ちょぴん先生の数学部屋

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2021年度 旧帝大+東工大+早慶 入試理系数学ランキング

国公立2次試験の前期日程が終わってから1週間になりますので、ここで総括を兼ねた個人的な難易度ランキングを発表します

まずは理系編です

 

文系編:2021年度 旧帝大+一橋大 入試文系数学ランキング - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com)

 

第11位:北海道大学

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 今年度最も簡単なセットだったのが、北大です。旧帝大の中では毎年北大は平易な問題を出題してくる印象で、今年もその例に漏れず、という感じですね。対処のしづらい難問も特になく、過去問演習など対策をすれば十分高得点が狙えるでしょう。

 

第1問:至って標準的なベクトルの計算問題で、センターレベルと言って過言ではありません。ほとんど文系共通問題でした。

 

第2問:接線の交点を出して、長さの比の増減を検討する一本道の問題です。計算ミスに注意すれば比較的キレイな式になりますし、増減の調べ方の方針も立ちやすいでしょう。

 

第3問:指数の関係式から対数の最大値を調べる問題で、「対数の底を変換する」という事さえわかれば見かけほどの威圧感はありません。

 

第4問:整数の証明問題で、(3)の合同式を使う所が少しだけ面倒ですかね?

 

第5問:パラメータ表示された曲線の面積を計算する典型問題です。θに置換積分し、少し歯ごたえのある積分計算を行います。

 

第10位:早稲田大学理工学部

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 続いての10位は、早稲田です。こちらも易しめの出題が多めではありますが、個人的に第4問で最初しくじってしまったので、北大より上としました。

 

第1問:傾きを計算→加法定理→微分で増減チェックという方針に迷わない一本道です。確実に押さえておくべき問題です。

 

第2問:多項式の割り算と言う事で、直接割り算を実行すればうまくいくタイプです。

因数定理を使うと却って時間がかかるので、解法選択で明暗を分けたかもしれません。

 

第3問:複素数の存在領域を求めると言う事で(3)が少々面倒だったかもしれません。

 

第4問:初見でしくじった個人的な地雷問題の確率です。確率を計算するときは、「玉も箱も区別してカウントする」という鉄則を守らないと、「同様に確からしい」という前提条件が崩れてしまうので注意が必要という問題でした。

 

第5問:世間的にはおそらく最難問はこれでしょう。特に空間認識能力がないとOGベクトルがうまく求まらない、というトラップがあります。

 

第9位:東北大学

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 9位は、東北大です。緩急揃った東北大らしいセットですが、手が付きにくい難問があまりなかったということで、この順位です。

 

第1問:2次方程式の解の配置を考えて条件を図示する問題で、これを落とすようでは東北大合格は覚束ないでしょう。文系と共通の完答必須の問題です。

 

第2問:三角形の面積比を考える問題で、基本的に線分比を追いかけていけば大丈夫です。(3)も積の形に分解する典型的な整数問題です。是非とも抑えたい問題です。

 

第3問:これは人によって出来不出来がはっきり分かれるタイプの問題だと思います。数え上げと言う事で、いかにダブルカウントしないように工夫して数えるかがカギになりました。文系との共通問題でした。

 

第4問:おそらく本セット最難問の軌跡の問題です。(2)では存在範囲を見落としがちなので注意が必要であり、(3)では頭の中で線分がどう動いていくかのイメージがうまくできないと厳しかったかと思います。

 

第5問:発想面で悩むことはありませんが、例外処理をきちんと行えたかが地味にキーポイントになりました。さらに(3)は(2)の図をちゃんと書けていないと、zの候補がうまく絞れません。

 

第6問:eの近似値計算です。登場する式が厳ついですが、基本的に誘導にうまく乗っかれば何とかなります。(1)の帰納法での証明が意外と手強いかもしれませんね。

 

第8位:九州大学

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 8位は、九大です。問題文の意味が掴みづらい(でも分かってしまえば見かけ倒しだと分かる)問題や、発想力が必要な問題が散見されたため、この順位です。

