ちょぴん先生の数学部屋

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平成の一橋後期数学 -2004年-

このシリーズでは、平成の一橋数学の後期入試の問題を1年ずつ遡って解いていきます。

 

一橋の後期は文系向けにも関わらず数Ⅲが出題範囲に含まれています。なので、どうしても数Ⅲの知識が不可避な問題については「※数Ⅲ必須」とコメントを付けておきます。数Ⅲやってないよ、という文系志望の方は、このコメントのない問題を中心に見ておけばよいと思います。

 

14回目の今回は2004年になります。

 

第1問

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平方数の差で書ける自然数が何かを考える問題です。

 

(1) 「奇数のシグマが平方数になる」になるという性質を知っていれば、2L+1 = (L+1)^2 - L^2 が思いつけると思います。

 

このように「m,nが存在することを示せ」という問題では、条件を満たす(m,n)の組み合わせを1つでも見つけてきてしまえばよいのです。が・・・

 

(2) (1)の結果を使うと、kが4の累乗×奇数という形なら容易にm,nを構成することができます。

 

問題は、そうじゃない場合、つまりkが2の奇数乗×奇数の場合がどうなのかの確認です。一般に「かけないこと」の証明は難しいので、m,nが存在すると仮定したときに矛盾が起きるか否かを検証することになります。

 

k = (m+n)*(m-n)となりkは偶数なので、m+nとm-nは両方偶数になります。もしkが4の倍数なら「偶数×偶数」の因数分解ができますが、kが4で割り切れない偶数の場合はそれができません。

 

よって、kが4で割り切れない偶数の場合に矛盾が生じるので、この場合だけkは平方数の差で書けないことになります。

 

<筆者の解答>

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第2問

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複素数の数列の漸化式を解く問題です。

 

(1) |zn|だけの漸化式を作ると、|zn|^2という形が出現します。この手の漸化式は対数を取るのが定石です。漸化式と初項から|zn|>0は明らかなので気兼ねなく対数を取って大丈夫です。係数に2があるので、対数の底は2を採用するといいと思います。

 

(2) |zn|の一般項が(1)で求まったので、あとは偏角θnの漸化式を作って解いてしまえばよいでしょう。

 

※本当は、cos,sinを外す際に一般角の形で書いた方が好ましいのですが、最終的に2πの整数倍は消えてしまいますし、面倒な議論が生じそうだったので、答案ではあえて触れませんでした。

 

<筆者の解答>

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第3問

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空間内の三角形の面積を考察する問題です。

 

三角形の面積の公式に与えられた座標を入れて計算すると、√の中身がsinθの2次関数になります。-1≦sinθ≦1に注意して最大値と最小値を求めましょう。

 

<筆者の解答>

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第4問

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法線の存在条件を求める問題です。

 

(1)x=sでの法線の式を求めて、それが(3,0)を通る条件を考えればOKです。

 

(2) (1)で考えたx=sでの法線がy=x^2 + tにも接する条件を調べると、sの4次方程式が出来上がります。この4次方程式が実数解を持つようなtの条件を調べればOKです。

 

この4次方程式はs^2=XとすればXの2次方程式に出来るので、この2次方程式が正の実数解を持つ条件と読み替えることができます。

 

別解としては、上記の4次方程式をt=(sの式)と変形して、右辺のsの式の取りうる値を調べる方法があります。幸いにして相加相乗平均が使える形になるので、微分なしに取りうる値を調べることができます。

 

<筆者の解答>

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(2)別解

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第5問

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確率・期待値の問題です。

 

各点の間隔について終始議論していくので、p=b-a, q=n-bと文字変換をしてしまいましょう。そうすると、a+p+q=nとなるので、これを満たす(a,p,q)の組み合わせの個数を調べることが、本問の主題になります。

 

(1)X=2ということは、a≧2かつp≧2かつq≧2が最低限満たされていないといけません。ということはn≧6じゃないといけないことが分かり、n≦5の場合の確率はこの時点で0だとわかります。

 

その下で、a,p,qの組み合わせを探そうとすると、(a-2)+(p-2)+(q-2)=n-6を満たす0以上の整数a-2, p-2, q-2の組み合わせを求めることに帰着できます。

 

この組み合わせの数え方は「〇この一列に並んだボールを、2個の仕切りで区分けする方法」と読み替え可能です。

(※左の仕切りの左側のボールの個数をa-2, 2つの仕切りの間にあるボールの個数をp-2, 右の仕切りの右側のボールの個数をq-2とすればよい)

 

ただ、このままだとX≧3となる可能性を排除できていないので、この場合の数を除外する必要があります。ここの検討で、n=6の場合と、n≧7の場合とで新しい場合分けが生じることになります。

 

(2) (1)と考え方は共通です。

 

n=3Nとすると、Xの取りえる値がN以下だと分かります。

このときにX=kとなる場合の数は、

(a≧k, p≧k, q≧kとなる場合の数)-(a≧k+1, p≧k+1, q≧k+1となる場合の数)で計算できることになります。このときはk=Nの場合だけ例外扱いとなります。

 

こうしてX=kとなる確率が求まったら、定義に従って期待値を計算するのみです。

 

<筆者の解答>

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