このシリーズでは、大阪大学の後期の数学の問題を解いていきます。
19回目の今回は1990年です。
第1問(理学部)
回転体の体積の極限を計算する問題です。(1),(2)がヒントとなっています。
(1) 式変形してsinx/x→1の形に帰着させます。
(2)両辺の差を取って微分で増減を調べればよいでしょう。
(3)定石通りに積分計算していきます。sinの2乗が扱いにくいので、2倍角で2乗を解消して計算を進めます。
(4) 2/a=Xと変換すると、(1),(2)が使えそうな形にできます。(1)の方はまんまの形になりますが、(2)をどう使うか?x-sinx>0であることに注意すると、はさみうちの定理に持ち込めるのでは?という発想になります。
<筆者の解答>
第1問(工学部)
面積に関する計算問題です。
S,Tをa,tの式で求めて、S=Tを解く、という一本道の問題です。
<筆者の解答>
第2問(理学部)
数列に関する問題です。
(1) 帰納法を使って証明するとよいでしょう。
(2)発想力が必要な問題でしょう。帰納法で攻めようとしても、仮定がうまく使えないため証明できません。ここは、1/bnの無限和が1未満の値に収束することを示すことにします。
そうすると、1/bnよりも大きい値を持ってきて、それの無限和が1以下になっていることを示すという方針になるので、bnをどんどん下から押さえていく形になります。
(1)の結果を使うと、bn+2>(an+2 -1)bn≧2bnと下から評価できるので、nの偶奇で場合分けするとよいです。
(3) この小問はあまり自信がありませんが、ご容赦ください。
bN+1=2bN+2という式から逆算してもanはうまく求まらないので、bN+1を漸化式を使ってb1~bNの和で表現して、それが問題文の方程式と一致するようにanを調整する、という方針で解きました。
こうして求まるa1~aN+1はあくまで「十分条件」なので、それ以外の解がないのか(つまり必要条件なのか)に自信がないといったところです。
自信のない原因は、上のb1~bNの和の表現が一意的ではない(と思われる)からです。
<筆者の解答>
第2問(工学部)
楕円列に関する問題です。
(1) Enの式とy=mxを連立してできるxの2次方程式が、重解を持てばOKです。
(2) EnとEn+1が接するという条件から、cnとanの関係式が求まり、さらに(1)からもう一つ関係式が求まるので、それらを連立すればよいです。
(3) (2)の結果からanの一般項が求まるので、Snの一般項が求まります。それを利用して無限和を計算しましょう。
<筆者の解答>
第3問(理学部)
光の反射に関する問題です。
(1)光の反射という題材では、反射面に対して対称に反転させて、光線を一直線にしてしまう、という解法が鉄則になります。今回の場合は、y<0の領域にx軸を30°ずつ回転した直線を配置し、それと入射光との交点が、P2~に相当する点になります。(その点をP2'~と呼称します)
すると、確かに交点の個数は有限個しかないことが分かります。
(2)OP2'~を全てθの式で調べて、その中で最小になる番号を調べていきますが、大小関係の調査が結構大変です。
<筆者の解答>
第3問(工学部)
点の軌跡と体積を計算する問題です。
(1)問題文の状況をxy平面で切ると、結局、円O1に内接し、円O2に外接する円の中心の軌跡が、Sの断面になります。
その条件を調べていくと、AP+PB=r1+r2が得られますが、これを直接式変形していくのはかなり大変です。ここは初心に帰りましょう。この式は結局「Aとの距離とBとの距離の和が一定」ということなので、「A,Bを焦点に持つ楕円」ということになります。
(2) (1)の楕円をx軸周りに回転したものがSになるので、(1)の結果から積分計算でVが求まります。
<筆者の解答>
第4問(理学部)
確率の問題です。
(X,Y)の全組み合わせは(n-1)(n-2)通りあるので、その中で、二等辺三角形となるような(X,Y)の組み合わせを調べていくことに終始します。Q0が頂角になる場合と、Q0が底角になる場合に分けて調べていきましょう。
(1)の場合は「正三角形になるとき」に両者に重複が生じますが、(2)の場合はその重複がありません(nが3で割り切れない、はこの部分で効いてきます)。
<筆者の解答>
第4問(工学部)
小問集合です。
(1)等比数列に関する整数問題です。
a1の2以上の約数の1つをpとすると、公比はr=q/p (qはpより大きく、pと互いに素な整数)と書くことができます。
このように設定すると、a2,a3,a4が全て整数となるためにはa1はpで3回割り切れないといけないことが分かります。そのときa4=cq^3という形で書けて、今回はこれを最小にしたいので、c=1, q=3としてしまえばOKです。
(イ)は明らかに誤植で、本当に答えるべきものが不明なので、とりあえず初項と公比を解答としました。
(2)等比数列の和に関する問題で、こちらは特に発想もいらず機械的に解ける問題です。
(3)絶対値付きの1次関数の増減の問題です。
xの値によって、どの絶対値がどう外れるかが変わってくるので、それを丹念に追いましょう。f(x)が最小になる瞬間は、f'(x)の符号が切り替わる瞬間です。
<筆者の解答>