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平成の医科歯科大数学 -2013年-

このシリーズでは、東京医科歯科大学の数学の問題を解いていきます。

 

10回目の今回は2013年です。

第1問

 

tanの取りうる値に関する問題です。

 

(1) tan(α+β)を計算すると、分母が0になって発散することが分かります。0<α+β<πの範囲で、こうなる値は1個しかありません。

 

(2)γ=π/2-(α+β)とできるので、それを代入して計算していきます。

 

(3) (2)と同様にγを消去してあげると、与式の値fは、tanαとtanβの和と積を使った式で書けます。s=tanα+tanβ, t=tanαtanβとすると、この両者は独立に動くので、予選決勝法を使っていくことになります。

 

しかし、sとt独立に動くとは言ってもある程度の条件は課せられます。

まず、αとβは両方鋭角なので、s>0, t>0です。さらに、tanαとtanβはともに実数なので、2次方程式x^2 -sx+t=0 (解がtanαとtanβの2つ)は実数解を持たないといけません。そして忘れがちなのですが、γも鋭角なので0<α+β<π/2となります。

 

以上でs,tの条件が出揃ったので、この下で予選決勝法を適用しましょう。fはtに関しては1次関数で増減が見やすいので、最初に「sを固定、tを動かす」とすると見通しが良いです。

 

<筆者の解答>

 

第2問

 

行列に関する問題です。

まず条件(ii)と(iii)からcとdが消去できるので、Mに属する行列をa,bだけの式で表現してしまいましょう。

 

(1)実際にABを計算すればOKです。

 

(2)Aの逆行列を計算すると、(ii)と(iii)は自動的に満たし、行列式|A|が|A|=a^2 -ab+b^2となります。

よって、残す条件は(i)だけで、「これをクリアする(=Aの逆行列の成分全てが整数になる)条件は|A|=1」を示すことになります。

 

|A|=1を直接証明するのは難しそうなので、背理法が使えないかを検討してみます。

 

実際に平方完成をすると|A|は0以上だと分かるので、「|A|≧2だと矛盾が生じる」が言えればOKです。(※|A|=0は、そもそも逆行列が作れないので最初から除外します)

 

|A|が2以上で、かつAの逆行列の成分が全て整数だと仮定すると、aとbが|A|の倍数だということになりますが、この議論を突き詰めると、|A|×自然数=1となって、|A|≧2だと矛盾します。

 

(3) |A|=1となるようなa,bを求めればよいでしょう。平方完成すると見通しよく解けると思います。

 

(4) Mに属するAが、A^n=Eを満たすとすると、A^(n-1)がAの逆行列となり、(1)の結果から、AがMに属するならA^(n-1)=Aの逆行列もMに属することになります。ということで、Snに属するAの候補は(3)で求めたものに絞れます。

 

ということで、(3)で求めた各AについてA^nを計算して結果がEとなるようなnを探していきます。

 

<筆者の解答>

 

第3問

 

積分を絡めた不等式評価の問題です。例によって、(1)~(3)が(4)を解くヒントとなっていきます。

 

(1) f(x)を微分すればよいでしょう。

 

(2) これは類題経験がものを言う問題です。

この積分は「ベータ関数」と呼ばれるもので、求める積分をI(m,n)とおいて、部分積分を使ってI(m,n)の漸化式を作る、というのが定番の解法になります。

普通は旧帝大であってもこの積分には誘導が付くと思いますが、誘導なしで出てくるあたりが、医科歯科の恐ろしさですね。

 

2項定理で展開して積分していく方法も取れなくはないでしょうが、上記の方が確実で早いです。

 

(3)

(i)の条件からg(x)=ax(x-1)と書け、さらに(ii)の条件からa<0が必要で、そのときM=|a|/4と書けます。

よって、Mの最小値を求めたくば、|a|の最小値を求めればよいことになります。

 

実際に(ii)の式を処理すると、|a|≧x^(m-1)×(1-x)^(n-1)=F(x)となるので、これが0<x<1で常に成立するには、|a|が、F(x)の0<x<1での上限値以上になっていればよいわけです。

 

よって、F(x)の上限値を考えていくわけですが、m≧2, n≧2のときは(1)の結果が生かせますが、mとnのいずれかが1のときは例外処理をしないといけません。

 

終結果は場合分けした結果をそのまま書いてもいいですが、実は「0^0=1」と定義してあげると一まとめにできます。

(※「0^0=1」は、x^xでx→0とした極限を考えると正当性のある定義の仕方だと分かります。)

 

(4) この問題のゴール地点です。(1)~(3)の知見を総動員していきます。

 

与式の左辺は(2)の結果の逆数、中辺は(1)の結果の逆数になっていて、左辺は積分計算の結果でした。ということで、積分=面積評価で不等式が証明できるのではないかと、思いつくわけです。y=f(x)のグラフとy=(f(x)の最大値)で積分してあげると、左側の不等号が証明できます。

 

次に、右側の不等号についてですが、まだg(x)の情報を使っていません。中辺はf(x)の「最大値」に関する情報なので、右辺はg(x)の「最大値」に関するものなのではと類推を働かせます。

 

ここで(3)の(ii)の条件から、g(x)の最大値>f(x)の最大値、が成り立つので、それを手掛かりに考えていきます。すると、漸化式のような形の不等式になるので、それを繰り返し使っていくことで、最終的に2^(2n-1)にたどり着けます。

 

<筆者の解答>