ちょぴん先生の数学部屋

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平成の東大理系数学 -1996年-

このシリーズでは、平成の東大理系数学の問題を1年ずつ遡って解いていきます。

東大の数学の問題は、難易度は高いですが良問の宝庫であり、演習価値が非常に高いです。

(時々、どうしようもなく難易度が高く、筆者の力量でも解けない問題が出てくることがありますが、どうかご容赦くださいm(_ _)m )

 

24回目の今回は、1996年の問題です。

第1問

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円を一次変換で変換した図形の条件を考える問題です。

 

まず、円Cがfによってどんな図形f(C)に変身するかを調べないことには始まらないので、C上の点Pをcosθ、sinθでパラメータ表示して、f(P)を求めましょう。そしてθを消去すればf(C)の式が求まります。

 

θを消すときに、(a,b)≠(0,0)が必要になりますが、もし(a,b)=(0,0)だとf(C)は常に原点になってしまい、問題文の条件を満たしません。よって、(a,b)≠(0,0)として問題ありません。

 

f(C)は円になるので、円の中心のx座標に関して、問題文の条件を議論すればよいでしょう。

 

<筆者の解答>

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第2問

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連立不等式の解の条件と、2次方程式の解の条件との関係性を調べる問題です。

 

これは、前半の条件と後半の条件のそれぞれを、分かりやすく言い換えていく作業がメインの問題です。

 

前半は、2つの不等式をst平面上のグラフとして表現して、領域が第1象限を侵略しているか否かを調べればよいです。

 

後半は、おなじみ2次方程式の解の配置問題なので

・判別式

・軸の位置

・端点の正負

の3つに注目して条件出しをしましょう。

 

条件の言い換えが済めば、実は前半と後半が全く同じになることが分かります。

 

<筆者の解答>

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第3問

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立方体の頂点が「見える」ための半径rの条件を調べる問題です。これは空間認識能力が十分にないと厳しい難問です。

 

まずは、「見える」の理解が必要です。

問題文の表現が分かりにくいのですが、よくよく噛み砕いてみると、

「PからAが見える」=「PでSの接平面αを考えたときに、Aがαの(Oと)反対側にある」がわかります。図に描くとイメージできるでしょう。

 

(1)は、これをもとに、ある特定の点(例えば(0,0,r))でA1~A8のすべてが見えなくなる状況を考えれば、すべての点からA1~A8が1個以上見えるには、球が立方体にすっぽり収まっていないといけないことが分かります。

 

これで必要条件が分かったので、それが十分条件にもなっていることを言えばよいです。(文面にして伝えるのはなかなか難しいですが。。。)

 

(2)は、ある特定の点(例えば(r/√3, r/√3, r/√3))について、A1~A8のうち1個しか見えない状況を考えると、αと立方体の各辺との交わり方から必要条件が分かります。

あとは(1)と同様に、これが十分条件にもなっていることを説明すればお終いです。

 

<筆者の解答>

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第4問

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期待値の問題です。

 

(1)は、期待値を考えるので、an = m (1<m<6)となる確率pmを考えれば十分です。(an=0になる確率を考えても、期待値を計算するときに0をかけるので、無駄になってしまいます。)

pm は、c1~cn-1がすべてm以下で、cn=mとなる確率として計算できます。

pmが求まれば、E(n) = Σm×pmで期待値が計算できます。

 

(2)は少し難しめです。

まず、a1~anに含まれる「2」の個数をlnとしましょう。

このとき、an+1 = 2となってlnが増える場合は、c1~cnがすべて2以下でcn+1 =2となる時に限ります。その確率は、(1/6)*(1/3)^n と計算できます。

 

この確率は、「n回目からn+1回目にかけて2の個数がどれだけ増えるか の期待値」と言い換えられます。

 

よって、N(n)は、この確率(1/6)*(1/3)^k をk=0からk=n-1までΣしたものになります。

 

<筆者の解答>

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第5問

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水筒に物体を押し込んだ時に上昇する水嵩f(t)と、物体の形状r(z)の関係性を調べる問題です。

 

この問題の場合は、z>0の領域にせり上がってくる水の体積は、物体のz<0の部分によって押しのけられた体積に等しくなります。これにより、積分を使った方程式が立ちます。

 

こうなれば、tで微分して、積分を解消しましょう。積分区間にtの関数g(t)があるので、微分すると、積分の中身にg(t)をぶち込み、それにg'(t)をかけたものになります。

 

<筆者の解答>

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第6問

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原点で接する楕円が単位円に含まれる条件を求める問題です。

 

(1)は、CとDの式を連立して・・でも行けるかもしれませんが、C上の点Pが

全てDの中に入っている、と処理したほうが見通しが良いでしょう。

 

計算を進めると、t=sinθとして、tの2次関数g(t)が-1<t<1の範囲ですべて1以下になるαとβの条件を求める問題となるので、-1<t<1におけるg(t)の値域を考えましょう。

αとβの大小関係と、g(t)の軸の位置で場合分けです。

 

(2)は、Cの面積SがS=π√(αβ)となるので、(1)で求めた領域と、双曲線αβ=(S/π)^2が共有点を持つ条件を考えればよいです。

 

<筆者の解答>

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