ちょぴん先生の数学部屋

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21世紀の慶応理工数学 2001年

私立最難関の一角、慶應義塾大学理工学部の問題を取り上げます。最終回の今回は2001年の問題です。

第1問

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円の内サイクロイドに関する問題です。東大の2004年に類題があります。

 

(ア)については弧の長さP0QとPQが等しいことを利用して求め、(イ)(ウ)は回転行列などを利用すれば求めることができます。

 

PがP0に戻ってくるとき、最低限PがC上に戻ってこないといけないのでθは2πn回転していないといけません。同時にαも2πの整数倍になっていれば、PはP0に戻ってきます

。(イ)(ウ)をθで微分すれば軌跡の長さを計算できます。

 

<筆者の解答>

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第2問

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確率の問題です。基本的に誘導通りにやればOKです。

 

(カ)については、要するに「k回以内に青に切り替わる確率」です。(キ)に入るものは、k回目に青に切り替わる確率そのものです。

qkをqk-1を使った式で書き換えるとqk= qk-1 -pk となるので(ク)が求まり、(ク)を繰り返し使えばqkの一般項(ケ)が求まることになります。

 

極限計算は、log をつけた状態で考えると見通し良く計算できます。

 

<筆者の解答>

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第3問

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平面の通過領域の体積を求める問題ですが、正直この問題は悪問だと思います。

この立体の体積を出すなら、素直に考えればz平面で切って考えたほうが遥かに分かりやすいのに、この問題ではわざわざ考えにくいy平面で考えることを強いられているわけですし、最後にデリケートな0log0 = 0 を使わないといけません。z平面で切る時はこんなデリケートな部分も登場しませんので。。

問題文そのものも読みにくく誘導も分かりにくいので、捨ててしまってよいと思います。

 

文句ばっかり言っても仕方ないので、やります。

 

Dは、△PQRの作っている面と、座標平面上にある面3つ、(0,0,1)とR,Pの作る面、(0,0,1)とR,Qの作る面の合計6つの面で構成されています。そのうち、(シ)は「xy平面上の面」、(ス)(セ)は「(0,0,1)とR,Pの作る面、(0,0,1)とR,Qの作る面」のことを指しています。

 

(シ)は、結局t=1の時の△PQRの式、つまり、P(1,0,0), Q(0,1,0), R(1,1,1)の3点を通る平面の式を求めればOKです。

(ス)(セ)が一番の鬼門と言えます。Dをy平面で切った断面を考えていて、x≦yのエリアでは、確かに時刻tでの線分QRが境界線になっています。(QR自体が常にy断面に乗っているのでまだ考えやすい。。)

しかし、x>yのエリアが非常に考えにくく、一旦立体Dを完成させてから再度y=tで切るという荒業をしないといけません。そうすると、時刻uにおける線分PRと平面y=tの交点Sが、断面になります(ただし、uの範囲はu≧tでないとDが存在しません)。

問題文にしれっと「同様に」と書いておりますが、「同様に」で考えられるほど単純ではないわけですよ。この部分こそ、「同様に」などと誤魔化さずにしっかりと誘導の文章を丁寧に付けて欲しかったですね。

 

(シ)(ス)(セ)が求まれば断面の形状が分かるので面積が求まり、それを積分すれば体積です。

 

z平面で考えればやや難くらいの難易度で済んでいた問題(これでも十分差がつきそう)が、回りくどい誘導にしたが故に差がつかない捨て問に変わってしまった、そんな悪問でした。

 

<筆者の解答>

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第4問

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関数の近似についての問題です。関数を○○乗の和で表現する「テイラー展開自然数乗だけ考える)」「ローラン展開(分数もOKにするテイラー展開の拡張版)」が背景にあります。

 

(1) g(x)=ax+bを代入して計算を進めると、もしf(0)≠bだと発散してしまうことに気が付きます。

 

(2) g(x) =1-x/2+cx^2を代入して極限の計算を頑張ります。

 

(3) 2次方程式を解くと√(1-t)の形が登場するので、(2)の結果が使えることに気付きます。

 

<筆者の解答>

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第5問

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各位の和について考える問題で、これは難問です。

 

(1) 十の位以上のk-1ケタの部分を和がiになるように構成すれば、一の位の数字をm-iにすれば、kケタの各位の和がmとなります。

 

(2) これは思いつかないとまず解けないです。

(1+x)^(n-i)という関数をi=1, ・・・・, n-r+1まで足したものを考え、2項定理で展開した場合、等比数列の和とみなして計算した場合の2通りで表して係数比較する、という方法ですね。発想が難しく、捨て問安定です。

 

(3) (2)の利用を考えるわけですが、これまた発想が難しいです。

S(k,m)を数える方法は、見方を変えればこういう場合の数を考えることと同じです。

「m個のボールを横一列に並べる。左のi個を取り除いてiを最高位の数字とする。残ったm-i個のボールをk-2個の仕切りで分け、右の個数からから順に一の位、十の位、・・・としてk-1桁の数字を構成する」

ここで、n=m+k-2とすれば(2)が使えます。これを思いつけというのは酷ですよね。。

 

<筆者の解答>

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