 

第1問:四面体の内接球半径や弦の長さを求めるわけですが、それぞれ、四面体の体積と表面積を求める、平面と円の中心との距離を調べる、といった典型解法があるためあまり迷わないと思います。是非ともとっておきたい問題です。

 

第2問:複素平面上の三角形について考える問題ですが、(2)は三角形が実軸対称だと気づければ特に問題はないでしょう。(3)は、どの頂点が直角になるかで場合分けが必要なので、そこで手間がかかります。

 

第3問:(1)は問題文の条件式の解釈が問われる問題で、この手の処理に慣れているかどうかがものを言いました。(2)は∫(xlogx)^2 dxの積分が要求される、そこそこハードな計算です。

 

第4問:本セットで一番話題になっただろう問題ですね。「平均値の性質をみたす」なんて造語を作ってくるあたりが九大らしいと言いますか。とはいえ、平均値の定理の式が成立するようなγを見つけてくる、という本質を見抜ければ見かけほど難しくないと気づける問題でした。もっとも、処理自体はそこそこ面倒ですが。

 

第5問:発想力の要求される整数問題です。(1)は尤もらしい不等式だけどきっちり証明しようとすれば何をすべきか、(2)はそもそもどこから手を付けていいかが思いつきにくい、人によっては最難問になりうる問題です。

 

第7位:名古屋大学

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 7位は、名古屋大です。例年に比べると大分解きやすくなっています。とはいえ、名古屋大らしい、虱潰しに調べつくさないと解けない確率の問題なども依然としてあるため、この順位となりました。

 

第1問:至って標準的な接線と面積を計算する問題で、ぜひ押さえたい問題です。(4)までが文系と共通です。

 

第2問:発想重視のユニークな出題です。(2)については、「常用対数log2の近似値を求めよ」という類の問題の経験があれば思いつけるかなと思います。(3)についてはα,β,γの式を見て「3次方程式の解と係数の関係」が閃ければ行けたと思います。逆に思いつかなければ詰みです。文系との共通問題でした。

 

第3問:名古屋大らしい、虱潰しに調べつくさないと解けない確率の問題です。どの小問も、数字の出方を全調査して足し上げる必要があり、手計算では相当面倒くさい問題です。(3)以外は文系と共通でした。

 

第4問:ガウス記号を含んだ漸化式で、見た瞬間に敬遠したくなった人も多いと思います。ガウス記号を如何にして外すかがキーになりますが、細かい不等式評価が必要で発想力も求められます。(4)は(3)の結果ありきで解けるとはいえ、最終的にできる漸化式は類題経験がないと解きづらい仕様です。

 

第6位:京都大学

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 6位は、京大です。最近の京大はこの辺りが定位置になるほど難易度が簡単になってきました。単純な難易度では先述の名古屋大以下にしても良いくらいなのですが、一部自力で解けなかった問題があったので、この順位にしました。

 

第1問:

(1) 平面に対称な点を求める問題で、至って標準レベルです。是非とも抑えたいです。

(2) 確率の問題については、時々出てくる「3色とも全て登場する確率」という題材で、類題経験がものを言ったと思います。

 

第2問:線分の長さの最大値を求める問題で、Lをpの座標で表現→微分という一本道の問題で、完答必須でしょう。

 

第3問:これは記事で紹介した通り、オイラーの公式という裏技を知っているか否かで難易度が天と地ほどの差になります。多くの高校生はオイラーの公式は知らないと思うので、計算量の多い難問の部類になってしまうと思います。逆にこれを知っているマニアであれば瞬殺できてしまう易問だったとおもいます。

 

第4問:曲線長さを求める問題で、公式通りに積分計算するだけです。解く積分もよくあるタイプなので、是非とも抑えたい問題です。

 

第5問:図形問題と言う事で、図形センスがあると楽に言ったかと思います。(1)では円周角の定理を思いつきたいところですし、(2)ではAとHのx座標が一緒だと気づければ楽ちんです。

