東大京大に引き続き、他の旧帝大の問題も取り上げていきます。この記事では、大阪大学の2011年の問題を取り上げます。
第1問
1次変換による点列を考える問題です。難問ばかりのこの年のセットの中では、比較的手の付けやすい問題です。
(1)は、成分を比較して、rとcosθ,sinθを求めましょう。
(2) (1)のヒントを使うと、Aは、θだけ回転させて長さをr倍する行列だと分かります。このことからQnの座標を具体的に求めることができます。これらを使えばS(a)が計算できます。
(3)Aによって(2,7)に移る点を(X, Y)として、(X, Y)をaで表現すれば、1.5≦X<2.5となることからaが求まります。S(n)の評価は、常用対数を取って評価することになります。
<筆者の解答>
第2問
線分の通過領域と、回転体の体積を求める問題です。この問題もまだ手がつく方でしょうか。
まず、線分PQの通過領域Dを求めましょう。通過領域の求め方には、
・順像法:xを固定してθを動かしyの取りうる値の範囲を調べる
・逆像法:θの方程式とみなして、これが0≦θ≦π/2 に解を持つx,yの条件を求める
の2通りがありますが、今回はsinθとcosθが混じった形をしているので逆像法は厳しいです。よって順像法一択です。
この通過領域Dが出せれば、お馴染みの体積計算になります。
<筆者の解答>
第3問
放物線が逆N字型の折れ線とぶつからない条件を考える問題です。(2)まではなんとかなるでしょうが、(3)が難問です。
(1)は放物線と直線を連立すると重解をもつ、という条件から攻めていきます。
(2)は、発想寄りの問題です。
g(x)=f2(x) - f1(x) とおいたとき、g(x)がα≦x≦βで常にプラスになることを言います。
g(x)を具体的に計算すると、g(x)は1次関数になるので、両端が両方ともプラスであれば、その間も必ずプラスになることが図形的に分かります。
(3)は難問です。難問たる所以は、やることが長いことです。
いきなり放物線の通過領域を考えることはできないので、放物線の頂点(p,q)の存在範囲からまず考えましょう。
pの値の範囲によって、放物線が逆N字と接触しないqの条件が変わってくるので場合分けが必要です。ここでの考察で、(1)の結果が少しだけ役に立ちます。
こうして(p,q)の条件を出したら、今度は放物線の存在範囲を出さないといけません。放物線は正方向に末広がりなので、先ほど求めた(p,q)の存在範囲の境界線上に頂点がある場合だけ考えれば十分です。とはいえ、その境界線自体も上下に2つ存在しているので、それぞれを考える必要があります。通過領域は順像法で考えるべきでしょう。
こうして長々と放物線の通過領域を求めたら、ようやく長方形Rとの重なり方を考えることができるので、Sの面積が求まります。。
この問題、実は文系でも出題されたらしいと聞き腰を抜かしてしまいました。理系でも触りたくないレベルの難問だっていうのに、、、というか、(2)を一切使わなかったけど、何だったんだろう?
<筆者の解答>
第4問
3次式の3乗根が常に整数ならば、3次式自体が3乗の形で書けることを証明する問題です。(1)から手を付けにくい難問です。特に(3)は、多くの理系大学生をへし折ってきた、悪名高き「ε-δ論法」もどきをさせられるので、非常に厳しいです。本番では白紙解答続出だったと容易に想像できます。。。
(1)からして発想がないと厳しいです。ここでは、三角不等式というテクニックを使います。
三角不等式とは、|a+b|≦ |a|+|β| という不等式のことです。これを使うと、
|px+q| ≦ |p|x +|q| ≦|p|x +|q|x = ( |p| + |q| )xとなります。何気に、|q| ≦ |q|xというのも思いつきにくいと思います。
(2)は、α=f(x)の3乗根、β = x +k とおいて処理します。
すると、分子が2次関数となり面倒な形をしています。しかし、kは勝手に決めていいので、2次の項が消えてくれるような都合のいいk=a/3を持ってくることができます。
そうしてあげると、分母はともかく、分子については(1)を使って簡単にすることができます。残る分母は、大胆に評価して (x+k)^2 >x^2と評価できます。
(3)は、まずnを無限大に飛ばした状況を考えてみると、f(n)の3乗根とn+a/3の差が0に収束するので、a/3は整数でないといけないことが分かります。これをmと置きます。
このとき、f(n)の3乗根とn+mの差はどんどん小さくなっていくので、nが十分大きいところでは、差が1未満になります。整数の差が1未満ということは、nが十分大きい時は、f(n)の3乗根=n+m、つまりf(n) = (n+m)^3 となっています。
f(n)は3次式なので、4つ以上の整数についてf(n) = (n+m)^3となっていれば、恒等式としてf(x) = (x+m)^3となっています。 これで証明完了です。
これを高校生が解き切るのは、ほぼ不可能でしょう。もろ大学数学に片足突っ込んじゃってるし。
<筆者の解答>
第5問
漸化式が確率で変化する状況を考える問題です。これまた経験がないと厳しい問題です。
(1)は、a3,a4としてなりうるすべての値を列挙して期待値を計算します。
(2)がこの問題一番の難所です。これができれば(3)以降は楽に行けますが、できなければ詰みです。
漸化式をよく眺めると、an+1 - anの等比数列もどきになっていることに気付けるでしょうか?これをbnとすると、bnは一回当たりanがどれだけ増えるかを表している量になります。
よって、bnの期待値が求まれば、それを全部足せばanの期待値、つまりpnが求まることになります。
bnの期待値をqnとすると、公比がrnの期待値Rの等比数列になります。
以上からpnを求めることができますが、R=1のケースだけ例外扱いになることに注意です。
(3)pnが収束するとき、等比数列の部分の公比Rが 絶対値1未満か1になっていればいいわけですが、R=1のときは、そもそも等比数列でなく収束しないので不適です。よって、|R|<1 が求める条件です。
(4)収束値はrの関数となるので、微分して増減を調べましょう。
<筆者の解答>