ちょぴん先生の数学部屋

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平成の京大理系数学 -1993年-

このシリーズでは、東大に引き続き、平成の京大理系数学の問題を1年ずつ遡って解いていきます。

京大の数学の問題も、難易度は高いですが良問の宝庫であり、演習価値が非常に高いです。

(時々、どうしようもなく難易度が高く、筆者の力量でも解けない問題が出てくることがありますが、どうかご容赦くださいm(_ _)m )

 

27回目の今回は、1993年の問題です。

第1問

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双曲線の接線に関する問題です。

 

Pを通る直線が双曲線と接する条件を求めて、接点の座標を出しましょう。

これを利用し、面積をpの式で表して、微分して増減を調べることになります。

 

<筆者の解答>

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第2問

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点と、接点との距離を考える問題です。

 

(1)は、円の方程式を作って代数的に解くことも可能ですが、2つの円の中心をA' , B'としたときに、△PQA' と△PRB' が直角三角形となることを利用して、図形的に解くと楽です。

 

(2) (1)と同様にPRもθの式で表現すれば、PQ+PRは三角関数の合成が使える形になります。

 

<筆者の解答>

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第3問

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微分方程式の問題です。この問題は、大学数学チックな手法が要求される難問です。

 

まず、両辺をxで微分すると、f(x+1) - f(x) = cf'(x) となりますが、このままでは微分方程式が解けません。

 

こういう場合は、f(x)をk次式の和の形に分解する「べき級数展開」という手法が、大学以降であればしばしば用いられますが、受験数学で一般的に知られた方法とは言えないです。この方法を知らなければ、この問題は正直捨てるほかないと思います。

 

「べき級数展開」では、f(x)のk次の係数をakとして、係数比較からakの漸化式を構成して一般項を求めます。今回の場合は、1以上の係数が全て0になることを証明することになります。

 

今回の問題では、この係数比較にも苦労させられるため、本当に難しいです。

 

<筆者の解答>

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第4問

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積分で書かれた式の極限の問題です。

 

(1)は、xe^(x^2) が単調増加で、0<x<1の範囲で0<xe^(x^2) <e と評価できることを利用し、はさみうちに持ち込みます。

 

(2)は、bnに対して部分積分を使うとanが出現することに気づけたかがポイントになります。気づけば解けるし、気づかなければまず解けない、そんなピーキーな問題です。

 

<筆者の解答>

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第5問

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確率の問題ですが、実質的に不等式評価の問題です。

 

n回以上偶数が出るということは、n回以下しか奇数がでないことと同じことなので、まずはk回奇数が出る確率を考えます。

 

この確率をk=0, ・・・, nまで足し上げると、2項係数の和の形になります。これを、2項定理が使用できるように調整しつつ計算を進めていくと、

pn = 1/2 + (2nCn)/2^(2n+1) とpnが求まります。

 

よって、(2nCn)/2^(2n+1) > 1/(4n) が示せればOKになります。このことは、数学的帰納法で証明することになります。

 

<筆者の解答>

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第6問

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特殊な1次変換を考察する問題です。かなりユニークな問題だと思います。

 

(1)は、素直に行列の掛け算を計算します。ここで示されるf^2 = g^2 = iという情報が(2)以降で極めて重要になります。

 

(2)は、素直に5この行列の掛け算をごり押しでやってもできるとは思いますが、少し楽をしたいですね。

試しに、fgを計算してみると、fg +gf = -i となることが分かります。

 

この関係式を利用してfとgの順番を入れ替えてあげると、f^2やg^2の形が登場し、これは(1)で示した通りiとなるので、消すことができます。

 

このように、fgとgfのような掛け算の順番を入れ替えた2つの変換の間に成り立つ関係式を、「交換関係」と呼びます。大学で量子力学を勉強する際、量子力学の基礎的な方程式、シュレディンガー方程式を解くときなどによく使う手法になります。

 

(3)は、(2)をヒントにして考察すると、fやgを何回か繰り返し適用してできる1次変換は、i, f, g, fg, gf, fgf = gfg の6つのどれかに落ち着いてしまうことが分かります。

 

なぜならば、fとgが4文字以上並ぶケースは、(2)で示した通りに2文字以下に短縮することができる上に、f^2 やg^2が途中で挟まっていれば、それはiとなって影響を及ぼさなくなりますからです。

 

あとは、Δにこの6通りの1次変換を実施して並べてしまいましょう。

 

<筆者の解答>

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