理系数学の最難関の一角、東京工業大学の1990年の問題を取り上げます。
第1問
恒等式の成立条件を求める問題です。
任意の自然数m,nで成り立つと言っているので、m,nに特別な数を入れても当然成り立つはずです。m,nが大きいと考えにくく、n=1としても何も面白い情報は出てこないので、m=1, n=2を代入してみるとよいでしょう。こうして得られる条件が「必要条件」となります。
あとは、この必要条件をあてはめて、ちゃんと恒等式になっていることを示して、「十分条件」にもなっていることを確かめましょう。
<筆者の解答>
第2問
不等式証明の問題で、発想力の必要な難問だと思います。
初手から悩むと思います。左辺のΣを解消しようと思ってもlogが邪魔でうまくいきません。ここは、逆転の発想「右辺をあえてΣの形にする」を考えます。logにかかっているkをあえてΣの形に直して、左辺-右辺を計算すると、Σの中身がxi log(nxi/k)となります。
次に、このΣの中身を下から評価してあげることを考えます。中身は本質的にtlogtの形をしているので、これを下から評価します。評価する関数は、できるだけシンプルに、傾き1の1次関数にします。y=tlogtのグラフを描いて、傾きが1になる接線を求めれば、
tlogt ≧t-1 ⇒logt ≧1-1/tが求まります。
この不等式を使うと、この問題の証明をすることができます。が、この不等式を試験場で自力で作るのは相当厳しいので、「logt ≧1-1/tを証明せよ」という誘導をつけるべきだったと思います。(1)としてこの誘導があっても、kをあえてΣに変えるという発想は思いつきにくいので、やや難くらいの難易度になったと思います。
余談ですが、Σxi log xi という数値は応用上も重要な式で、情報科学の分野で「情報エントロピー」と呼ばれる量になります。
<筆者の解答>
第3問
楕円と2つの半円状にある3点間の線分の長さに関する問題です。
これは「あること」に気付いてしまえば瞬殺、気づかなければ泥沼の計算地獄となってしまうピーキーな問題です。
その「あること」とは、「半円の中心が、楕円の焦点になっていること」です。この焦点をF,F'とすると、楕円の性質からPF+PF'は常に一定値になります。これに気付ければ、P,F,Qが一直線上、かつP,F',Rが一直線上のときに、PQ+PRが最大になることがすぐに分かってしまうわけです。
これに気付かず、P,Q,Rの座標を文字で置いて検討を始めてしまうと、絶望する羽目になります。
<筆者の解答>
第4問
積分の入った関数の最小値を求める問題です。
いきなり積分を計算するのではなく、先にf'(x)を考えるとよいです。なぜなら積分は微分することで元に戻るからです。このようにして先にf(x)を最小にするxの値を求めてしまいましょう。
その上で積分の計算を実行します。∫1/cosθdθ は分母分子にcosθをかけてt=sinθと変数変換して解く、割とよく見る積分です。
<筆者の解答>
第5問
楕円の2本の接線に関する問題です。
基本的に、P(X,Y)、接線の式をy=m(x-X) +Y とおいて楕円の式と連立してできる方程式が重解を持つ条件を考えることになりますが、接線がy軸平行だと直線の式が上記の形に書けないので厄介です。
なので、接線がy軸平行になってしまう場合を先に例外処理してしまいましょう。
例外処理が終わった後は、Q,Rの座標を求めて内積の条件を考えていけばよいでしょう。とはいえ、解と係数の関係を使う、内積を計算するなど、いくつもステップを踏まないといけないので、計算は大変です。
最後の面積計算はオマケのようなものです。
<筆者の解答>