2021年も大学入試のシーズンがやってきました。
今回は、京都大学の文系数学に挑戦します。
原則、文系ユニークの問題のみ解きますので、理系との共通問題については理系の記事をご覧ください。
理系の記事はこちら
2021年度 京大理系数学 解いてみました。 - ちょぴん先生の数学部屋
<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)
1. 小問集合
(1)n進法の変換(15分)
(2)垂心のベクトル表示(15分)
2. 絶対値付きの定積分の計算(10分)
3. 箱の中身の色を考察する確率(40分)
4. 直方体内の四角形の面積(20分)
5. 素数に関する証明(10分)
<体感難易度>
5<2<4<1(2)<1(1)<3
京大にしては解きやすい部類のセットだと思います。しかし、第1問(1)のn進法は慣れていないと難しく、第3問の確率は、解法選択をミスると一巻の終わりなうえに着想が難しいです。
第5問は京大受験者なら確実に押さえたい素数の問題で、第2問の積分も計算ミスさえ気を付ければ片が付くので押さえたい所です。
理系との共通問題はありませんでした。
<個別解説>
第1問
小問集合です。
(1) n進法に関する問題です。
例えば10進法で「100」という数字を2進法に直したければ、
100 = 1×64 + 1×32 + 0×16 + 0×8 + 1×4 + 0×2 + 0×1 という形に2の累乗の和の形に分解して、各係数を並べて「1100100」という形になります。
今回の問題のように小数が出てくる場合も同様で、6.75なら
6.75 = 1×4 + 1×2 + 0×1 + 1×1/2 + 1×1/4 と分解できるから、2進法では「110.11」と直ります。
積の計算は慣れ親しんだ10進法に直してから計算すればよく、さらに分数に直して計算すると非常に楽になります。
(2) 垂心のベクトル表示を求める問題です。
長さと角度の情報からOA・OB=3が分かるので、これを手掛かりにOH⊥AB, AH⊥OBを処理していき、各垂線が作る長さの比を調べていきます。
2つ比が分かれば、メネラウスの定理を使うことで最後に必要な比を求めることができます(もちろんベクトルの処理(別解にて紹介)でも求まりますが、メネラウスの方が圧倒的に早いです)。
<筆者の回答>
(2)後半部の別解です=メネラウスの定理ではなくベクトルの処理でOHを求める方法
第2問
絶対値付きの定積分を計算する問題です。
絶対値があると積分できないので、絶対値の中身の符号を調べて外していきましょう。そうなれば後はひたすら計算するのみなのですが、積分区間を代入したときに0がうまく出てくるように、適宜工夫しながら計算していくとミスを減らせます・
<筆者の回答>
第3問
確率の問題で、おそらく本セットの最難問です。
確率の問題への対処法は、大きく2つの方法があり、
1. 場合の数を直接数える
2. 漸化式を使う
です。今回は、このどちらの解法を選択するかで雲泥の差になります。
最初、私は1の「場合の数を直接数える」を選択して進めました。n-1回操作(*)を行う場面があり、そのうちl回移動する玉の色が変わる確率を計算し、lが偶数なら最初と同じ色、奇数なら違う色になって最後の確率が変わるだろう、という作戦でした。しかし、lの偶奇を区別して二項係数を足し上げることがどうしてもできず頓挫してしまいました。(この作戦の答案を「しくじった解法」として載せてあります。)ならばと2の「確率漸化式」に方針転換して進み、うまくいった次第です。40分も解くのにかかってしまった理由は、この解法選択のしくじりのせいです。
ということで、今回は、2の「漸化式を解く」が正解です。
最初に白玉を取り出すと仮定し、最後に箱nから白玉を取り出す状況を考えることにします(最初に赤玉を取り出すと考えても、全く同じです)。
さてどうやって漸化式を立てるか?操作(*)を行う際に、各箱は一時的に玉が3個入った状態になり、「白×2, 赤×1」か「白×1, 赤×2」のいずれかになります。そこで、箱kが一時的に「白×2, 赤×1」になる確率をak, 「白×1, 赤×2」になる確率をbkとおいて漸化式を立てることができそうです。
この漸化式を解くのは至って標準的なレベルなので難なく一般項が求まり、最終的に白を取り出す確率を計算できます。
誘導も何もない状態から解法を的確に選択し、自力で漸化式を立てて解くことが要求される、京大らしい難問でした。
<筆者の回答>
こちらがうまくいった解法です。
以下がしくじった解法です。。参考までに
第4問
直方体内の四角形の面積を考える問題です。
まず、問題文の設定から、P(1,0,p), Q(0,2,q)と文字を設定できます。ここで、O, F, P, Qが同一平面上にあると言う事は、OFベクトル、OPベクトル、OQベクトルは、他の二つのベクトルの線形結合(定数をかけて足し算したもの)で書けることになります。この条件から、pとqの関係式が求まります。
このとき、面積を計算するので「OPFQが平行四辺形だったら嬉しいなぁ」と思いつつ、OQベクトルとPFベクトルを比べてみると、両者が見事一致することが分かります。辺のベクトルが同じと言う事は、向きも長さも一緒と言う事。これで願望通り、OPFQは平行四辺形になってくれました。
こうなれば、OPベクトル、OQベクトルの情報を使って平行四辺形OPFQの面積Sをpの式として計算することができます。S^2はpの2次式になってくれるので、平方完成だけで最小値を求めることができます。
<筆者の回答>
第5問
京大の大好きな、素数に関する証明問題です。
初見では何のこっちゃとなるので、pに実際に素数を突っ込んで実験してみましょう。
以下N(p) = p^4 +14 とします。
N(2) = 30
N(3) = 95
N(5) = 639
N(7) = 2415
となります。確かにみんな素数じゃないですね。特に注目すべきは、N(3)以外は全部3の倍数になっていることですね。
ということは、「pが3以外の素数だったら、N(p)は3の倍数になるんじゃないか?」という予想が働きますね。これを証明していきましょう。
3以外の素数は3の倍数ではないので、必ず3k±1の形になっています。これをpに代入してmod3を取ってあげれば、見事0になることが示せます。
よって、pが3の倍数でなければ、N(p)は必ず3の倍数になることが分かりました。そして、N(p)は明らかに3よりも大きいので、素数になりえません。
そして最初の実験の通り、pが3の倍数になる唯一の例外p=3の場合もN(3)が素数でないことが分かります。
以上から、pが素数ならN(p)が素数でないことが証明できました。
京大にはこの手の素数絡みの過去問がたくさんあるので、過去問演習を積んだ受験生なら「もろたで工藤!」とニンマリしながら瞬殺できたであろう問題だと思います。
<筆者の回答>