このシリーズでは、山梨大学医学部後期の数学の問題を解いていきます。
13回目の今回は2010年です。
第1問(1)
格子点に絡めた確率の問題です。
直線x=k上にある格子点の数を足し上げることでアが求まり、x=kとなる確率から期待値イも計算できます。
同様に直線y=l上の格子点も数えていきますが、こちらはlの偶奇による場合分けが発生します。
<筆者の解答>
第1問(2)
連立方程式の問題です。
それぞれの方程式を行列の形に書き直してu,vを消去していきます。
<筆者の解答>
第1問(3)
積分の計算問題です。
三角関数の中に2乗が入っているので、x^3からxを一個渡すことで部分積分ができます。
キとクを独立に計算するのもありですが、答案では時間短縮のため、オイラーの公式を使うことでキとクを同時に計算しています。
<筆者の解答>
第1問(4)
放物線に関する問題です。
平方完成することで、y^2=-3/2xを平行移動したものだと分かります。あとは、この元の放物線の焦点と準線を移動させてあげればよいです。
<筆者の解答>
第2問
確率の極限に関する問題です。
(1) 「AB」が存在しないなら、BB・・・BA・・・Aの形(AとBの一方がなくてもOK)に限ります。これを利用して確率計算していきますが、等比数列の公比が1になるp=1/2の場合だけ例外処理する必要があることに注意です。
(2)「AA」が存在しない場合を、(1)と同じような「場合の数を直接数える」方法で調べるのは計算が困難になるので、漸化式を利用していきます。
具体的には文字列の最後がAになる確率とBになる確率について漸化式を作って解き、bnをその両者の和で計算する形です。
(3) (2)と同じようにlog(an)/nの極限値を計算すると、(2)の結果との比を取ることでlog(an)/log(bn)の極限値がpの式で求まります。あとはこれが1になるようにpを求めてあげればよいでしょう。
<筆者の解答>
第3問
行列の対角化に関する問題です。
対角化に関する背景については、こちらの記事で解説しています。この記事をご覧いただくと、この問題が何をしてるかが見えてくると思います。
この2次曲線の正体はな~んだ? ~行列の対角化~ - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com)
問題文の関係式は、Aが2つの固有値α、βをもち、それぞれに対応した固有ベクトルがP,Qということになります。
(1)背理法でよいでしょう。A=Oとすると、α=β=0となってα≠βと矛盾します。
(2)BはAの固有ベクトルであるP,Qを並べてできている行列ですね。
こちらも背理法です。Bに行列式がないと仮定するとQがPの定数倍の形で書けることになるので、やはりα=βとなってしまいます。
(3)愚直に計算していきましょう。結果、対角成分に固有値αとβが並び、残りの成分は0になります。これが「行列の対角化」という作業になります。
(4) (3)で求めた行列をn乗することでA^nの情報が分かります。特に対角行列の累乗は、対角成分をそれぞれn乗すればいいので計算が容易です。これが対角化のメリットの一つです。
問題の証明そのものは、またまた背理法です。A^m=Oとなる自然数mが存在すると仮定するとα=β=0となってしまいます。
ここまで通して、α≠βという条件がかなり強力な縛りになっていることがよく分かりますね。
(5) (2)の結果から、QはPの定数倍にならない、つまりPとQが1次独立だと分かります。
ここから、X=(x,y)とすると、Xは必ずX=pP+qQという形で書けることが分かるので、このp,qの条件を求めていきます。
<筆者の解答>
第4問
ガウス関数に関する積分の評価の問題で、全体的に発想力が要求される難問です。
このf(x)は「ガウス関数」とよばれる応用上非常に重要な関数で、特に統計学における「正規分布」を表す関数として知られています。
(1) f'(x)とf''(x)を計算して符号を調べればよいでしょう。
(2)これはあることに気が付けば一瞬で片が付きますが、思いつかなければほぼ詰みです。(※力ずくで「帰納法で示そう」とやってもうまくいきません。)
そのあることとは、「f(x)は偶関数である」ということです。偶関数ならf(x)=f(-x)が成り立つので、この式の両辺をn回微分すればよいことになります。つまり、このガウス関数に限らず、f(x)が偶関数なら題意は成立することになります。
ちなみに、「テイラー展開」の知識を知っていれば、偶関数のテイラー展開は偶数次の項しかないので、奇数次の係数は0じゃないといけないということで、結果自体は当たり前の事実となります。
(3)基本的にe^(-x^2)≦1 (等号成立はx=0のときだけ)なので、積分の中身自体を1と取り換えてしまえばよいです。
(4)これは本当にヒラメキがないと(高校数学の範囲では)手も足も出ない難問です。以後、与式をg(a)とします。
まず、g(a)を微分することでg(a)が単調増加な関数だと分かるので、(3)の結果から0<a≦1のときは即座に6/5未満だと言えます。
問題はa>1のときです。
積分区間を1で区切ることができて、0~1の部分は(3)で検討済みなので1~aの部分を中心に考えていきます。
このとき、言われてみれば当たり前なのですがx>1の範囲ではf(x)<xf(x)と評価できます。これこそが本問のひらめきポイントです。
xをf(x)にかけることで積分計算が可能となり先に進めることができます。結果これでうまくいきます(初見だとうまくいく確証もないので、なかなか厳しいでしょう)。
ちなみに、大学数学の範囲にはなりますがa→∞とすると実はg(a)→√π/2となることが知られています。これは「ガウス積分」と呼ばれています。
(導出方法はこちらの記事で解説していますガウス積分 ~統計学で最も重要な積分~ - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com))
この値は0.88・・・となるので、6/5未満なことは明らかですね。なので、ガウス積分の結果を使っていい大学範囲なら即答できる問題だったのですが、それを知らない体で解く高校数学範囲では難問と化すという問題でしたね。。。
<筆者の解答>