ちょぴん先生の数学部屋

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21世紀の慈恵医大数学 -2007年-

このシリーズでは、東京慈恵会医科大学の数学の問題を解いていきます。

 

16回目の今回は2007年です。

(問題文を提供して下さったせがわさん、ありがとうございます。)

第1問

小問集合です。

 

(1)ベクトルの問題です。

余弦定理と角の2等分線の性質を使って比を計算していきます。AI:IDについてはベクトルをそのまま使ってもよいですが、メネラウスの定理を使った方が圧倒的に早く調べられます。

 

(2)極限の計算問題です。

カ、キについては区分求積法でよいでしょう。クは、キの結果をさらに√nで割っているものの極限なので0になりますね。

 

(3)確率の問題です。

p1~p4は全て、条件を満たすカードの引き方の場合の数を調べていきます。p1はシンプルですが、p2以降はパラメータが2つ必要になるので、片方を固定したときにもう一方が何通りあるかを調べて、最終的にはΣ計算していきます。特にp3については、「1,2,3」を引くときと「n-2,n-1,n」を引くときを例外扱いしてカウントしないと辻褄が合わなくなります。最も、一番計算がしにくそうなp4が最初から求まっているのは有難いですが。

 

p5は、1-(p1+p2+p3+p4)で計算可能です。

 

<筆者の解答>

 

第2問

行列と多項式の関連についての問題です。

ここで登場している「固有多項式」という用語は、この問題のオリジナルではなく、一般的に数学で使われているものになります。余談ですが、「固有多項式=0」とした方程式を「固有方程式」と呼び、これを解くことで行列の固有値を求めることができます。

 

(1)追加で証明しないといけないのは、「f(A)=0→f(x)はg(x)で割り切れる」です。

f(x)=q(x)g(x)+αx+βにx=Aを代入すると、αA+βE=Oとなり、AがEの定数倍でないのでα=β=0しかありえない、という形で証明できます。

 

(2) (1)の結果を使いたいです。

与式の左辺を多項式に置き換えたものをf(x)とすると、f(A)=Oとなっています。

(1)の結果から、f(x)がAの固有多項式g(x)で割り切れることとf(A)=Oは同値となるので、結局f(x)がg(x)で割り切れる条件を探っていくことになります。

 

g(x)は幸いにも因数分解ができるので、因数定理を使っていけばよいでしょう。

 

<筆者の解答>

 

第3問

パラメータ表示された曲線に関する問題です。

 

(1)直線の式を調べて、OPがこの直線と垂直、OPの中点がこの直線上、という2つの条件を連立する定番問題です。

 

(2)ただの計算問題ですが、(4)を解くにあたっての伏線となります。

 

(3)y=xについてPと対称な点Qが(θによらず)C上にあることを示していきます。θをπ/2-θと置き換えるとsinとcosが入れ替えられることに気付けるとよかったかと。

 

(4)dy/dθと(2)の結果からCの概形が描けます。このとき、(3)の結果から0≦θ≦π/4に限って調べて、最終的にy=xについてひっくり返せばよいことになります。

 

この対称性を生かして、積分計算で面積を計算していきますが、その際に(2)の形がそのまま登場してきます。

 

<筆者の解答>