皆さん、こんにちは。
私はニチアサクラスターで毎週仮面ライダーと戦隊を視聴しています。
そんな中、本日(10/24)放送の「機界戦隊ゼンカイジャー」で、唐突に数学の問題が登場してtwitterでも話題になっていました。
おまえらならすぐ解ると聞いた#ゼンカイジャー #nitiasa pic.twitter.com/lwH9QW1LTR
— はな丸 (@hanamaron) 2021年10月24日
パット見、積分記号や微分記号がたくさん並んでいて、どう考えてもメイン視聴者である幼稚園生・小学生には理解不能な問題のように見えます。
実は、この問題たちは「実際に大学入試として過去に出題された問題」ばかりだったのです。それも東京大学や東京工業大学と言った難関大学の、です。あまりのガチっぷりにリアルタイムに見てて吹き出してしまいました笑
せっかくなので、これらの問題を解いてみましょう。
※Twitterにて先行で解答をupしています。
ゼンカイジャーで唐突に大学入試の数学が出てきて大草原。ちなみに、全部実際に出題された過去問です。
— チョピン@ファイザー2回接種済 (@chopin1989) 2021年10月24日
1. 東大2001年理系第2問
2. 見たことあるけど覚えてない
3. 東工大2019年第2問
4. 初見だけど、おそらく典型問題 https://t.co/jRdNWwe5iL
0. そもそもどういう経緯で出てきたか?
真面目に語ろうとすると、ゼンカイジャーそのものの世界観設定に触れないといけないので、ゼンカイジャー未見の方にも理解できるように、さわりの部分だけ説明します。
戦隊モノでは、毎回1体怪人が登場しては特殊能力を使って主人公たちを翻弄するものの、最終的に倒されるというのがお決まりの展開です。そして、等身大で倒された後に巨大化して再度戦いを行って倒される、と言うのがお約束です。
で、今回登場した怪人は「ガクエンワルド」という怪人です。その名の通り、世界をスパルタ学校の世界観で染め上げて侵略を果たそうとする怪人です。
ワルド|機界戦隊ゼンカイジャー|テレビ朝日 (tv-asahi.co.jp)
今回、話題の場面がやってきたのは、終盤の巨大戦のシーンです。
主人公たちは巨大ロボで応戦するのですが、ガクエンワルドが「ランドセルシールド」なる特殊能力を発動し、主人公たちの攻撃が効かなくなってしまいました。
なんとそれは、「ランドセルに書かれた問題を解かないと攻撃できない」という非常に厄介なシールドだったのです。今回話題にする問題は、まさにそのランドセルに書かれた問題だったのです。
当然主人公たちの学力ではどうにもならず、本来ならゼンカイジャー万事休すな場面でした。
それを一体どうやって解決したか、、、それは是非本編をご視聴ください。
1. 問題を解いてガクエンワルドを倒そう!
本編では、主人公たちが予想の斜め上を行く方法でこのシールドを突破するのですが、ここは数学ブログ。正攻法で、きちんと問題を解いてガクエンワルドを倒しましょう。
問題の画像を再掲します。
問題は全部で大問が4つあるようです。そのうち3つにはあからさまに積分が登場しており、残りの1問にも微分記号やルートが登場しています。どう考えてもメイン視聴者の子供たちに解かせる気がありません。
私が最初に目についたのは3問目の問題。とても見覚えのある問題でした。で、1問目に目をやると、それも解いたことのある問題でした。そして、その正体を悟った時、「このセットはガチすぎる・・」と身震いしました。
何て問題を出しやがるんだ、、トジテンド学園は・・・
(※トジテンドは、ゼンカイジャーが戦う悪の組織です)
では、具体的にそれぞれの問題を見ていきます。
(1) 第1問
1問目はこんな問題です。
高校生で習う「積分方程式」というジャンルの問題です。積分の中身にsin,cosが入っているので、実際には数Ⅲまでの範囲が要求されます。
実は、この問題の正体は「東京大学の2001年度入試 数学理系第2問」、ということで東大の過去問です。東大としては比較的解きやすい部類の問題とは言え、まさかの東大の過去問ですよ。びっくりです。道理で見たことあるはずだわ・・・
