ちょぴん先生の数学部屋

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2021年度 旧帝大+一橋大 入試文系数学ランキング

国公立2次試験の前期日程が終わってから1週間になりますので、ここで総括を兼ねた個人的な難易度ランキングを発表します

続いて文系編です

 

理系編:2021年度 旧帝大+東工大+早慶 入試理系数学ランキング - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com)

 

第8位:北海道大学

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 最も簡単な問題は、北大でした。理系同様に至って平易な問題が並んでいます。

 

第1問:数列の一般項と和を計算する問題で、教科書の章末問題のレベル感です。完答必須でしょう。

 

第2問:至って標準的なベクトルの計算問題で、センターレベルと言って過言ではありません。ほとんど理系共通問題でした。

 

第3問:三角関数を含んだ方程式を解く問題で、三角関数の諸公式に対する理解力が問われました。(1)でうまい変換公式が思いつけたか、(2)ではtの取りうる範囲を調べられたかがキーポイントとなりました。

 

第4問:放物線と直線で囲まれた部分の面積を計算する、これまた典型問題です。(3)の微分も難しくありません。

 

第7位:大阪大学

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7位は、阪大でした。理系編では3位という高順位でしたが、その上位の原因となっていた難問が文系にはなく(ないし大幅易化)、文系オリジナル問題も至って標準的な出題だったため、この順位となりました。

 

第1問:定点を通る接線に関する問題で、典型問題と言えます。(3)の最小値を求めるところで文系ならではのテクニックが必要ですが、阪大受験生なら心得ているでしょう。

 

第2問:空間ベクトルの計算問題で、「同一平面上にある」という条件の処理の仕方を心得ていれば、素直に解ける問題です。これまたぜひ押さえたいですね。理系との共通問題でした。

 

第3問:整数問題で、理系の第4問を大幅スケールダウンさせたものです。c=3であれば頻出の整数問題ですので押さえたいですね。(3)が少々面倒ですが。

 

第6位:東北大学

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 6位は、東北大です。標準的な問題は多めですが、出来不出来がはっきり分かれる第2問、解法選択によって難度の変わる第3問などがありますので、この順位です。

 

第1問:2次方程式の解の配置を考えて条件を図示する問題で、文系であってもぜひ押さえたい問題です。理系と共通問題でした。

 

第2問:これは人によって出来不出来がはっきり分かれるタイプの問題だと思います。数え上げと言う事で、いかにダブルカウントしないように工夫して数えるかがカギになりました。理系との共通問題でした。

 

第3問:2つの円の関係から角度と面積を求める問題で、座標を使わず純図形的に解く方法と座標軸を設定する方法の2つがあります。前者を選べばかなり楽ですが、後者を選ぶと結構面倒になります。

 

第4問:共通接線に関わる問題で、先に3次関数の接線として式を出し、放物線にも接するという順序で処理することをしくじらなければ難なく行くと思います。

 

第5位:九州大学

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 5位は、九大です。理系同様に問題文の解釈がしにくい第2問と、面倒な漸化式の登場する第4問の存在によりこの順位です。

 

第1問:理系の第1問の平面版といった趣の問題です。三角形の面積と周長を求める、直線と円の中心との距離を調べる、といった典型解法があるため方針に迷うことはないと思います。

 

第2問:前述のとおり問題文の条件の解釈ができるかどうかが全てと言っていい問題で、類題経験がものを言ったと思います。

 

第3問:放物線と接線の囲む部分の面積という、典型的な問題なのでぜひ押さえたいです。

 

第4問:(1)は教科書にも載っているような和の計算ですが、(2)は威圧感が強く敬遠してしまうかもしれませんね。帰納法を使うと分かっていても、式変形がそれなりに大変です。

 

第4位:一橋大学

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 4位は、一橋大です。第1問が異彩を放っており、その他の問題もそれなりに歯ごたえがあります。

 

第1問:おそらく今年の出題の中で一番話題をさらったのではないかと噂される、1000以下の素数の個数を評価する問題ですね。初見だと何をすればよいのかの見当も付きにくく、難しかったと思います。よしんば偶数、3の倍数、5の倍数と取り除いても目標の250個を10~20個オーバーするという、痒い所に手が届かない歯がゆさもこの問題の特徴です。

 

第2問:ガウス記号を含んだ数列の問題と言う事で、ガウス記号を如何にして外すかの着想がキーになりました。

 

