ちょぴん先生の数学部屋

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平成の阪大理系後期数学 -1996年-

このシリーズでは、大阪大学の後期の数学の問題を解いていきます。

 

15回目の今回は1996年です。

(※97年,98年は問題が入手できていないので、入手出来次第解きます)

 

第1問

 

行列に関する問題です。

 

(1) いきなり証明するのは難しいので、段階を踏みます。

まずAが逆行列を持たないことを示し、そうするとケーリーハミルトンからA^2がAの定数倍で書けるので、A^500=Oなら、その定数が0だと言えるのでA^2=Oを示す。という流れです。

 

前者については背理法を使うとよいでしょう。もしAに逆行列があるとするとA=Oとなって矛盾します。

 

(2) A^2=Oという条件から、a=-4とbc=-16の2つの条件が求まります。Aの成分の入れ替えでできる行列が全部逆行列を持たないなら、行列式=0の関係式があと2つ求まることになります。

 

<筆者の解答>

 

第2問(理学部)

 

方程式の解に関する問題です。

 

(1)問題文のままだと、左辺も右辺も指数関数でとらえどころがないので、式変形して見やすい形にしていきます。両辺をe^axで割ることで「1次関数=指数関数」の形になって、解の個数が視覚的に調べやすくなります。

 

左辺ー右辺の増減を微分で調べるという常套手段は、今回の場合は非推奨です。微分しても符号がうまく調べられませんので。

 

(2) 要するにmがaについて単調増加なことを証明せよという問題で、mをaで微分した値が正だと言えればOKです。

 

(1)の変形から、2m=1-e^(-2am)となりますが、mが複数にまたがっていてdm/daを直接調べるのは難しそうです。なので、ここは視点を変え、この式をa=の式に直して「aをmで微分する」という戦略で考えるのが得策です。

 

(3) mの値は0<m<1/2に制限されていて、(2)からmは単調増加することも分かっています。なので、少なくともmはa→∞で収束することは確実です。その収束値をbとおいて、mとaの関係式でa→∞としてしまいましょう。

 

<筆者の解答>

 

第2問(工学部)

 

点の軌跡と回転体の体積を計算する問題です。

 

(1) P,Qのx座標の情報を調べてRの座標を調べてあげればよいでしょう。解と係数の関係を使えばよさそうですね。最後は、Rのx,y座標の取りうる値の範囲のチェックを忘れずに。

 

(2) Cの0≦x≦a+1の部分を回転したものから、半径a/2の球(Dを回転したもの)の体積を引けばV(a)が求まります。積分計算はさほど手間はかかりません。

 

(3) V(a)を微分して増減を調べます。

 

<筆者の解答>

 

第3問

 

確率・期待値の問題です。

 

まずは、X=kとなる確率を調べておくのが第1歩です。

 

(1) よほどのことがない限りはM(n)>m(n)になります。例外はM(n)=m(n)のときで、これはn回ともXが同じになる場合になります。

 

なので、n=2なら、X1=X2となる確率を全体から引けばよいことになります。

 

(2) M(n)=5となるのは、n回ともX≦5となって、そのうち少なくとも1回がX=5となるときです。よって、こちらも余事象を考えてあげるとよいでしょう。

 

(3) (2)と同じようにm(n)=lとなる確率rlを調べれば、an=Σl×rlで計算できます。

 

今回はanの極限だけを訊かれている(anそのものの式は要求されていない)のがポイントです。

よくよく考えると、rlの極限は、l=2のときだけ1で、l≧3のときは0になることが分かります。ということで、anの極限はl=2の場合だけ生き残って2となります。

 

無限回投げれば、最低一回はX=2が実現しそうなので、納得のいく結果ですね。

 

<筆者の解答>