このシリーズでは、東京大学の後期の数学の問題を解いていきます。
4回目の今回は2004年です。
第1問
複素数平面に関する問題です。
(1) 問題文のルールに従って点を打っていくと、△PnPn+1Pn+2は、Pnが頂角になる2等辺三角形になっていることが分かります。
rの値自体はP2の座標を計算しP0P1=P0P2となる条件を解くことで得られますが、それはあくまで最初の3点の情報だけに基づいた必要条件に過ぎません。ちゃんと以後の一般的なnすべてについて条件a~cを全てクリアできているかの十分性の確認が要ります。
(2)を見越してPnを表す複素数をzn, α=r( cos(π-θ)+isin(π-θ) )とおくと、zn+2 - zn+1 =α(zn+1 -zn)と漸化式を立てられるので、それを解いてznの一般項をαとnの式で求めてしまいましょう。(αをかける、という作業は、長さをr倍にして向きをπ-θだけ回す、ことに相当します)
そうすると、(zn+3 -zn+2) と(zn+2 - zn)の比が実数なら、Pn, Pn+2, Pn+3が同一直線上にある、と言えます。
(2) (1)で考えたznの一般項を、具体的にθの式で計算していきます。どこで計算を止めるかですが、分母を実数にしようとしても式が汚くなるだけので、そこまではやらなくてよいと思います。
(3) (2)の結果の中で収束しうる個所は、(-r)^nの等比数列の部分です。rは必ず正の値なので、収束条件は、-1<-r<0となります(-r=-1にはならないということです)。
(4) znの極限を計算して、分母を実数化してあげるとα(θ)とβ(θ)が求まります。これらの極限計算は、特に不定形となるような厄介な要素がないので単純にθにπ/3を代入すれば終わりです。β(θ)の最大値は、βをθで微分すれば調べられます。
<筆者の解答>
第2問
写像に関する問題です。なかなか抽象的で捉えどころがなく難しい問題だと思います。
(1) 要するに、0~7の8つの数字を「0」「1」の2グループにどうやって分けるかという場合の数を調べる問題です。答案では「0」にk個の数字を所属させる場合の数、として検討しましたが、単純に各数字が0か1かの2通りに割り振られるので2^8=256通り、とやっても求まりますね。
(2)実際にkに具体的な数を入れて調べてみましょう。すると、anは0→1→1→0のループになることが予想できるので、これを帰納法で示すという流れになります。
(3)条件Pが成立するグループ分けの方法は、「0」所属は、(0,1), (2,3), (4,5), (6,7)の各組から1つずつ選んだものとして、余った4つを「1」所属にしてしまえばよいわけです。
(4) 問題文が分かりにくいのですが、意味するところは、「どんな01数列bnについても、fをかませることでbnを作れるようなanを『構成できる』」ということです。
つまり「an→bnを作る」という思考回路ではなく、「bn→anを作る」という発想で攻めるのがポイントになります。
(2)で実験した通り、bnの値が最初から決まっていれば、それに応じて芋づる式に自動的にanが決まっていきます。それを説明していけばよく、この論理を保証するものが条件Pとなります。
<筆者の解答>
第3問
正方形が通過できない領域の面積を計算する問題です。
(1)lの式は簡単に求まるので、P(X,Y)を通りlに垂直な直線mの式を作ることができます。さらにそのmがBに接する条件から、X,Yの2つの方程式が出来上がるので、それを連立してあげましょう。Pの座標は2種類求まります。
(2) 正方形は、少なくともAとBをつないだトラック型の図形の外側を動くことができます。そして、トラックの内側でも角っこだけならAとBの隙間に入ることができます。この隙間の部分を考察するのがメインの作業になります。
(1)で求まったPの内x座標が小さいものが、この角の座標になっています。なので、図形的にθの範囲を絞って、Pの軌跡がどうなるかを調べてみましょう。
すると「正方形が通過できない」領域が分かるので、あとは積分計算で面積を計算することのみです。
<筆者の解答>