第3問:三角形の成立条件と値の値域を求める問題です。三角形の成立条件は実際に図を描いて辺の長さの関係を意識すれば自力で出すことができます。(2)の値域は、領域と放物線の交点を持つ条件を調べるという、余り類題のない風変わりな問題でした。

 

第4問:円と放物線の交点についての問題で、これは標準レベルの問題です。是非とも抑えたいですね。

 

第5問:積分の計算さえミスなくできれば、よくある整数問題に帰着できます。これも是非とも抑えたい問題です。

 

第3位:名古屋大学

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 3位は、名古屋大です。着眼が難しかったり、全調査が面倒な問題があったりするので、この順位です。全ての問題が理系と共通の問題でした。

 

第1問:至って標準的な接線と面積を計算する問題で、ぜひ押さえたい問題です。理系にあった(5)が省略されています。

 

第2問:発想重視のユニークな出題です。(2)については、「常用対数log2の近似値を求めよ」という類の問題の経験があれば思いつけるかなと思います。(3)についてはα,β,γの式を見て「3次方程式の解と係数の関係」が閃ければ行けたと思います。逆に思いつかなければ詰みです。

 

第3問:名古屋大らしい、虱潰しに調べつくさないと解けない確率の問題です。どの小問も、数字の出方を全調査して足し上げる必要があり、手計算では相当面倒くさい問題です。文系の(2)(3)は、理系の(2)を分割したものであり、理系の(3)にあたる問題が省略されています。

 

第2位:京都大学

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 2位は、京大です。京大にしては難度が低めですが、それでも第3問の様な難問もあるため、この順位です。

 

第1問:

(1) n進法の問題で、経験がないと相当辛いことになります。まして、今回の場合は小数部分まで要求されていますからね。

(2) 垂心のベクトル表示で、こちらは頑張れば解き切れるレベル感です。

 

第2問:絶対値付きの定積分の問題で、基本を押さえて計算ミスさえしなければ容易く解けます。ぜひ押さえたい問題です。

 

第3問:この確率の問題は理系で出題されたとしても苦戦する人が続出するような難問です。他の旧帝大であれば、小問に分けて誘導を付ける(今回の場合は漸化式を立てさせるなど)ところですが、京大らしくそんなヒントは用意してくれていません。自力で漸化式と立てることを思いつきそれを実行して解き切る力が必要で、相当厳しかったと思います。

 

第4問:空間ベクトルの問題で、同一平面上にあることの処理、平行四辺形となることを確かめる行為、面積計算の実行、といくつかのハードルを乗り越えないといけない問題で、類題経験がものを言ったと思います。

 

第5問:この問題は、「京大受験生にとっては」ボーナス問題です。京大の過去問にはこの手の素数絡みの証明問題が多いためです。やり慣れている人によっては、最初に実験→3の倍数になるじゃん→pを3で割った余りで分類してみるか、という流れはすぐに思いつくものです。

 

第1位:東京大学

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 栄えある第1位は、東大です。理系と合わせて2部門制覇です。文系に関しては、迷いなくダントツでしたね。理系と共通の第4問が難問なのを筆頭に、一筋縄では解けない問題のオンパレードでした。

 

第1問:3次関数と円との交点の個数を調べる問題で、いきなり解法選択で迷わせてくる問題です。2曲線とも原点対称だから実質x>0側に3点あればOKだと気づくのも中々難しい所でしょう。逆にこれに気が付けばよくある典型問題になるのですが。

 

第2問:自然数の選び方を数え上げる問題で、これは自分で実験をして法則性を見つけないと解けない類の問題でした。結構深入りして試行錯誤しないと例外処理などを見落としがちで、しかもダブルカウントのリスクもあり、中々厳しかったのではないでしょうか?

 

第3問:(2)が典型問題から外れた「2文字が動くときの通過領域」です。順像法を的確に選択し、かつ値域を求めるのに線形計画法を使うと見抜くことが必要で、見た目よりもずっと難しく感じました。理系との共通問題でした。

 

第4問:そもそもの考察が難しい本セット最難問と思しき整数問題です。(1)と、(3)の結果ありきで解ける(4)を別にすれば、本当に難しいです。大学では(2n)!からn!を抽出する作業は割と多く出てきますが、(4n)!の場合は経験がなく、それを(2n)!すら満足に取り扱ったことのない高校生に強いるのですから、かなり厳しいでしょう。それも文系受験生相手に。理系との共通問題でした。

 

今年はコロナ禍という大変な年だった中、多くの大学でつつがなく試験が行えたことは喜ばしいことです。来年こそは、例年通りの受験シーズンが迎えられるといいですね。