このシリーズでは、東大に引き続き、平成の京大理系数学の問題を1年ずつ遡って解いていきます。
京大の数学の問題も、難易度は高いですが良問の宝庫であり、演習価値が非常に高いです。
(時々、どうしようもなく難易度が高く、筆者の力量でも解けない問題が出てくることがありますが、どうかご容赦くださいm(_ _)m )
2回目の今回は、2018年の問題です。
第1問
2つの放物線の接点の存在範囲を求める問題です。
(1)は、C1をy=f(x), C2をy=g(x)、接点のx座標をtとしたときに、f(t)=g(t)とf'(t)=g'(t)の両方が成立することを利用して求められます。もちろん、f(x)=g(x)が重解を持つ条件、として処理してもOKです。
(2)は、条件(ⅰ)を用いつつaとcを消してx,yだけの式にしましょう。このとき、x≠y, x≠0, y≠0などのいくつかの例外が発生するので要注意です。
<筆者の解答>
第2問
3次式が素数になる条件を求める問題です。
この手の素数になるか否かを調べる問題は、因数分解を考えるか、余りを考察するかの2通りで基本的に解きます。今回の問題では、因数分解ができそうにない形をしているので、余りに注目する方法で行きましょう。
さて、何で割った余りに着目するかが一見すると分からないので、簡単なnで実験してみます。すると、この式は常に3の倍数になるっぽいなぁと分かりますので、これを証明しましょう。証明の仕方には2通りあります。
1つ目の方法は、nを3で割った余りで場合分けして、それぞれに対し3次式を3で割った余りを調べる方法です。
2つ目の方法は少しテクニカルですが、この3次式は、連続する3つの整数の積+3の倍数の形にでき、連続する3つの整数の積は6の倍数なので、全体も3の倍数になる。という方法です。
いずれにせよ、常に3の倍数になることが分かりました。
3の倍数になる素数は3だけなので、あとは、3次式=3として方程式を解けばお終いです。
<筆者の解答>
第3問
円に内接する等脚台形の各辺の長さの積の最大値を考える問題です。
まず、2つの条件から、四角形ABCDはABとCDが平行な等脚台形となります。
円に内接する四角形、三角形を題材にしているので、∠ABD=θ (0<θ<α)とおいて正弦定理を使うことで、各辺をθの式で表現しましょう。
すると、kはsinθの複2次式となるため、平方完成でkの最大値が求まります。
設定するパラメータを角度ではなく長さにしてしまうと、計算がとても大変になってしまうので、この解法選択が鍵となる問題でした。
<筆者の解答>
第4問
複素数平面を題材にした確率の問題です。
この問題の設定を咀嚼すれば、
表⇒原点の周りに+120°回転
裏⇒実軸対称に反転
となるので、実はznの取りうる値は3種類しかないことが分かります。
このルールに基づき、確率漸化式で解くことができます。
<筆者の解答>
第5問
曲線の長さの差の極限を考える問題です。
(1)は、図を描いて図形的に考えてあげると、楽に解くことができます。uとvの微分はタダの計算です。
(2)は、とりあえず、L1, L2を積分の式で書いてあげましょう。
L1は√(t^2+1) /tの積分となり、簡単には解けない形です。
L2は、ある気づきがないと厳しいでしょう。
(1)で u' =v'*tで書けることに気づいたでしょうか?これに気が付くと、u'をルートの外に出すことができて、ルートの中身がL1と全く同じになります。
これにより、L1-L2は1/(t^2+1)の積分となるので、お馴染みt=tanθの置換積分で計算することができます。
<筆者の解答>
第6問
四面体を平面で切った時に、体積を2等分することを証明する問題です。(1)は解けるべき問題ですが、(2)が難問です。
(1)は、ベクトルの利用を考えましょう。PQベクトルをAB, AC, ADで表現し、内積=0を示しましょう。
(2)は、状況が抽象的で考えづらいですね。抽象的ゆえに、底面の面積、高さといったごり押し解法が基本的に通用しません。ということで、初等幾何の力を借りるほかにはなさそうです。
「四面体を2等分する」をいきなり考えるのは厳しいので、一段階落として「四面体の断面は、つねにαによって2等分される」を考えてみるのはどうでしょうか?
うまくいくかは分かりませんが、とりあえず、線分PQ上の点Rを通ってPQベクトルと垂直な平面βを考えたとき、四面体をβで切断してできる断面を考えてみることにしましょう。
この断面を四角形STUVとして、S,T,U,Vをそれぞれベクトルで表現してみましょう。
色々頑張ると、四角形STUVが平行四辺形になり、Rがこの平行四辺形の中心(対角線の交点)となることが分かります。
この状況で、四面体をαで切断する状況を考えると、αのβによる断面は、必ずRを通る直線になります。
ここで、初等幾何の知識が使えます。「平行四辺形の中心を通る直線は、必ずその平行四辺形を2等分する」ですね。四角形STUVをαで切断した状況が、まさにこの条件を満たします。
よって、四面体ABCDのβによる断面がαによっていつも2等分されることが分かったので、四面体全体を考えても体積が2等分されることが分かるわけです。
この発想が思いつかなければ、まず対処不能な難問でした。
<筆者の解答>