この問題については、当ブログの東大過去問解説記事にて取り上げています。なので、詳細は下記をご覧ください。
(2)第2問
2問目はこんな問題です。
容器が空になるまでの時間を計算する「微分方程式」というジャンルの問題です。
今の学習指導要領では高校の範囲外ですが、90年代には高校の範囲内でいくつかこの類の問題が大学入試で出題されていました。この問題も、おそらくその辺りの年代の過去問だと思われますが、出典は分かりませんでした。少なくとも旧帝大や東工大ではないので、早慶かMARCHあたりの過去問ではないかと思います。
(追記)出典は、京都大学2006年度理系後期数学第5問でした。京大もそれも後期!ノーマークでした。
一応初見の問題なので、ここで解説します。
まず問題文の前半を読むと、考える容器が「底面半径がR, 高さHの円錐」だと分かります。そこから、排出された水の量Vと、水面の高さhとの関係を調べることができます。ここは中学生でも解けてほしい所です。
こうしてVがhの式で求まったので、問題文の後半に与えられている微分方程式に代入して、hの微分方程式として解き進めることになります。
微分方程式は、最も解きやすいタイプの「変数分離形」の形になっているので解くこと自体は容易です。こうしてhが時刻tの式として求まりますが、積分定数Cがまだ残っています。
Cについては、時刻t=0の時は、h=Hになるという情報から確定させることができます。
最後は、空になるときh=0となるので、それに対応するtが求まる、という算段です。
<筆者の回答>
(3)第3問
3問目はこんな問題です。
これは、1問目と同じく「積分方程式」の問題です。
この問題の正体は、「東京工業大学2019年度数学第2問」です。
東京工業大学と言えば、理系専門の東大に次ぐレベルの超難関大学で、数学自慢が多く受験することで知られています。
2019年の問題はそんな数学の猛者たちに大きなトラウマを植え付けた難問ばかりのセットで有名で、この第2問はそんな難問のうちの1つです。この問題を試験本番で最後までミスなく解ききった受験生はほとんどいなかったのではと目されています。
この問題については、当ブログの東工大過去問解説記事にて取り上げていますので、詳細は下記をご参照ください。
(4)第4問
4問目はこんな問題です。
これは、第2問と同じく「微分方程式」のジャンルの問題です。誘導が細かく付いていて、誘導に乗っかれば解き切ることができる問題になっています。
こちらの問題に関しては、出典が分かりませんでしたので初見としてここで解きます。
また、問題文に明らかな誤植があると感じましたので、以下の修正を加えた上で解きます。
1行目: 誤x>1/3 →正x>-1/3
(画像のままだとx=0を代入できないため。x>-1/3への修正がなぜ正しいかは解いていくうちにわかります)
(*)の積分の中身:誤 dr →正 dt
(dの後にくる文字で積分します。画像のままだと「rで積分する」という意味不明な操作になってしまい、f(x)の式にxとtが混じってしまいます。「tで積分する」という意味にすれば、tが積分で消えてくれるのでf(x)はxだけの式になって辻褄が合います)
(1) これは瞬殺です。x=0を代入すると、積分区間の両端が一緒になるので、積分の部分は丸ごと全部消えてくれます。
(2) 問題文の通りに両辺を微分してx=0を代入しますが、注意が必要です。
積分の中身にxとtが混じっていて、積分する文字はtになっています。この場合、積分計算的にはxはただの数字と一緒なので積分の外に出せます。この操作を必ずしましょう。
その上で微分を行います。積分の部分の微分は、tにxをそのまま突っ込んで積分を外す形になります。積の微分も要求されるので要注意です。
(3) (2)で出てきた関係式は、f'(x)の微分方程式になっているので、それを「変数分離形」の方法で解きます。
(4) (3)の結果をさらに積分して、(1)-(2)の情報を使って積分定数を確定させればフィニッシュです。
<筆者の回答>
これで、4問とも解けてガクエンワルド撃破に成功しました。
2. ガクエンワルドを正攻法で倒せるヒーローは誰だ!?
