このシリーズでは、平成の一橋数学の後期入試の問題を1年ずつ遡って解いていきます。
一橋の後期は文系向けにも関わらず数Ⅲが出題範囲に含まれています。なので、どうしても数Ⅲの知識が不可避な問題については「※数Ⅲ必須」とコメントを付けておきます。数Ⅲやってないよ、という文系志望の方は、このコメントのない問題を中心に見ておけばよいと思います。
13回目の今回は2005年になります。
第1問
整数問題です。
(1)小さい素数で実験をしてみると、5以上の素数pについては2p+1, 4p+1のどっちかが3の倍数になりそうだと気付きます。あとはそのことを証明しましょう。
5以上の素数pは6m+1か6m-1のいずれかの形に必ずなる、という性質を使うとよいでしょう。
(2)こちらも小さい素数で実験すると、7以上の素数qについては、2q+1, 4q-1, 6q-1, 8q+1のどれかが5の倍数になりそうだと分かります。
これの証明については、2,5以外の素数の1の位が1,3,7,9のどれかになることを利用すればよいでしょう。
<筆者の解答>
第2問
複素数の方程式を解く問題です。
絶対値が1という条件があるので、各複素数を極形式で表現すると解きやすくなりますが、三角関数を使いこなせないとなかなか解くことができません。特に(2)は難問だと思います。
(1)α, βを極形式で表して実部と虚部を比較すると2本の方程式ができます。
sinだけの式について、左辺は和積の公式で、右辺は2倍角の公式によって共通因数が作れるので、
それを手掛かりに因数分解をして必要条件を求めましょう。
その条件がcosだけの式の方に当てはまるかを確認していきます。
(2)z, wが「実数の範囲」であれば、(z,w)=(1,1)と答えがすぐに分かりますが、残念ながら「複素数の範囲」まで答えを要求されているので、それ以外の虚数の答えがあるかを確認する必要があります。
方針自体は(1)と同じなのですが、実部と虚部を比較してできる連立方程式は(1)と比べても飛躍的に処理しにくい式になります。これをどう処理するかが思いつきにくく、思いついても処理自体が煩雑で大変、という難問です。
文字の入った項が多すぎるのが問題なので、なんとか数字だけの項をメインにして文字の入った項をひとまとめにしたいです。その発想で思いついたのが、両辺を2乗して足すというアイデアです。そうするとsinの2乗+cosの2乗=1が使えて、残った文字の項も加法定理でひとまとめにすることができます。
こうしてzとwの偏角の差の候補が複数求まります。
この候補それぞれを元の2式に代入して、両方を同時に満たす角度があるかを調べていきます。ここでも加法定理と合成、因数分解のオンパレードでかなり骨の折れる処理が要求されます。
そうすると、すぐに分かる実数の解の組み合わせ(z,w)=(1,1)以外に、虚数の解の組み合わせがあることが分かります。
<筆者の解答>
第3問
図形に絡めた関数の最小値を求める問題です。
P(p,0), Q(0,q)とおいて問題文の条件を処理すると、(p^2 -1)*(q^2 -1) =1 となります。ここで、p>1かつq>1じゃないと不整合が起こるので、p^2 -1>0かつq^2 -1>0が分かります。
このとき、aOP^2 + bOQ^2の最小値は相加相乗平均を利用すると求めることができると気が付けるかがキーポイントです。
<筆者の解答>
第4問
3次関数の交点の個数を考察する問題です。
両者を連立してできる3次方程式が2つの実数解を持つaの条件を求めることに終始します。条件は、3次方程式の左辺の関数が「極値を持っていて、かつその一方が0になること」です。途中細かな場合分けがあるので、そこに注意して進めましょう。
別解としては、「定数分離」という方法があり、連立した方程式をa=(xだけの関数)の形にして、このxだけの関数のグラフと直線y=aとの交点の個数を調べるという方法になります。分数関数を微分するので数Ⅲ知識が必要になりますが、慣れてしまえばこっちの方法がかなり汎用性が高いです。
とはいえ、今回の問題の場合は、計算量の問題でおそらく「定数分離」しない前者の方法の方が楽だと思います。
<筆者の解答>
別解
第5問
確率の問題です。この問題は(2)からいきなり解いた方が手戻りがないと思います。
(i)と(ii)という一連の操作を1回行ったときのA,Bの手持ちの状態は、どっちが赤を持っているかの2パターンしかありません。
なので、この2パターンの推移の仕方を調べてあげればpkの漸化式を立てることができます。それを解くことで最初からpkを一般的な形で求めることができます。
その一般項にk=3を代入すれば(1)の答えです。
<筆者の解答>