう。

 

<筆者の解答>

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第3問

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点の直線による対称移動に関する問題です。計算が面倒な問題です。

 

(1)は、垂直二等分線が「元の線分と垂直」「線分の中点を通る」という2つを満たすことに注意して、与えられた条件を愚直に処理するしかありません。答えは結構汚いです。

 

(2)の条件は、要は「tan(θ/3)=-1/αがいつでも成立する」ということです。

見た目の通り、tanの3倍角の公式が要求されますが、そんなものは覚えているはずもないので、その場で作ります。

 

あとは、(1)の答えからθを消去して、αの恒等式だ、というロジックに持ち込む形です。

もし(1)でしくじっていると、pがきれいに因数分解されて出てきません。。。

 

<筆者の解答>

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第4問

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とある整数の方程式の解を考察する問題です。

 

(1)は、調べるパターンがたかが6通りしかないので、下手な小細工をするぐらいなら愚直に全部調べてしまいましょう。

 

(2)は(a,b,c)を代入した式と、(b,c,z)を代入した式を作って連立すると、zの候補として、aとbc-aが出てきます。aは当たり前なので、bc-aがcより大きいか否かを調べましょう。

(1)からc>b>3となっていることに注意です。

 

(3)は、(2)からほぼ自明でしょう。(2)のロジックに従うと、次から次へと解の組みを作ることができて、しかも単調に増加します。

 

<筆者の解答>

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第5問

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一般項を計算できない数列の極限を考える問題です。(3)が難問です。

 

(1)は素直に数学的帰納法で良いでしょう。

 

(2)は、(1)を使うと、0<an<1/2nが分かるので、これを全部足し算すればよいことが分かります。このとき、右辺に調和級数が登場しますが、調和級数は、積分を使用することでlognで評価できます。

ちなみに、このようなa1~anの平均値を「チェザロ平均」と呼び、チェザロ平均の極限は、an自身の極限と一致することが知られています(証明には、大学で習う忌まわしきε-δ論法が必要になります)。(1)の結果からan→0はすぐわかるので、確かに(2)の結果も0と一致してますね。

 

(3)は難しいです。

まず、(1)からnan<1/2が分かるので、「極限が1/2になってくれたらいいな・・」と淡い希望を持つことになります。

このもとで、今度はnanを下から評価しに行きます。そのためには、bn < f(n)が何かしらほしいわけです。

今、極限が1/2になってほしいので、できるだけ2nと性質が近いものをf(n)にしたいです。

ここは決め打ちでf(n) = 2(n+1)でやってみると、bnとの大小関係をうまく調べることができます。

これによって、はさみうちの定理により、無事極限が1/2だと示せます。

 

1/2になってほしいという願望から逆算してアイデアを出す必要がある、難しい問題でした。

 

<筆者の解答>

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第6問

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逆関数積分を計算する問題です。

 

(1)は、微分してグラフを調べればよいです。f(x)にはe^xしか登場していないので、t=e^xと変換してから微分するとスッキリ行きます。

 

(2)は、逆関数g(x)の形は直接出せませんので、何かしら工夫をしないと積分が計算できません。

 

最初に思いつくのは、g(x)=yと変数変換する方法ですが、こうなると積分の中身が、(yの一次式)×(e^yの分数関数)となって計算を進めるのが困難です。

 

となれば、初心に帰ります。積分とは、もともと面積のことでした。

ということで、この積分の表す図形を、図に書いてしまいましょう。すると、求めたい積分は、

「デカい長方形」-「小さい長方形」-「f(y)の積分」と書けることが分かります。

 

長方形の面積は比較的容易に計算でき、f(y)の積分なら、e^yの分数関数しか登場しないので、積分計算ができる形になっています。

 

このような図形的な考察によって、積分を計算することができます。

この発想ができるかが問われる、難しい問題でした。

 

 

<筆者の解答>

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