ちょぴん先生の数学部屋

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2021年度 一橋大数学 解いてみました。

2021年も大学入試のシーズンがやってきました。

今回は、一橋大学の数学に挑戦します。

 

 

<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)

1. 1000以下の素数の個数(45分)

2. ガウス記号を含んだ等比数列の和(15分)

3. 2次方程式の解と三角形の成立条件、値の取りうる範囲(20分)

4. 円と放物線の交点、関連した面積最大化(15分)

5. 積分と確率の融合問題(10分)

 

<体感難易度>

 4<5<3<2<1

一橋にしては手の付けやすい問題が多めですが、第1問が異彩を放っていますね。標準的な第4問と第5問を完答し、第2問と第3問のどっちかは押さえたい、そんな感じだと思います。

 

<個別解説>

第1問

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1000以下の素数素数を調べる問題です。何だこれ?って感じの目新しい問題です。

 

wikipedia先生によると、1000以下の個数は168個あるそうです。素数 - Wikipedia

何も思いつかなければ、最悪1から1000まで順番に素数を探していけば調べられるのですが、3桁にもなると素数か否かの判断も困難も極め、これだけで試験時間が終わってしまいます。なので、何かしら工夫をして個数を絞り込んでいきたいです。

 

素数の有名な性質として、2,3以外は、「6で割った余りが1か5」になるというものがあります。自然数は6で割った余りによって6つのグループに分けることができ、そのうち4つは偶数だったり、3の倍数だったりで素数になりえないからです。

この性質を使うと、2と3を例外として素数の候補は「6k-1と書ける自然数」と「6k+1と書ける自然数」に絞られることが分かります。ここまでで330個程度に減ります。まだまだ多いですね。

 

次の絞り込み要素は、「5の倍数になるか否か」です。6k-1型の整数も6k+1型の整数も奇数には変わりないので、5の倍数=1の位が5となります。1の位が5になるようなkは1の位だけで判別できるので、1の位が5になるものを候補から外すことができます。5自身だけが唯一の例外です。

 

ここまでの絞り込みで268個まで素数の項を絞ることができました。あと18個余分に合成数を6k-1型の整数と6k+1型の整数から見つけてくれば、題意が示せたことになります。

 

私は、「たかがあと18個だろ?」と高をくくり6k-1型の整数と6k+1型の整数を個別に調べ出すという愚行を犯してしまいました。想像以上に6k-1型の整数と6k+1型の整数には素数が多く中々合成数が18個見つけられなかったわけです。結局289まで調べる羽目になりました。解答時間が45分もかかってしまったのはそのせいです。

 

しかし、その中で気づきもあり、このタイプの合成数は7×13, 17^2 といった大きめの素数の積や平方数が多いことに気が付きました。それを踏まえて、後半部分(18個以上合成数を見つけてくる部分)をもっとスマートにしたのが別解になります。

 

大事な性質として、6k-1型の整数と6k+1型の整数の掛け算した結果も、6k-1型か6k+1型のいずれかになるというものがあります。なので、7以上の素数の積や平方数も6k-1型か6k+1型に必ずなっています。

 

268個に絞った時点で5以下の素因数は登場しないので、7以上の素数の平方数だったり積だったりが残る合成数なわけです。

となると、ざっくり7,11,13,17,19, 23と6つの素数に対して平方数と積が何個あるかを数えてみると21個あることが分かり、目標の18個をクリアできるわけです。

 

余談ですが、およその素数の個数を調べられる「素数定理」という公式があり、

「n以下の素数の個数≒n/ logn ※logは自然対数」というものです。n=1000を代入してみると、「1000以下の素数の個数≒145」となります。実際の個数は上記の通り168個だったので、誤差が20%程度ですね。n=1000程度ではあまり精度が高くないですが、nが大きくなればなるほど精度が上がっていきます。

 

<筆者の回答>

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別解

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第2問

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ガウス記号を含んだ等比数列の和を求める問題です。

 

いきなりk=1,・・・,n^2で足すと意味が分からなくなってしまうので、区間を分けて考えます。「困難は分割せよ」ですね。ガウス記号の入り方を考慮して、

L^2 ≦k≦(L+1)^2 -1 (L=1,2,・・・,n-1)と分けるとよいでしょう。この分け方の場合n=1場合だけ例外扱いになることに注意です。

 

L^2 ≦k≦(L+1)^2 -1と分ければその下では[√k ] = Lとなるので和の計算が楽になります。bnを計算するときはk=n^2の場合を追加したうえでこれらの和を足し上げていけばよいです。等比数列と等差数列の積の和は公比をかけて引き算して計算するのが定番です。

 

最後に例外扱いしたn=1の場合もチェックしましょう。 

 

<筆者の回答>

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第3問

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2次方程式の解と三角形の成立条件、値の取りうる範囲を調べる問題です。

 

(1)三角形の成立条件は、「2辺の長さの和が残りの1辺より大きい」ことなので、α+β<1, |β-α|<1とまとめられます。解と係数の関係からα+βとαβをa,bの式で書けるので、これらの不等式に代入しましょう。また、そもそもαとβは正の実数なので、判別式が0以上、かつa>0, b>0が必要になります。

 

(2) 値域を考える値をkと文字で置いて変形すると、b=ka^2 -1と放物線になります。この放物線と(1)の領域が交点を持つようにkの範囲を決めてあげればOKです。いわゆる「線形計画法」という奴です。

 

<筆者の回答>

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第4問

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円と放物線の交点を調べ、関連した面積を最大化する問題です。

 

(1)まずはCとSを連立しましょう。今回の場合はxを消してyの2次方程式にするのが良いです。すると、kの値によらずy=0が解の一つになるので、CとSは少なくとも(0,0)の1点は交点を持つことが分かります。残りの解はy=2-kとなりますが、Sの式に代入したときに、xが0でない2つの解を持てば題意を満たしクリアです。よって、2-k>0ならOKです。

 

(2) (1)の結果からPのx座標をkの式で書けるので、積分を計算することで面積の式を求められます(接点の情報があれば積分が計算できるので、接線の式は不要です)。

面積を2乗してあげるとkの4次式になるので、微分して増減を調べましょう。

 

答案では、理系で習う「積の微分法」を普通に使っていますが、展開せずとも微分するためのテクニックです。文系範囲でやるなら、2-k=Xと変数を変換すれば展開が楽になって微分しやすくなります。

 

<筆者の回答>

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第5問

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積分と確率の融合問題です。といっても、実質方程式を満たす(a,b,c)を探す整数問題の色合いが濃い問題です。

 

まずは積分を計算して簡単にしましょう。すると(a-b) (a-c) = -3が得られます。

 

この積分はそのままやろうとすると結構面倒な計算になりますので、少し工夫をします。中身の2次関数を-aだけ平行移動してあげると、積分区間が-3~3とすっきりした形にできます(平行移動しても面積は合同なので変わりません)。その状態で中身を展開すると、積分区間が0をはさんで等距離になっているので、1次の項の積分は0になって消えてくれますし、2次と定数項は、0~3の積分の2倍に置き換えることができます。

 

話を戻しましょう。(a-b) (a-c) = -3をゲットできたら、a-bとa-cが両方整数なので、

(a-b, a-c) = (1, -3), (-1, 3), (3, -1), (-3, 1)の4パターンに絞れます。この4パターンそれぞれに対して、満足する(a,b,c)を探し出してくればOKです。

 

サイコロを3回振った時の出方の総数は容易に計算できるので、これで確率を計算できることになります。

 

<筆者の回答>

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