このシリーズでは、東京医科歯科大学の数学の問題を解いていきます。
18回目の今回は2005年です。
第1問
漸化式の問題です。
(1)これは典型的な3項間漸化式です。特性方程式で等比数列の形を作りましょう。
(2)4項間漸化式という入試問題としてはレアな出題です。こういう初見の問題にいかに対応できるかがポイントです。
2項間漸化式にせよ3項間漸化式にせよ、「等比数列の形を作る」というのが目標でした。特性方程式はあくまでその手段に過ぎません。
今回の問題でも「等比数列の形」が作れないか?という発想で、
bn -sbn-1 -tbn-2 =r(bn-1 -sbn-2 -tbn-3)と
文字でおいてみることにします。すると、係数比較によって(s,t,r)の組が合計3つ求まります。
本来であれば、この3つの組それぞれに対して解く必要があるのですが、今回はr=1(つまり等比数列の公比が1)となるものが含まれています。
そのパターンで式変形すると、なんと(1)と同じ漸化式が得られます。これによって、他の2組の検討はしなくて済むようになるお得な設定になっています。
<筆者の解答>
第2問
三角関数に関する総合問題です。
(1)(2) 2θや3θを一塊にして考えると見通しが良いです。但し取りうる値の範囲には注意しましょう。
(3) (4)を見越して「>0」の条件を無視して検討に入ってしまいましょう。
sin2θ1=sin2θ2, sin3θ1=sin3θ2ともども、移行して積和の公式で「積の形=0」としてあげると、θ1+θ2とθ2-θ1の条件が求まるので、あとはそれらが両立するような組を虱潰しに計算していきます。結構面倒くさいです。
こうして全部の組が求まったら、その中から「>0」を満たすものを選べば(3)の答えです。
(4)結局のところ、Cが自己交差する点は(3)で調べた(θ1, θ2)の組み合わせの各々に対応しています。あとは実際に座標に直して重複を調べてあげればよいでしょう。
<筆者の解答>
ちなみに、Cをexcelで描画すると下のようになります。
第3問
不等式を使った極限の計算問題です。背景には「スターリングの公式」という概念があります(後述)
(1) 問題文の条件から、f(x)が上凸の単調増加なグラフだと分かります。それを利用して、直線とy=f(x)の位置関係、面積の大小関係から視覚的に値の大小関係を調べていくとよいでしょう。
(2)発想力の必要な難問です。
(1)の結果を使えばよさそうなのは予想できますが、どう使うか試行錯誤が必要です。
与式の中辺がシグマの形で、かつ1/2が係数で入っているので「(1)の真ん中」を使えばよさそう、という発想で和を取ってあげると、「中辺<右辺」は比較的簡単に分かります。
問題は「左辺<中辺」をどう示すか。今度は積分の方が大きくなっているので、左辺は「f(a)」から作らないといけなさそうです。そうやって和を取ると、いくつか余計な部分が出てきてしまいます。その大小関係をまた新たに視覚的に示す必要が出て来ます。
(3) f(x)=logxとすれば(i)~(iii)を全て満たし好都合です。この下で(2)の結果を使ってはさみうちに持ち込みましょう。
この(3)の結果は、nが十分大きいときに、
log(n!)≒nlogn -n +(logn)/2
と近似できることを意味しています。さらにlogを外すと
n!≒√n×(n/e)^n
とも変形できます。
これらの近似式は「スターリングの公式」と呼ばれていて、物理などで頻繁に登場する近似方法になります。
<筆者の解答>