 

第6問:

(1) これは、「メルセンヌ数2^n -1 が素数になる必要条件は、nが素数であること」という証明をやったことのある人であれば、方針は簡単にたったかと思います。

(2) 私自身が初見で解けず、解答速報を見ても「g(x)=f(x)/xに平均値の定理」を使うというアイデアを試験場で思いつくのは客観的にも難しいだろうと判断しました。捨て問で良いです。

 

第5位:慶応義塾大学理工学部

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 5位は、慶応の理工です。小問集合がなくなったため実質の問題数が例年に比べて減っています。とはいえ、1問当たりのボリュームは相変わらずなので、時間内に全部解き切ろうなんて無謀なことは最初から考えないようにするべきです。

 

第1問:(2)までは標準的な出題ですが、(3)が少し手間がかかりますね。領域の形と放物線の性質から、「共有点を持たない条件」を考えたほうが楽だと気づけたかどうかがキーポイントになりました。その後の数値の大小比較も地味に面倒です。

 

第2問:多項式の割り算に関する問題で、次数下げを行うか、αを直接計算していきなり代入するかという解法をうまく使い分けないとうまくいかない厄介な問題です。

 

第3問:文句なしで本セット最難問です。(2)の時点ですでに条件付確率という嫌らしいものを要求され、(3)も発想が必要、(4)も確率をうまく計算する方法で相当悩まされます。

 

第4問:極限の計算問題で、誘導が比較的丁寧です。とはいっても(3)でうまく工夫したうえで(1)(2)を使わないとはさみうちに持ち込めない発想重視な面もあります。

 

第5問:図形の計算問題デパートの様相で、方針自体は立ってもやることが長いですね。その面倒さを如何に我慢して乗り切るかが問われました。

 

第4位:慶応義塾大学医学部

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 4位は、慶応医学部です。難易度自体はむしろ理工よりも若干低いくらいなのですが、各問のボリューム+第2問の目新しさを鑑み、理工よりトータルで若干上だろ、と判断しました。

 

第1問:

(1) 標準的なベクトルの計算問題で、確実に押さえるべき問題です。

(2) こちらの積分計算と極限も、計算ミスに注意すれば比較的サクッと解けます。

(3) 2次方程式の解の性質をきちんと場合分けして解いていかないといけなくて、かつ問われている未知数の種類も多いという、かなり厄介で面倒な問題です。

 

第2問:ネット上でも話題になった、まさかの統計学からの出題。大学入試で問われることの少ない分野ゆえに、不意を突かれた受験生は数知れずでしょう。各種統計学の用語を知らなければもはや手も足も出ません。しかし、逆にこれらを知っていれば、よくある数列の問題に概ね帰着できることに気が付きます。

 

第3問:行革が等しくなる条件を処理していく問題で、結局は慶応お得意の2次曲線に帰着します。式変形の工程が長く文字も多いので処理が面倒になっています。

 

第4問:双曲線関数を題材にした微分方程式の問題、という感じですね。方針自体は容易に立ちますが、これまた処理が長い長い。

 

第3位:大阪大学

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 3位は、阪大です。去年が余りに簡単すぎた反動から一気に難化し、例年通りの難易度に戻ってきました。記事でも書きましたが、標準的な前半2問、難問の後半3問とくっきり分かれたセットです。

 

第1問:双曲線への接線に関する問題で、(1)では解と係数の関係を使う、(2)は実質abの最大最小を調べる問題に帰着できることに気が付ければすんなりと解けます。ぜひ押さえたい問題です。

 

第2問:空間ベクトルの計算問題で、「同一平面上にある」という条件の処理の仕方を心得ていれば、これまたすんなり解けてしまう問題です。これまたぜひ押さえたいですね。文系との共通問題でした。

 

第3問:(2)までは簡単ですが、(3)がかなり重厚な難問ですね。そもそも類題経験がなければ手も足も出なかったのではと思います。特にqの値は。

 

