このシリーズでは、平成の一橋数学の後期入試の問題を1年ずつ遡って解いていきます。
一橋の後期は文系向けにも関わらず数Ⅲが出題範囲に含まれています。なので、どうしても数Ⅲの知識が不可避な問題については「※数Ⅲ必須」とコメントを付けておきます。数Ⅲやってないよ、という文系志望の方は、このコメントのない問題を中心に見ておけばよいと思います。
16回目の今回は2002年になります。
第1問
筆者注:誤x^2 正z^2
複素数の絡んだ領域図示の問題です。
問題文が若干分かりにくいですが、言い換えてあげると「zの2次方程式z^2+az+b=0の解の絶対値が必ず1より大きくなる(a,b)の条件」となります。
この2次方程式が実数解を持つ場合と、虚数解を持つ場合とで場合分けをして検討していきましょう。
<筆者の解答>
※a>0, b>0という条件を失念して解いてしまっていました。なので、最終的な答えは、図2の第1象限の部分だけですね・・・
第2問
空間上の三角形に関する角度と面積を考える問題です。
PQが円の直径だと言われているので、P(cosθ, sinθ, 0), Q(-cosθ, -sinθ, 0)とおくと見通しがよくなります。
(1)APベクトルとAQベクトルの長さと内積を調べてcos∠PAQをθの式で書いてしまいましょう。
(2) こちらも上記の情報で△PAQ面積の面積をθで表現してしまえばよいでしょう。
<筆者の解答>
第3問
級数の計算と不等式評価の問題です。
(1) 部分分数展開を使って、Σの中身を差の形に置き換えます。この問題に関しては1/(k-1)k - 1/k(k+1)の形に分解しましょう。
(2) 1/(k-1)k(k+1) > 1/k^3 に気付ければ、(1)の結果を使って示すことができます。
ここで証明された不等式から、Σ1/k^3 が収束することが分かり、収束値はアペリー定数と呼ばれています。アペリー定数は1.20・・・という値で無理数であることは証明されていますが、バーゼル問題のπ^2/6のような綺麗な表式は見つかっていません。
<筆者の解答>
第4問
線形計画法の問題です。
a|x|+|y|≦aはダイヤのような図形となり、k=y-(x+1)^2とすると、この式は放物線を表します。
この放物線とダイヤの領域が交わりを持つようなkの条件を図形的に求めていきましょう。
<筆者の解答>
第5問
積分の絡んだ関数の取りうる値を調べる問題です。
まずは、問題文にある条件を処理するのが第一です。
不等式の条件から、-a≦b≦0が言えて、積分の条件からa,bの2次式の関係式⑥(答案参照)が求まります。
筆者は第4問と同じようにこの第5問を「線形計画法」で解こうと思い、この⑥を図示して考えることにしました。この場面でどうしても数Ⅲ知識が必要になります。
(※大学数学の「対角化」を使うと、実は⑥が楕円を表していると分かります)
こうして⑥を表す曲線Cと、(1) (2)で考える曲線が交点を持つ条件を考えることにします。(2)では絶対値外しの場合分けも入ってくるので少々煩雑になります。
そうやっているうちに、⑥を図形ではなく方程式のままで考えれば数Ⅲ知識なしで解けると気が付き、その方法で解いたのが別解になります。結果論、そっちの方が楽でした。
(1)積分を計算するとaだけの式になるので、⑥をbの2次方程式と見なしたときに⑥が-a≦b≦0の実数解を持つようなaの条件を考えればOKです。
(2) 数Ⅲを回避した場合、こちらの処理が少しトリッキーになります。⑥を両辺2倍すると、積分の答えをmとしたときに⑥からbを消去してa,mだけの方程式に出来ます。それがa>0の実数解をもつmの条件を考えることになります。
<筆者の解答>
別解(数Ⅲ使わない)