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平成の九大理系数学 -2002年-

大京大に引き続き、他の旧帝大の問題も取り上げていきます。この記事では、九州大学の2002年の問題を取り上げます。

第1問

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パラメータ表示された曲線の面積を考える問題です。

 

(1)は、tを消去すればいいのですが、勘のいい人であれば、y^2 -x^2で簡単にtが消せることに気が付くかと思います。

 

この問題のパラメータ表示は非常に有名なもので、ここで登場する

(e^t+e^-t)/2, (e^t- e^-t)/2は双曲線関数と呼ばれています。

 

(2)図を描いて、図形的な考察も加えながら面積計算します。

 

(3)tで微分して増減を考えます。

 

<筆者の解答>

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第2問

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約数の総和を題材にした、整数問題です。

 

(1)は、PとQが互い素な時、f(PQ)=f(P)f(Q)となるという性質を使います。

(答案に、その簡単な証明を書いておきました)

f(2^m)は、1+2+4+・・+2^m =2^(m+1) -1 と計算できます。

 

(2)a=pqの時、aの約数にqとpqが最低限あるので、f(a)≧pq+qが成立します。

等号成立するのは、aの約数がpqとqの2つだけの時です。aの約数には1が必ず含まれているので、q=1が確定します。約数が1とpしかない、これは素数の定義そのものですね。

 

(3)は、2^mと2^n-1が互いに素になることを利用して解いていきます。

 

(3)の結果で、a=bのときが非常に重要な結果となります。

a=bのとき、f(a)=2aとなります。これは、「自分以外の約数の合計が、その数になる」という性質を意味しています。このような自然数を「完全数」と呼び、身近な例では、

・6= 1+2+3

・28 = 1+2+4+7+14

完全数です。

(3)の意味することは、偶数の完全数は、必ず2^(m-1) *(2^m-1)の形で書けて、かつ2^m-1素数でなければならないという性質です。上の例では、

・6 = 2* (4-1)

・28 = 4*(8-1)

となって確かに上の性質を満たしていることが分かります。

 

2^m-1素数であれば、対応する完全数が必ず見つかるということで、昔から、2^m-1の形で書ける素数の探求が続いています。この形の素数は「メルセンヌ素数」と呼ばれています。

 

<筆者の解答>

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第3問

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不等式証明の問題です。

 

(1)は、微分などでは考えにくいので、図形的な考察から考えることにします。与えられた不等式を変形にすると、logxの変化の割合と、微分係数の大小比較になっていることが分かります。

 

よって、logxのグラフの線分を結んだ傾きと、接線の傾きを考えればよいことが分かります。

 

(2) (1)の式でx→f(x), y→g(x)と置き換えて積分すればよいでしょう。

 

(3)さらにg(x)=Mとすれば証明できます。

 

<筆者の解答>

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第4問(a)

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空間上の三角形の面積を考える問題です。

(今回の第4問の選択問題は、どれを選んでも難易度が高いので、お好みで・・)

 

(1)は、まさかの公式証明です。sinを使った三角形の面積の公式と、内積の公式を組み合わせて、sin, cosを消去すれば求まります。

 

(2)AB, AD, AEを基準となる3つのベクトルとして、公式に当てはめて計算します。

 

(3)-1≦y-x≦1となるので、cosθの値によって、最小値をとるy-xの値が変化します。

 

<筆者の解答>

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第4問(b)

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本格的な複素平面の問題です。本格的過ぎて難しい(複素数特有の考え方を多用します)ので、複素数平面が苦手な人は手を出さないのが無難です。

 

(1)P(z1), Q(z2), R(z3), H(w1)とします。

このとき、PH⊥QRならば、(w1-z1)/ (z3-z2) は純虚数となります。これを証明します。

同様の関係を、残りの2辺についても示します。

 

(2)直線PH上の点を w=z1 +t(w1 -z1)で表現して、これが|w|=1となることからtを求める、という流れです。計算が長く大変です。

 

(3)H(z1)とS(w2)の中点をT(w3)として、これがQR上にあることを示します。

この条件は、(w3 - z2)/(z3-z2)が実数になることです。

 

<筆者の解答>

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第4問(c)

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上下する折れ線を考える場合の数の問題です。これも難しいです。

 

(1)上方向にa回、下方向にb回動くとすると、a+b=n, a-b=kとなるので、n+kは必ず偶数になります。

 

(2)は、問題文を把握することがそもそも難しいです。(n,k)に至る折れ線のうち、一度kをオーバーしてしまうものの個数について問われています。

 

よく考えると、(n-1, k+1)に至る折れ線は、少なくともy=kを跨いでないといけませんし、(n,k)に至る折れ線は、直前に(n-1, k+1)、(n-1, k-1)のどっちかを通過しているはずです。

 

そして、初めて通過するy=k上の点をAとすると、Aから(n-1, k+1)に至る折れ線の本数と、Aから(n-1, k-1)に至る折れ線の本数は対称性から同じになります。

 

(3) (1)-(2)の考察を使います。

題意を満たす折れ線の本数は、「O~(9,3)の折れ線の総数- 2×O~(8,4)の折れ線の総数」となります。

 

<筆者の解答>

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第5問(a)

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点が楕円の外にあるか中にあるかを判定する問題です。

(第5問の選択問題では、この(a)問題が地雷枠と言えます。個人的には(c)を選ぶことをオススメします)

 

(1)P1, P2, P3の座標を具体的に求めてチェックしていきましょう。

 

(2)x,yをθで微分して傾きを求めましょう。

 

(3)与えられた条件を1つ1つ処理していきますが、長く大変です。

 

<筆者の解答>

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第5問(b)

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9の3乗根の近似値を求める問題です。

 

(1)(2)は、g(x)を愚直に計算していくことで示せます。

 

(3)は、(2)の式にa=9を代入することで証明できます。

 

問題文にあるgの式は、数値計算で方程式f(x)=0を解く「ニュートン法」というアルゴリズムで使われる関係式になります。

 

<筆者の解答>

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第5問(c)

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べき等行列に関する問題です。

 

(1)ad-bc≠0の時は、Aに逆行列が存在します。

 

(2)ad-bc=0の時は、ケーリーハミルトンの定理から、a+d=0が必要十分条件になります。

 

(3) (1), (2)から、逆行列をもつか否かで状況が大きく変わることが分かったので、A,Bのそれぞれについて、逆行列を持つか否かで場合分けをして考えます。

 

<筆者の解答>

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