文系数学の最難関、一橋大学の2009年の問題を取り上げます。
第1問
いわゆる「タクシー数」(後述)を題材にした整数問題です。
一目見て因数分解を使うタイプだと分かりますので、それで進めてみましょう。すると、m-nとm^2+mn+n^2が999の約数だと分かります。999= 3^3 ×37なので正の約数は8個ありますが、候補を絞りたいです。
mとnが2以上なので、m^2+mn+n^2≧12だとわかり、かつm-nがm^2+mn+n^2より12以上小さいと分かることから、候補を3通りまで絞ることができます。あとは虱潰しに調べましょう。
この問題から得られる、1729 = 12^3 + 1^3 = 9^3 +10^3のことを「タクシー数」と呼びます。何でこんな変な名前がついているのかというと、インドの天才数学者ラマヌジャンのこんなエピソードに由来しています。
ハーディ(ラマヌジャンの師匠)「今日乗ったタクシーのナンバーは1729だったよ。何の面白みもないつまんない数だったぜ」
ラマヌジャン「師匠!そんなことないっすよ!すごい数っすよ!だって、1729って、3乗+3乗の形で2通りに書ける最小の数じゃないっすか!!」
誰がどうして、1729という数字を訊いただけで、「3乗+3乗の形で2通りに書ける最小の数」だと即座に思いつけるんですかね!?ラマヌジャンの天才っぷりがよく現れたエピソードだと思います。
<筆者の解答>
第2問
点の存在領域を図示する問題です。
(1)(2)と共通して、中辺の(x,yを固定したときの)最大値と最小値を出して、左辺は最小値以下、右辺は最大値以下という条件を処理すればよいです。
図を丁寧に書ければ、面積計算はさほど難しくありません。
<筆者の解答>
第3問
2問連続で存在範囲の問題です。
これは、放物線と、各々の円が交点を持つ条件を調べてその共通部分を考えればよいでしょう。
[2021/9/21追記]
答案に致命的なミスがあったので訂正します。
放物線と円の好転を持つ条件を求める際にyの2次方程式にしますが、円のy座標はそもそも制限されるので、この2次方程式がその条件の下で解を持つ条件を求めないといけませんでした。円のy座標に制限があることを失念したまま解いてしまっていました。申し訳ありません。。。
<筆者の解答>
こっちが正解です。
こちらはy座標の制限に気づかぬまま解いてしまった誤答です。
第4問
正三角形を何度も折り返す問題です。
(1)多少面倒でも、実際に問題文の通りに折り返した絵を描きましょう。その上で座標設定してP,Qの座標を求めてしまえば内積から角度が出せます。
(2)Aの移動の仕方を絵に描いてみると、Aの進み方は4種類しかないことが分かります。よって、この4種類のベクトルを整数倍して足したものがAの移動先になります。
問題文のk,lから、この「整数倍」をうまく構築できることを示すことになります。
<筆者の解答>
第5問
確率の問題ですが、(2)の後半は完全なる捨て問です。(1)ができていれば十分で、余裕があれば(2)の前半まで手を付けるでOKです。
(1)Zのカードがないので、点は止まることがありません。
Xをa回、Yをb回選ぶとすると、Pは(a,b)に到達することになります。(a,b)の選び方はn+1通りあります。
あとは、その確率を調べて最大値を考えることになります。確率の最大最小を考える定石は、「前後で比をとって1より大きいか小さいかを検討する」です。nの偶奇による場合分けが発生します。
(2)基本的なやり方は(1)と同じです。
前半の(ⅰ)は、(1)と違って文字が3つあるので、1文字を固定して(1)に帰着させます。
後半の(ⅱ)は前述のとおり、捨て問です。
答え自体は、(1)からの類推で(n/3, n/3, n/3)だと予想できますが、いざこれを証明しようとなると非常に難しいです。
難しさの根幹は、(1)と違って2変数の確率の最大最小を考えないといけない点です。2変数もあるので、比を取って大小を検討するのも骨が折れ、かつ(1)でやった通り偶奇による場合分けも発生するので手に負えないレベルになります。方針自体は(1)と全く同じなのですが。。。
私自身、答案を書くのに(2)の(ⅱ)だけで1時間以上かかりましたし、ボリュームとしてもこの小問だけでB5の紙2枚を消費する羽目になりました。。。かの悪問、名古屋大2016年第4問(2)ほどではないですが、一橋の過去問で一番しんどかったまであります。。
<筆者の解答>