このシリーズでは、平成の東大理系数学の問題を1年ずつ遡って解いていきます。
東大の数学の問題は、難易度は高いですが良問の宝庫であり、演習価値が非常に高いです。
(時々、どうしようもなく難易度が高く、筆者の力量でも解けない問題が出てくることがありますが、どうかご容赦くださいm(_ _)m )
22回目の今回は、1998年の問題です。
第1問
3次関数の極大値と極小値の差を考える問題です。この年のセットでは一番易しい問題です。
まずaの式がばらけているのがイヤなのでA=a-1/aとおいて微分しましょう。今問われているのは、あくまで極値の差なので、解と係数の関係を使って効率よく計算を進めましょう。
<筆者の解答>
第2問
4つの平面に囲まれた立体に含まれる格子点を数える問題です。
いきなり立体で考えるのは厳しいので、体積を求めるのと同じような感覚で、平面z=m(mは整数)で切ったときの断面に含まれる格子点を数えるという発想で行きましょう。
mの値によって場合分けが生じますが、実質-n<m<nを考えれば十分です。mがこれ以外の値の時はそもそも断面が存在しません。
こうして断面の格子点を出したら、それをΣし、極限をとればよいです。
<筆者の解答>
第3問
2円とx軸に接する円を次々と作った時に、最終的に円がどの位置に行くかを考察する問題です。これは計算の進め方をよく考えないと泥沼にはまります。
(1)は実質qnの漸化式を求める問題です。
まずは、Cnの式が、(x-xn)^2+(y-rn)^2 =rn^2と書けるので、Cn+1, Cn, Cn-1が接する条件を考えましょう。円の接する条件は、「円の中心間の距離=半径の合計」です。
さて、(1)ではxnを消してrnだけの式にしたいです。そのためにはルートをとる必要がありますが、問題になるのは、xn,xn-1,xn+1の大小がどうなっているかです。
C0,C1から、試しに円を描いてみると分かりますが、nの偶奇によって大小関係が変わります。具体的には、nが奇数の時xn-1<xn+1<xn, nが偶数の時xn<xn+1<xn-1 となります。ですので、ルートをとる時は、(-1)^nを使って符号を調整してあげましょう。
これで、xnをすべて消すことができるので、rnの漸化式、ひいてはqnの漸化式が立ちます。漸化式はフィボナッチ数列の形をしており、q0=1, q1=1なのでqnは全部整数です。
(2)はpnの漸化式を求めます。(1)で求めたxnとrnの関係式を使うと、pnとqnの関係式を作ることができます。このうちの2つを足してあげると、qnの漸化式を適用することで、qnを消すことができます。すると、pnもまたフィボナッチ数列の形で、p0=0, p1=1なので、qnに比べて番号が一つ遅れた数列になります。
あとは、ユークリッドの互除法を使うことでpnとqnが互いに素なことも証明できます。
(3)は、xn = pn/qn と書けるので、(1)(2)の漸化式を使うと、xnだけの漸化式ができます。
ここで、α=1/(1+α)を使えとヒントがあるので、xnからαを引いてしまいましょう。このとき左辺はαを、右辺は1/(1+α)を引くと見通しが良いですね。すると、
|xn+1 - α| < |α||xn - α| が言えるので、あとは|α|<2/3が言えればいいですね。
αは実際に解いてみると、α=(-1+√5)/2となるので、確かに|α|<2/3を満たしています。
不等式が証明できれば、それを何度も使ってはさみうちの定理を使えばいいですね。
まぁ、問題文の式を見た時点でαが極限値になることはモロバレルですが笑。
この問題でやっていることは、フィボナッチ数列の隣り合う2つの項の比が最終的に幾つになるかを解いていることになります。
ここで、このαは見覚えがある数字のはずです。一般に、このαを使った、「1 : α」を黄金比と呼びます。ここまでの結論として、「フィボナッチ数列の隣り合う2つの項の比は、極限で黄金比に近づく」という事実が分かるわけです。
<筆者の解答>
第4問
3次関数の、各整数での値の整数部分の個数を求める問題です。本セットの最難問だと思います。
まず、f(x)の式がごちゃごちゃしていますが、惑わされずに微分して増減を調べてみると、0から36nまで単調増加し、x=18nで点対称になることが分かります。
今回の場合は、yの値の整数部分の個数が知りたいので、xが1増えるとyがどのくらい増えるのかが気になってきます。
もしグラフの傾きが1未満であれば、xを1増やしてもyは1以上増えることがありません。よって、もしy=1.○○という点があれば、xが増えたときに、いきなりyが3.△△になることはなく、かならずyが2.□□となる点が存在することになります。よって、この区間では、yの整数部分は、1,2,・・・を隈なく取ることになります。
逆にグラフの傾きが1以上であれば、xを1増やせばyは1以上かならず増えるので、もしy=1.○○という点があるときに、次の点がy=1.■■となることはないです。よって、この区間では、yの整数部分はダブることがありません。
これに気づけると、y=f(x)を、傾きが1以上になるか1未満になるかで区間を分けることで、この議論をすることができることが分かります。
この傾きの大小で話が変わることに気づけるかが大きなポイントでした。
<筆者の解答>
第5問
ベクトルの漸化式の極限を考える問題です。
まずは、代入してひたすら計算を繰り返してxn, ynの漸化式を出すことに集中しましょう。
計算を頑張ると、ベクトルの漸化式は、
スカラー量a(ベクトルでも行列でもない量)× 定数行列A を係数にした、等比数列もどきになります。よって一般項は Pn = (aA)^(n-1) ×P1 になります。
ここで、行列Aのn乗の計算が必要になりますが、これはケーリーハミルトンの定理を使うことで解決できます。
最終的には、a^nの極限がどうなるかを考えればよく、収束する条件は-1<a<1となりますが、1にのみ等号があり、-1には等号がないことに要注意です。
これによってθの範囲が求まります。
最後の極限を求める場面ですが、a=1のみ例外になることを見落としがちなので注意しましょう。つまりa≠1であれば、a^n→0ですが、a=1であればa^n→1です。
余談ですが、問題文の漸化式の右辺にある式は、「グラムシュミットの直交化」という作業をしています。高校数学流にいえば「ベクトルの正射影」です。
2本のベクトルa,bがあって、a,bが平面αを作っているときに、平面α上にあるベクトルのうち、aと垂直なベクトルを計算する手法が、「グラムシュミットの直交化」です。
試しに、問題文のOQnの式に、aベクトルをかけてみると、0になることが分かります。
<筆者の解答>
第6問
四角錐のうち円柱の外側にある部分の体積を計算する問題です。至って標準的な体積の問題です。
平面z=tで切った断面を考えて、断面積を積分するというお馴染みの解法で解けます。
今回は断面積をだすのに扇形の面積が必要なので、角度設定をすると見通しが良いです。
<筆者の解答>