ちょぴん先生の数学部屋

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2021年度 阪大理系数学 解いてみました。

2021年も大学入試のシーズンがやってきました。

今回は、大阪大学の理系数学に挑戦します。

 

 

<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)

1. 双曲線への2つの接線に関する最大最小(20分)

2. 同一平面上にある4点に関するベクトル(15分)

3. 級数の極限(40分)

4. 積分方程式を満たす整数の組(40分)

5. 三角関数の混じった方程式、接線の条件(45分)

 

<体感難易度>

1<2<3<5<4

前半の2問は平易な問題、後半の3問は重量級の難問というくっきり分かれたセットですね。明らかに去年に対しては難化したと思います(去年が簡単すぎたとも言えますが)。後半の3問については、無理して完答を目指そうとせず、手の付きやすい(1)を確実に解いて、時間があれば(2)以降を足掻く、という戦略で良いと思います。

 

<個別解説>

第1問

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双曲線への2つの接線に関する最大最小を調べる問題です。

 

(1)一般的にx=uでの接線を考え、これがPを通るとしてuの2次方程式を作ります。この方程式の解がs,tになるわけですね。

 

(2) (1)の結果を使ってt/sを計算すると、abが最大の時にt/sが最小になることが分かるので、abの最大値を考えます。問題文の条件からabはaだけの式で書けるので最大値はaで微分して調べる、でよいでしょう。最後に、出てきたa,bが、ab<1をちゃんと満たしているのかをきちんと確認しましょう。

 

<筆者の回答>

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第2問

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同一平面上にある4点に関するベクトルの問題です。

 

(1)まず、O,A,B,Cは同一平面上にないので、OAベクトル、OBベクトル、OCベクトルは1次独立です。

この下で、OA0, OB0, OP, OQをこれら3つのベクトルで表現すると、A0, B0, P, Qが同一平面上にあるのでOQ=aOA0 + bOB0 + pOP (a+b+p=1)となるようなa,b,pが存在することになります。これを使ってa,b,pを消去してsとtの関係式を求めていきましょう。

 

(2)角度の情報から内積が一通り計算できるので、OP・OQ=0を計算していきましょう。

そこで出てきたsとtの関係式を、(1)の結果と連立すればOKです。

 

<筆者の回答>

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第3問

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級数の極限を調べる問題です。(2)までは標準的ですが、(3)が難問です。

 

(1) お馴染みの不等式証明の問題です。各辺を引き算してできる関数の増減を微分で調べるという、テンプレの流れで証明できます。

 

(2) (1)の不等式の各辺を積分すれば終了です。

 

(3)が本題という感じです。去年の東工大第5問の廉価版といった趣です。

まず、anのΣの中身を見ると、区分求積法が使いたくなりますね。実際にnで割ったan/nの極限は区分求積法で求めることができます。

さて、(an - np)=n(an/n - p)が有限の値に収束するようですので、nが無限大に飛ぶ以上an/n -pは0に収束してくれないといけないですね。

よって、pの値は、先ほど区分求積法で求めたan/nの極限値で決まりです。

 

難しいのはqをどうやって出すかですね。というかまだ(2)の不等式を使っていません。

 

実は区分求積法で評価するとき、an/nを評価するのに1~1+(n-1)/nでのlogxの積分を使っていたのでした、この積分をもっと細かく評価できないか。

ということで、(2)の不等式のtの中にn/n, ・・・(2n-2)/nを次々に代入して足し算すると、欲しかった積分値を評価する不等式が作れるわけです。そこではさみうちの定理を使うとan - npの形が出てくるので、qを求めることができる、と言う事になります。

 

<筆者の回答>

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第4問

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積分方程式を満たす整数の組を考える問題です。

 

(1)まずは、積分を愚直に計算し整理していきましょう。すると、3c^2 = -(a+2b)(2a+b)という形にできます。a,bを3で割った余りで分類すると、右辺が9の倍数になるか、そもそも3の倍数にならないかの2択になることが分かります。

後者の場合はそもそもcは整数にならず不適なので、前者の場合のみ考えます。この時は3で約分するとc^2が3の倍数となります。3が素数だと言う事を加味すれば、そもそもcが3の倍数でないといけないと分かるわけです。

 

(2) c=3600を上記の式に突っ込むと、(a+2b)(2a+b) = - 2^8 × 3^5 × 5^4 と素因数分解されます。ここでa<bという条件が強力な縛りになってきます。

もしaとbが同符号なら、右辺が正になってしまいます。なのでaとbは異符号でaはマイナス、bはプラス、という情報まで特定できます。

さらにそうなると、a+2b>2a+bなので、かけて負になるにはa+2b>0, 2a+b<0になるしかありません。

さらにさらに、a+2bと2a+bを足すと3の倍数になり、なおかつ(a+2b)(2a+b) が3の倍数です。ということは、a+2bと2a+bのそれぞれが3の倍数でないといけないという条件まで絞り込むことができるわけです。

そうなれば、a+2b, 2a+bは素因数3を少なくとも1個ずつ持つので、あとは残りの素因数たちをどう配分するかの配分方法を数えればOKと言う事になります。

配分が1通りに決まれば(a,b)も一意に決まるので、配分の仕方が、そのまま今回の(2)の答えとなります。

 

<筆者の回答>

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第5問

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三角関数の混じった方程式、接線の条件を考える問題です。

 

(1) とりあえず、f(x)=x-tanxとおいてf(x)の増減を考えればよいでしょう。f(x)は全ての実数値を隈なく取る単調減少な関数だと分かるので、題意は示せたことになります。

 

(2) x=tでの接線の式を計算し、その接線がx=θ(≧π/2)での接線と一致する、という条件を処理していきます。その時にcosθ=cost という関係式がでてきますが、これの処理の仕方がこの問題のキーポイントです。

積和の公式を使ってθを求めてみると、θ=2mπ±t (m:整数) という2通りの式が出てきます。そのそれぞれを代入して、意味のある結果になる方を検討すれば、題意が示せることになります。

 

<筆者の回答>

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