ちょぴん先生の数学部屋

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平成の東北大理系数学 -2012年-

大京大に引き続き、他の旧帝大の問題も取り上げていきます。この記事では、東北大学の2012年の問題を取り上げます。

第1問

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点の存在範囲を求める問題です。(1), (2)は形こそ似ていますが、関連のない独立した問題となっています。

 

(1)は、s,tをx,yの式に直してあげればよいでしょう。

 

(2)xの式にs,tが複数出てくるのが厄介ですので、無理やり一か所にまとめてしまうと、

x= (s-1) (t+1) +2と変形できます。このときS=s-1, T=t+1とすれば、この問題は実質、「S,Tが実数全体を動くとき、x=ST +2, y =S+T-1 の動く範囲を求める」問題に帰着します。

SとTが実数だということに注意すれば、解と係数の関係を使って2次方程式が実数解を持つ条件に帰着させることができます。

 

<筆者の解答>

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第2問

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1次変換の問題です。(3)が少し厄介です。

 

(1) P(a,b)がP'(a', b')に移るとすると、PP'はy=mxに垂直、PP'の中点がy=mx上にあるという2つの条件を満たします。

 

(2) (1)でm=1とすればfを表す行列も求まるので、掛け算を順番に注意して実行します。

 

(3)は、Bの「3乗」というところが厄介です。馬鹿正直にB^3を計算するのは骨が折れそうですので、何かしら工夫をしたいです。2通り解き方がありますので、それぞれ紹介します。

 

一つ目の方法(答案の別解)は、ケーリーハミルトンの定理を使って次数下げを行う方法です。この方法によって、B^3を、B, I, mの式で表現できます。BがIの定数倍か否かによって状況が変わるので、場合分けしましょう。

 

2つ目の方法は、少し経験がないと思いつきにくいですが、2m/(1+m^2) =cosθ,

(1-m^2)/(1+m^2) =sinθ と書けることを利用して、Bを回転行列とみなしてしまう方法です。計算はこちらの方が少し楽です。

ケーリーハミルトンの定理でもB^3の式が爆発しそうだと直感したので、こちらの方法で先に解きました。

 

<筆者の解答>

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第3問

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2枚を引いたとき、数字が一致するか否かという、ババ抜きのようなシチュエーションを考える確率の問題です。

 

(1)は、各袋についてカードがどのように抜かれていくかを描いて考えるとよいでしょう。数字を文字で置いて一般化して考えるのがやりやすいと思います。

 

(2)は、ジョーカーのないババ抜きそのものを行っています。

N=2, 3の状態で、カードが一致する確率しない確率をそれぞれ求めて考えます。

 

n回目で全部のカードが捨てられるのは、k回目で初めてペアが捨てられ、n-1回目で2組目のペアが捨てられるときです。

 

<筆者の解答>

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第4問

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絶対値付きの積分の計算問題です。

 

当然ながらt,xの値によって絶対値の外れ方が変わります。ここで、tの動く範囲が0≦t≦π/2なことに注意すると、t-xの符号が変わる可能性があるのは、0≦x≦π/2のときだけです。それ以外では、t-xは必ずマイナスになります。

 

この2つに大きく大別して絶対値を外してf(x)を求めましょう。あとはf(x)を微分して増減を調べればよいです。

 

<筆者の解答>

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第5問

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発想力の必要な図形問題です。

 

(1)がこの問題の鬼門です。x,yの関係式というとすぐに思いつくのは余弦定理ですが、この場合はOQの長さも改めて定義しないといけなくて、処理が複雑になってしまいます。OQの長さがそう簡単には求まりそうにないので、この路線は諦めざるを得ません。

 

ということで、図形をじっくり眺めてみると、△ABPが直角三角形になっていることに気付きます。三平方の定理からAPの長さはxで書けますし、∠QPA=30°になっていることも分かります。このとき、面積に着目できると、スッキリと解くことができます。

 

(2)は、究極はyをxで微分して増減を調べればいいのですが、yの式がやたらと複雑な形をしているので、このままの状態で微分したくありません。

 

ここで、ルートの中身が1-x^2で揃っていることに注目すると、x=sinθ (0<θ<π/2)と置けばスッキリするのでは、という発想に思い至ります。この変換をして分子を定数にしてあげると、分母がそこそこスッキリした形になります。

 

よって、この分母の最大最小を考えればよいことになります。

 

<筆者の解答>

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第6問

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一般項を計算できない数列の極限を求める問題です。

 

(1)は、√の中身が1より大きいので自明でしょう。

 

(2)は、αの3次方程式を素直に解くだけです。

 

(3)は数学的帰納法を使うとよいでしょう。α^2 - an+1^2を計算していきましょう。

 

(4)は、(3)で行ったα^2 - an+1^2の計算を続きをやっていくと、α-anで割り切れることが分かります。

 

このことから、(α-an+1)/ (α - an) を無理やり作って、(1)~(3)を使ってこの値を上からどんどん抑え込んでいきます。

 

最終的に、はさみうちの定理により、an → α が分かります。

 

<筆者の解答>

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