ちょぴん先生の数学部屋

数学の楽しさを、現役メーカーエンジニアが伝授するぞ!

平成の東大理系数学 -2004年-

このシリーズでは、平成の東大理系数学の問題を1年ずつ遡って解いていきます。

東大の数学の問題は、難易度は高いですが良問の宝庫であり、演習価値が非常に高いです。

(時々、どうしようもなく難易度が高く、筆者の力量でも解けない問題が出てくることがありますが、どうかご容赦くださいm(_ _)m )

 

16回目の今回は、2004年の問題です。

第1問

f:id:stchopin:20210902082629p:plain



正三角形が放物線に内接する条件を求める問題です。一見簡単そうに見えますが、計算量が意外とエグいです。

 

まず、PとQの座標を文字α、βで表現して、長さと傾きの条件からまず2本の方程式が立ちます。

 

問題は、Rの座標をどうやって求めるかです。

 

正三角形ということで色々な処理の仕方があるかと思います。

 

自分が最初に思いついたのが、PQベクトルをPを中心にして60°回転すればPRベクトルが出来上がるということで、回転行列を使ってRの座標を計算する方法で、答案はその方針で解いています。

 

回転行列で解く方法を選んだ理由は、長さと角度の情報を一度に処理できるからです。

 

あとは、求めたRの座標が、放物線上にもあるということで処理が進みますが、意外と長い計算が必要です。

 

行列に馴染みのない人用の別解も用意しました。

 

これは、PR=QRとなることから、「Rは辺PQの垂直2等分線上にある」という事実からRの座標を求め、Rと辺PQとの距離が√3/2aになるということからaを求めるという方法です。

こちらも、aの方程式の処理が中々大変です。。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200408212228p:plain

f:id:stchopin:20200408212257p:plain

 

第2問

f:id:stchopin:20210902082651p:plain



平方数の下2桁、下4桁が何になるかを考察する整数問題です。(1)から(2)への誘導が非常に巧みです。

 

(1)は、いきなり平方数の下2桁を考えるのは大変なので、2乗する前の整数の下2桁を考えることにします。nの下2桁がc,dだとすると、n^2の下2桁は、

一の位が、d^2の一の位と一致、十の位が20cd+d^2の十の位と一致します。

 

20cdが20の倍数なので、20cd+d^2の十の位は、(繰り上がりを考えなければ)2cdの一の位 + d^2の十の位 となりますが、前者は必ず偶数となるので、n^2の下2桁a,bの和が偶数になるには、d^2の各位の偶奇が一致する必要があることが分かります。

この条件を満たす2桁以下の平方数は、00, 04, 64の3つしかないので、bすなわちd^2の一の位は必ず0か4となります。

 

(2)は、下4桁が全部同じ数字なので、下2桁の和は当然偶数になります。ということは、(1)から、下4桁としてありうる数字は、0000か4444しかないことが分かります。よって、4444のケースが不適なことが言えれば、証明できたことになります。

 

4444のケースを排除するには、背理法ですね。

 

M^2 =10000m+4444 = 4×(2500m+1111)と仮定すると、Mが整数となるので、2500m+1111が平方数でないといけません。

 

ところが、2500m+1111の下2桁は11なので、(1)から平方数になりえません。これで矛盾が発生したので背理法成立です。

 

このように随所に(1)が登場するという、巧みな誘導が光る問題でした。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200408212345p:plain

 

第3問

f:id:stchopin:20210902082711p:plain



いわゆる「内サイクロイド」と呼ばれる曲線を題材にした面積の問題です。

 

最初の関門は、Pの軌跡をどうやって求めるかです。

考えやすいように、Cの中心を原点にして、Pが最初(10,0)にあることにしましょう。

 

円を滑らず転がすので、2つの円の既に通過した円弧の長さが等しいことに注目できると、2つの角度の関係を求めることができます。

(ここでいう角度とは、Pがどれだけ回転したかを表すθと、円Dが最初の位置から比較してどれだけ移動したかを表すΦの2つです)

 

これにより、角度の情報を使ってPの座標をθを用いて書くことができます。

 

θが0から2πまで動くことから、Pの軌跡を大雑把ですが描くことができます。

 

あとは、図形的な考察を交えながら、囲まれた面積を出していきますが、そこでの積分計算が最後の関門。計算が大変なので、焦らず進めましょう。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200408212419p:plain

f:id:stchopin:20200408212446p:plain

 

第4問

f:id:stchopin:20210902082733p:plain



入れ子状になった関数列の方程式の解の個数を考察する問題です。

 

(1)は、f1(x)のグラフを描いて横棒との交わりを考える、お馴染みの解法です。

ここで、解の個数が3個になる範囲ではxが-2<x<2になるだけでなくf1(x)も-2<f1(x)<2になっていることに気づけると、(2)以降で役立ちます。

 

(2)は、まずf1(x)=Xと置くと、f2(x)=X^3-3x = f1(X)となるので、(1)から、

f1(X) = aを満たすXの個数が分かります。このXが取りうる値に注目できると、個々のXに対して、f1(x) = Xを満たすxの個数を数えることができます。

 

(3)は、数学的帰納法で良いでしょう。解く方針は(2)と一緒です。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200408212518p:plain

 

第5問

f:id:stchopin:20210902082756p:plain



方程式の解の近似値を求める問題です。発想は何も難しいところはないのですが、大量の小数の計算が必要であり、電卓なしでは解き切るのは厳しいでしょう。

 

(1)は、AとBがダブるかダブらないかで場合分けするだけで、特に難しいところはありません。

 

(2)は、(1)から 16+12r-r^3 =96/πが分かります。ここで、3.14<π<3.15なので、

96/3.15<16+12r-r^3<96/3.14 と評価できますが、当然36÷3.14の計算をしないといけません。

 

これが無事にできたとして、14.476 < 12r - r^3 <14.574 が分かりますが、

今度は12r - r^3にr=1.〇をいくつか代入してあたりをつけないといけません。

rを小数点以下1桁で計算してみると、1.4<r<1.5まで分かります。

 

最終的に四捨五入して小数点第1位まで求めるので、答えは1.4か1.5です。

 

どっちかを判定するには、1.45を代入する必要があります。

小数点以下2桁の小数の3乗なんてやりたくないですね。。。。でも止む無しです。

(筆者は普通に電卓を使ってパパっと計算しちゃいましたが笑)

 

つくづく電卓のなかった昔の人たちは偉大だと感じますね。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200408212547p:plain

 

 

第6問

f:id:stchopin:20210902082821p:plain



サイコロの目に応じてカードを裏返す、確率問題です。

 

(1)は樹形図を描くやり方でもいいのですが、このゲームの性質に注目できるといいと思います。つまり、1か2が偶数回出れば最初と同じ色、奇数回出れば最初と違う色(他の2つも全く同じ)という性質に気づけると非常に楽です。

この性質から、サイコロの目の出方が自ずと決まってきます。

 

(2)も同じ路線で、、、と思いましたが、最後のΣ計算で行き詰まってしまったので、(2)は確率漸化式で行きます。

 

漸化式を作りやすくするために、並びは無視して白の枚数だけで状態を分類するとスッキリします。例えば、白2枚になる確率が分かれば、「黒白白」「白黒白」「白白黒」は対称性から等確率で出るので、1/3してあげればよいのです。

 

白3枚は偶数回目、白2枚は奇数回目しか出ないので、それぞれを独立で考えれば答えが出ます。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200408212630p:plain