第4問:整数問題で、(1)は場合分けの検討が面倒、(2)は各素因数の配分について深い考察をしなければならず厳しいですね。

 

第5問:(1)はいいにしても(2)が初見だと躓きやすいと思いますね。cosθ=costという式を見たときに安易にθ=tとしてはいけない、というのが罠です。

 

第2位:東京工業大学

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 2位は、東工大です。東大とかなり迷いましたが、昨年に比べて難易度が大分落ち着いたこと、全く手につかない問題があまりなかったことから、ついに首位陥落です。

 

第1問:一見すると難問のようですが、実際にやってみると拍子抜けするほど簡単に解けてしまう問題です。k桁の条件を満たす整数の最小値さえ考えればOKでした。他の問題が骨があるので、この問題を落とすと大分厳しくなります。

 

第2問:(2)までは図形的な考察も込みにすれば、割と行けると思います。(3)では、(2)の結果から、各頂点がOに対して点対称でないといけない、と気づけたかがキーポイントになりました。でないと(3)はかなり厳しいです。

 

第3問:本セット最難問の整数問題です。(1)はサクッと解いてしまいたいところですが、(2)以降は発想力が必要な難問です。特に(3)は試験場で解くのは相当厳しい捨て問です。

 

第4問:(1)の式計算は、ゴールの式をよく観察して計算を工夫していかないとたどり着きません。(2)は平方完成もどきをするという発想が閃きにくいでしょうかね。(3)も文字を置いて検討するも、「果たして座標がビシッと決まるのか?」という不安を抱えながら進めないといけなくて精神的によろしくないです。

 

第5問:体積計算自体はあまり重荷にならないため、メインディッシュは(2)です。これをどう解くかの方針決めがかなりしんどいですね。

 

第1位:東京大学

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 栄えある第1位は、東大です。どの問題も典型問題から少しずれたような出題をされているのがポイントで、方針決めで悩む問題が多めでした。そんな問題が連続して襲ってくる総合力の勝利で、東大を1位としました。

 

第1問:(2)が典型問題から外れた「2文字が動くときの通過領域」です。順像法を的確に選択し、かつ値域を求めるのに線形計画法を使うと見抜くことが必要で、見た目よりもずっと難しく感じました。文系との共通問題でした。

 

第2問:まず複素数がa,b,c,α,β,γの6種類あり、(2)で実数になるのがギリシャ文字の方という慣例に反した地味な嫌がらせがあります。これを振り切ったとしても、3文字の変数の和の値域を求める、というのはあまり経験のない作業で方針に戸惑いました。

 

第3問:とにかく(2)の積分計算が死ぬほど重かった問題です。初手で展開すれば難易度が大分下がる(それでも大変)のですが、それをせずにやったので本当に地獄を味わいました。

 

第4問:そもそもの考察が難しい本セット最難問と思しき整数問題です。(1)と、(3)の結果ありきで解ける(4)を別にすれば、本当に難しいです。大学では(2n)!からn!を抽出する作業は割と多く出てきますが、(4n)!の場合は経験がなく、それを(2n)!すら満足に取り扱ったことのない高校生に強いるのですから、かなり厳しいでしょう。しかも文系共通ときた。頭おかしいですね。。

 

第5問:このセットでは珍しくストレートに解ける問題です。三角関数を含んだ関数の微分と言う事で、計算量自体は多めですが、方針に迷う事なありません。せめてこの問題だけでも押さえておきたいです。

 

第6問:4次式の因数分解の問題で、(2)の意味するところが分かりにくかった人が多いのではと想像しますね。(3)も息の長い議論をせねばならず、p=0の検討を以外に見落としがちになると思います。

 

 

今年はコロナ禍という大変な年だった中、多くの大学でつつがなく試験が行えたことは喜ばしいことです。来年こそは、例年通りの受験シーズンが迎えられるといいですね。