せっかくなので、オマケ的な話もしておきましょう。
上記の通り、ガクエンワルドを正攻法で倒すにはこの問題を全て解ける必要があります。そんな学力の高いヒーローは実在するのでしょうか?
候補としては、
1. 受験生
2. 学校の先生
3. 高学歴(医者など)
4. 天才科学者
5. AI
が上がると思います。
1.受験生に当てはまるのは、
・仮面ライダーフォーゼ
あたりだと思いますし、
2. 学校の先生には、
が該当します。
しかし、彼らがガクエンワルドを倒すのは少々厳しいのではないかと思います。
多くの難関大受験生でも、真面目にこの4問を解くと、
1問目:15分
2問目:20分
3問目:40分
4問目:15分
の計90分は掛かってしまうものと思われます。
そもそも難しい問題ばかりなので、並大抵の一般人は解き切ることができませんし、仮に問題が解けたとしても、90分もの時間がかかるとその間にガクエンワルドに好き勝手されてこちらがやられてしまうのが必定でしょう。
つまり、ガクエンワルドを被害最小限で倒すには、ごくごく短時間で問題を解けるだけの超人的な頭脳が必要なのではないでしょか?
その意味で、平凡な高校生であるメガレンジャーや、小学校教師で今回の問題のような微積分から遠ざかっているファイブマンでは、ガクエンワルドを相手取るには厳しいでしょう。
可能性があるとすれば、フォーゼでしょうか。
主人公のフォーゼ=弦太郎こそお世辞にも学力は高くないですが、相棒の賢吾やメテオ=流星は並外れた秀才という設定になっています。戦闘は弦太朗に任せ、賢吾と流星の2人が手分けして問題を解き、その答えを弦太朗が聞いて攻撃すれば、なんとか時間を短縮できるワンチャンがあります。
では、残りの3つの候補はどうか?
3. 高学歴(医者など)の筆頭候補は、
仮面ライダーエグゼイド
でしょう。
主要ライダーのほぼ全員が医者という設定になっています。彼らが手分けして1問ずつ解けば、ワンチャンあるでしょう。
ただ、最年少の主人公、宝生永夢(=エグゼイド)ですら研修医という立場で大学受験当時から少なくとも6年は経過しているはずで、医学の分野でここまで高度な微積分は登場しないと思います。ということで、受験生当時の勘所は大分失われている可能性が高く、素早く解けるかと言うと・・・
次に、4. 天才科学者に該当するのは、
仮面ライダービルドです。
主人公の桐生戦兎(=ビルド)は、自他ともに認める「天才物理学者」で、各種ガジェットも自力で開発してしまうガチのエンジニアでもあります。
物理学、工学という微積分を現役でバンバン利用する分野のスペシャリストということもあり、正直、人間であれば戦兎が一番ガクエンワルドを相手に出来る可能性が高いと思います。
と思ってましたが、もう1組候補がいましたね・・・鳥獣戦隊ライブマン
ライブマンの主人公たちは「科学アカデミア」という学校のエリート科学者の卵でした。彼らなら分担すれば短時間で解け、戦兎以上のスピードで対抗できる気がしてきました。。。単純な人数だけでなく、ライブロボという巨大戦力まで完備してる点で優位ですし。
最後に、5. AIに該当するのは、
仮面ライダーゼロワンに登場する滅亡迅雷netの面々でしょうか。もっといえば、作中に登場するAIすべてが該当するでしょう。
その中で最も計算能力が高そうなのが、マザーAIである「衛星ゼア」「衛星アーク」ですね。ゼアあたりなら超高速で計算してガクエンワルドのシールドを突破しそうなものです。ただし、問題文をコンピュータが理解できるように翻訳する作業は必要だと思います。最近では画像処理の技術の進展で、問題文画像をスキャンしただけで高速で計算するアプリが実在するようですが笑
ということで、ガクエンワルドを正攻法で倒せそうなヒーローは、
①桐生戦兎(仮面ライダービルド)
②ヒューマギア(仮面ライダーゼロワンに登場するAI)
③鳥獣戦隊ライブマン ←追加
くらいしかいないのでは、と考察しました。
ここまで駄文に付き合って下さり、ありがとうございました。