私立最難関の一角、慶應義塾大学の理工学部の問題を取り上げます。今回は2012年の問題です。
第1問
小問集合です。
(1)行列の掛け算によってできる実数が0以上になる条件を求める問題です。Aを素直に計算すると、xとyの2次式になるので、平方完成するとよいでしょう。
一般に、この問題文のAのようなものを「2次形式」とよび、Aが常に0以上になる時、真ん中にある行列のことを「正定値行列」と呼びます。大学の線形代数で詳しく習うことになります。
(2)三角比についての問題です。状況を絵に描いて正弦定理を使えばよいのですが、外分というのが見慣れない上にtanの3倍角の公式が要求されます。
外分は、答案の図にあるように「行き過ぎて戻ってくるような」点をイメージすればよいですし、tanの3倍角は、tanの2倍角の公式を利用したり、sin, cosの3倍角の公式を使ったりすると自力で出すことができます。
(3)積分方程式の問題です。定積分の部分を文字で置いて普通の連立方程式を作って解くのが定石ですね。絶対値の入った積分については場合分けが発生することに注意です。
<筆者の解答>
第2問
次々に円を作る問題で、東大などに類題があります。
(1)x軸に接する条件から円の式を立てることができて、さらにCに接する条件を考えることで、中心の満たす関係式を求めましょう。
(2)C, Cn, Cn+1の3つの円を描いて、三平方の定理を何回も使います。
(3) (2)の漸化式は、逆数を取るとうまくいくタイプです。
<筆者の解答>
第3問
確率の問題です。
(1) 文字Oを全て区別して数えると見通しが良いと思います。3番目に来るOの選び方が7通りで、残り9個の並べ方が9!通りですね。3回目で終了することはないので、分母は、10枚を並べる場合の数、10!通りで問題ありません。
同じように1枚目と3枚目が両方Oになる確率も計算してみましょう。ここまでが(ケ)です。
(コ)については、最後にKを取り出す直前に、E, I, Oがすでに引かれているので、引かれているOの枚数で場合分けして調べます。
(2) k枚目で終わる時、k=4とk≧5で状況が違ってきます。
k=4の時は、K, E, I, Oを1枚ずつ取り出す確率で、Oが最後に引かれる可能性があります。
しかし、k≧5のときは、最後にOが引かれることはないので、最後がK, E, Iのどれかに絞られ、対称性からどの確率も等しいです。
最後の期待値計算は公式通りに頑張って計算しますが、知りたいのが極限なので、最高次数だけ気にすればOKです。
<筆者の解答>
第4問
正四角錐を題材にした立体図形の問題です。
(1)重心は、3頂点のベクトルの平均値です。
(2)pは△CDEと垂直なので、pとDCが垂直、pとEDも垂直となります。これとpの大きさが1という3条件を使えば求まります。
(3)何のために(2)でpを求めさせていたかを考えるとよいと思います。実は、よく考えると図形的な考察から、四面体CDEFの(△CDEを底面としたときの)高さをhとすると、
h = GFとなっていて、かつ、GFの向きとpの向きが同じでpの長さを1にしていたので、AF= AG +hp と書けることが分かります。
余弦定理と三平方の定理を使うとhの値が求まるので、AFが求まります。
あとは、HAとHFの式を調べれば△AHFの面積が求まります。
<筆者の解答>
第5問
3次方程式についての問題です。
(1)簡単な積分の問題です。
(2)f(x)を微分して極小値を調べましょう。
(3)
(前半:(ヌ))
S(t)を計算するとS(0)とtの式の和で書けるので、S(t) = S(0)をtだけの式で書くことができます。こうしてできるtの3次方程式(実は実質2次方程式です)が正の解を持つ条件を調べることになります。判別式、軸の位置、端点という3項目をチェックしましょう。
(後半:(ネ))
S(t)を微分すると、S(t)が極大値と極小値を持つことが分かります。このとき、極値と0, cがどんな位置関係になっているかを調べましょう。
M(a)+m(a)の計算は、解と係数の関係を使うと見通し良く進みます。
<筆者の解答>