ちょぴん先生の数学部屋

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平成の山梨大医学部後期数学 -2013年-

このシリーズでは、山梨大学医学部後期の数学の問題を解いていきます。

 

10回目の今回は2013年です。

第1問(1)

関数の増減に関する問題です。

 

対数を取ってから微分をするパターンの関数ですね。

 

<筆者の解答>

 

第1問(2)

行列の問題です。

 

イ、ウともに問題文の条件を処理して計算するのみです。

 

余談ですが、ウは対角成分がk, 右上の成分が1になりますが、これは実は偶然ではありません。大学の線形代数の発展内容として習うのですが、これは「ジョルダン標準形」という「対角化」を拡張したようなものになっています。

 

kはAの固有値、P1はAの固有ベクトルなのですが、普通はaとkは2組求まるのですが、今回は重解となることで1組しか求まりませんでしたね。こういう場合はAを対角化することはできなくて、対角化の操作をすると今回のような「1」が余分に入ったジョルダン標準形になるというお話です。

 

行列の対角化については、こちらの記事で詳しく解説しております。

この2次曲線の正体はな~んだ? ~行列の対角化~ - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com)

 

<筆者の解答>

 

第1問(3)

領域の包含関係に関する問題です。

 

Brは中心(0,1)半径rの円なので、それがAにすっぽり入る条件を考えていきます。そうするとrの上限は、円が直線と接する場合か、円が放物線と接する場合の2択で、より小さいほうになりますね。

 

<筆者の解答>

 

第1問(4)

4次方程式の解についての問題です。

 

初見でこの4次式を因数分解することは難しいので、定数項が-1になっていることに注目して(x^2+ax+1)×(x^2+bx-1)と因数分解できると仮定して係数比較すればよいでしょう。

(※よ~くみたら和と差の積の因数分解で解けましたね笑)

 

これで4次方程式が綺麗に解けるので、それぞれに2次方程式に対応した解と係数の関係を利用して計算していけばよいです。

 

<筆者の解答>

 

第1問(5)

関数の多項式展開に関する問題で、背景には「テイラー展開」があります。

 

f(x)のn次導関数は4周期で変化していくので、まずはそれに応じてx=0での値を求めるとよいでしょう。

 

次がひらめきポイントなのですが、問題文を満たすgn(x)は、gn(x)=Σ[f(k)(0)/k!]x^kと構築できます。これは「テイラー展開」そのものなのですが、これを知らない場合は結構思いつくのは難しいでしょうね。

 

これさえできてしまえば、クもケも問題文に従って計算するだけになります。

 

<筆者の解答>

 

第2問

確率の問題ですが、実質条件を満たす(a,b,c)の組み合わせを調べる場合の数の問題です。

 

(1)a~cは対称なので、一旦a≦b≦cと大小関係をつけて考えるとよいです。このとき、c≦3はNGだと分かるので、c=4,5,6の各場合について場合分けして(a,b)の組み合わせを虱潰しに調べていきます。

最後に、本当はa~cの大小関係は決まってないので、大小関係を解消して改めて場合の数を換算する必要があることに注意しましょう。

 

(2)Xとして取りうる値は0,1,2,3の4つだけで、X=0の場合は(1)で調べています。

 

ということで、残りの3つの値に対して確率を計算していきますが、X=1の場合よりも、X=2,3の方がレアケースだと予測できると見通しが良くなります。

 

X=3の場合は(a,b,c)=(1,1,1)のときだけであり、X=2の場合は先ほどのa≦b≦cの大小関係の下ではa=1しかありえないので、数えやすいわけです。

 

X=1についてはここまでの結果から余事象で確率計算すればOKですので、これで期待値が計算できることになります。

 

<筆者の解答>

 

第3問

放物線の接線のなす角に応じて交点の軌跡を調べる問題です。

 

(1)と(2)は角度だけが異なるので、PQベクトル、PRベクトル、PQ・PRといった必要な情報をお膳立てしてから検討するとよいでしょう。

 

まずはQ,Rの座標をどう求めるかですが、これはx=tでの放物線の接線がPを通る条件として処理でき、その条件となるtの2次方程式の解をα, βとするとこれらをQ,Rのx座標とすればよいわけです。解と係数の関係を利用すると、より見通しが良くなります。

 

(1)この場合はPQ・PR=0となるので、これを変形していきます。するとx軸に平行な直線が求まり、実は放物線の準線になっています。

 

(2)この場合は|PQ||PR|cos45=PQ・PRとなるので、これを変形していきます。すると双曲線の片方の部分になります。(※2乗する際の同値性に注意です)

 

<筆者の解答>

 

第4問

多項式に関する問題で、誘導形式かと思いきや(1)(2)はほぼ独立しています。

 

(1) これはe^xのテイラー展開を背景に持つ問題で、帰納法を利用して証明していきます。

 

(2)これは最後まで解き切るのはなかなか難しい難問です。

 

具体的なnでいくつか実験してみると、fn(x)はどうやらn+1次式になりそうだと分かります。ただ、この時点だと係数の方の規則性は見えにくいです。

ということで、まずはfn(x)がn+1次式になることを数学的帰納法で証明します。ここまでは本番でも食らいつきたい所。

 

次の係数を調べるところは面倒で、本番では捨ててもやむなしでしょうね。

 

fn(x)のi時の係数をan,iとして漸化式に代入するとxの恒等式ができるので、係数比較をしていきます。

もし積分の中身に「+t」がなければ話は早いんですが、これがあるせいで途中歪まされて係数比較が面倒なことになります。

 

次数の低いものから芋づる式に調べていくと、まず2次の係数でn=1かn≧2かの場合分けが発生することが分かり、3次以上を調べると、n=2だけ例外扱いしないといけないことが分かったりします。

 

ということで、最終結果はn=1, n=2, n≧3で場合分けされた表記となります。道理で最初の段階で係数の予測がしにくかったわけです。

 

<筆者の解答>