「平成の~」シリーズで扱えなかった令和以降の一橋大学後期数学のセットを解きます。
一橋の後期は文系向けにも関わらず数Ⅲが出題範囲に含まれています。なので、どうしても数Ⅲの知識が不可避な問題については「※数Ⅲ必須」とコメントを付けておきます。数Ⅲやってないよ、という文系志望の方は、このコメントのない問題を中心に見ておけばよいと思います。
第1問
メルセンヌ数に関する問題です。
(1) a=kbとすれば、(2^b)^k -1で因数分解できる形になります。
(2)これは有名な性質です。(1)をヒントにすれば、aが合成数だと2^a -1が因数分解できてしまうわけです。
2^a -1 の形の数を「メルセンヌ数」といい、そのうち素数になるものを「メルセンヌ素数」といいます。
注意すべきは、aが素数だからと言って、2^a -1が素数になるとは限らない、という点です。
(3) 左辺が指数関数、右辺が2次関数なので、いずれ左辺の方が大きくなってしまうことが分かるので、この方程式が成り立つaは小さい値で限られていそうだと分かります。
なので、aを小さい順に力ずくで調べていくことで解くことはできます。
とはいえ、展開して2で割ってあげると、a=4n-1の形に限ると分かるので、これを使うと検討時間を短くできます。
結果、答えはa=11となります。
この結果は、2^11 -11 = 23×89となり、まさに上記の「aが素数だからと言って、2^a -1が素数になるとは限らない」という反例になっています。
<筆者の解答>
第2問
積分の絡んだ、不等式の成立条件を考える問題です。
f(x)=ax^2 +bx +c とおいて、まずは積分を計算して条件を揃えていきましょう。積分区間の上端と下端が符号違いなので、偶関数・奇関数の性質を使うとミスなく進みます。
すると、k≧(b,cの式)に帰着するので、右辺の最大値を考えてあげればよいでしょう。
<筆者の解答>
第3問
3次関数の決定問題です。
(i)のf(0)=0と条件(iii)と(iv)から、f(x)を因数分解すると、x^2(x-b)かx(x-b)^2の形のいずれかになります。
これをもとに、残りの条件が成り立つ式を見つけていきましょう。
<筆者の解答>
第4問
必勝法の有無を考察する論証問題です。
基本的には、A,Bの石の取り方を列挙して「必勝法=自分が○○という戦略を取れば、相手の手によらずに勝てる方法」があるかどうかを調べることになります。
(1)n=5の場合は、取り方を全部列挙できるレベルなので、書き出したほうが早いでしょう。
(2)n=10の場合は流石に列挙が無理なので、候補を絞り込みましょう。
Aが初手にk個取るとすると、Bは2K個まで取る権利を得ます。もし、残った石10-k個が2k以下なら、Bは残った石を総取りできるのでBが勝ちます。
なので、そうならないk≦3の場合に絞って列挙していきます。
<筆者の解答>
第5問(a) ※数Ⅲ必須
極限の計算問題です。
式の形からして、「xが十分大きい所では√x+1と√xはほとんど変わらないな。とすると極限は1になりそうだな」と予想できます。
この発想に立てば、{cos√x+1}^2と{cos√x}^2の差を調べてあげようという作戦に至ります。
差を計算すると、(-1~1で振動する関数)×(0に収束する関数)の形になるので、はさみうちの定理により、全体で0に収束することが分かります。
<筆者の解答>
第5問(b)
1.001^100を評価する問題です。
問題の不等式では、1.001^100を小数点以下第3位まで確定させる必要があります。
2項定理を使ってあげて、最初の4つの項を使ってあげると1.001^100>1.1051が示せます。このように下から押さえるのはあまり難しくありません。
問題は上から押さえる方法で、相当悩みました。
2項定理の5つ目以降の項は、100Ck (1/1000)^k (k=4,5,・・・,100)の形になっていて、比を取って調べてあげるとk=4のときに最大になると分かります。
よって、5つめ以降の項を全部k=4のときの数字で置き換えてしまえば上から押さえることができ、1.001^100>1.1055が分かります。
これで、1.001^100の小数第3位までが1.105と確定できます。
ただ、100C3とか100C4の計算が必要であり、発想が思いついたとしても解き切るのは難しいのではと思いましたね。
<筆者の解答>