ちょぴん先生の数学部屋

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2023年度 慶応理工数学 解いてみました。

2023年も大学入試のシーズンがやってきました。 今回は、慶應義塾大学理工学部に挑戦します。

<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)

1: 微分の定義・平均値の定理  (15分)

2:  空間内の台形(35分)

3:  確率(90分)

4:  不等式評価と積分で書かれた数列(40分)

5(1): 複素数平面  (30分) 

5(2): 整数問題  (20分) 

計230分

 

<体感難易度>

1<5(2)<2≦4<5(1)<<3

 

昨年に比べると、明らかに難化したように感じました。最も易しいと思われる第1問ですら、「微分係数の定義」「平均値の定理」といった受験生が苦手とする純粋数学チックな所を突かれています。

第2問については、きちんと状況をイメージしないといけない(3)がやや難。

第3問の(3)は、本番では捨て問でよいと思います。(2)までで精々でしょう。

第4問は(1)が意外と重たいですが、(2)以降は誘導に乗ればうまくいきます。

第5問が小問集合で、(1)は計算が煩雑な複素数平面ですが、(2)はよくある整数問題で完答しておきたい問題、という感じですね。

 

<個別解説>

第1問

 

微分の定義・平均値の定理に関する問題です。

この手の定義を使い慣れている人には易しい問題ですが、そうでない人にとっては面食らうような問題です。

 

(1) x=aでの微分係数は、2点間の「変化の割合」の、2点を1点に近づけたときの極限です。

 

(2) 左から近づける極限と、右から近づける極限が一致すれば「微分可能」、そうでなければ「微分不可能」ということになります。

 

(3) 「0≦x≦1でh(x)が単調減少」というのを、言い換えてあげると、「0≦a<b≦1となる任意の実数a,bについて、h(b)<h(a)となる」となります。

ということで、平均値の定理を利用して、h(b)-h(a)/(b-a)<0となることを示していけばよいです。

 

<筆者の回答>

 

第2問

 

空間内の台形に関する問題です。

 

(1)

ア:ベクトルの内積を使えば三角比が求められます。

 

イ:アの結果を利用して台形の高さを計算すればよいです。

 

ウ:上底から下底に垂線を下ろして、三平方の定理を使えばよいです。

 

(2)台形が円に内接するとき、その台形は必ず等脚台形になります。今回の場合はOB=ACとなるので、(1)の結果が直で使えます。

※この性質に気付けないと、煩雑なベクトルの計算をする羽目になります。

 

(3)問題文にある2つの平面のイメージが湧きにくいと思いますが、Dを通って台形と垂直な平面の内、「OAと平行なもの」と「OAに垂直なもの」が、今回考える2平面になり、このうち前者がαとなります。

(※三平方の定理などを踏まえると、確かにこの2平面上の点Pについては、Pから直線OB, 直線ACまでの距離が等しくなり、結果として△OBPと△ACPの面積が等しくなることが分かります)

 

これを踏まえて図を描けば、相似を利用してオが計算できます。

 

<筆者の回答>

 

第3問

確率の問題です。慶応らしい複雑なルール設定となっています。前述しましたが、(3)は難しく到底時間内に解き終えることができないため捨て問にしてよいです。

 

(1)

カ:とりあえず4回分の樹形図を力づくで描き上げてしまいましょう。こうすることで、題意を満たす出方が何通りあるかが分かり、今回コインの出方が等確率なので、その出方も同様に確からしくなります。

 

キ:カの樹形図でAが3以上になっているものだけ抽出して、樹形図の続きを描いていきましょう。

こうして、「4回目でAが3個以上,かつ7回目でBが3個以下」になる確率が計算できるので、それをカで割ればお目当ての条件付き勝率が求まります。

 

(2)「A>B」となる確率をpn, 「A=B」となる確率をqnとすると、「A<B」となる確率は1-pn-qnと書けます。これを利用してpn, qnの漸化式を求めて、pnだけの漸化式に帰着させましょう。

求まるpnの漸化式を解くには少し工夫が必要で、「特性方程式で定数項を『等比数列』だけにする」→「その等比数列で両辺を割る」という2段階の変形が必要です。

 

(3)何度も言ってますが、この(3)は本番では捨て問です。

A,Bの玉の数の変化の仕方が一定ではないため、「n回後にAがk個になるような、コインの出方」を一般的な式で調べることができません。なので、コ、サの場合の数を個別に調べる必要があります。

 

正直、この場合の数をMECEに(過不足なく)調べられているか自信がないため、答えが誤っている可能性が大いにあること、ご了承下さい。。。。

(この小問だけで、何とか規則性を見つけようと40分以上長考していて、その結果でこの体たらくです。。一応(1)の結果とは矛盾しない結果は得られています)

 

コ:

とりあえず、(1)で調べた出方を眺めてみると、

・先頭がAの場合は、後続のBは1個以下

・先頭がBの場合は、一度Aが出ると残りはずっとAだけ

という規則性が何となく見えてきます。

 

実際に一般のケースで、上記の2パターンであればn回後にAの中身はn-1個以上になることが確かめられます。

 

発想としては、Aが最大でn個になるので、Aの上昇を妨害するBは出来る限り出てきて欲しくない、という感じです。最初Bが出続けても、一度Aが出てしまえば、Aの個数はBの出た回数だけすぐに追いつくことができます。

 

※自信がないのは、これ以外にn-1個になる出方があるのか不明だからです。サも同様です。

 

サ:

こちらもコ同様に考えると、

・先頭がAの場合は、後続のBは2個以下

・先頭がBの場合は、一度Aが出ると残りはBが1個以下

なのではないかと推測され、実際に確かめられます。

 

答案では、この2パターンしかないと決め打って計算しています。

 

[追記] サについて、上記以外にもいくつかAの中身がn-2個になる出方のパターンが見つかりましたので、答案を訂正します。今度こそ大丈夫だと思います(一応河合の解答速報とも一致しました)。

 

この問題は、n-2個になる出方を全て過不足なく列挙するのが本当に大変でしたので、やっぱり本番では捨て問ですね。

 

<筆者の回答>

[追記] サについて訂正です。

 

第4問

 

不等式評価と積分で書かれた数列に関する問題です。

(1)だけ独立していて、(2)以降が誘導形式になっています。

 

(1)とりあえず絶対値が邪魔なので、2乗して外してしまいましょう(こうしても同値性は崩れません)。

すると、cosxに関する2次不等式が出来上がります。t=cosxとすると、0≦x≦π/2では0≦t≦1となるので、こうしてできる左辺のtの下凸2次関数が、この範囲で常に0以上になるようなbの条件を調べればよいことになります。

 

bの符号で場合分けしていきますが、微分を駆使していくと多少は検討が楽になります。

[追記] 因数分解すると楽になるよ、と別解の提案を頂きましたので、そちらでも解きました。こちらでは、cosxの不等式の解が、すべて0≦cosx≦1を満たすようなbの条件を決めることになりますね。

 

(2)anの非積分関数の分母が、ちょうど(1)で見た形をしています。ということで、|an|を(1)の不等式を使って不等式評価して、はさみうちに持ち込めばよいでしょう。

 

(3)(4)

an自体が、「t=cosxで置換してくれ!!」と叫んでいる積分ですね。この置換を使って積分の中身をまずは軽くしましょう。

 

(3)のa1についてはlogの形に、(4)については部分積分を使うことで漸化式が作れます。

 

(5) (4)の結果の両辺に(-b)^(n+1)をかけると、定数項がそれっぽい形にでき、両辺で和を取ることで極限を取る前の和が殆ど出来上がります(最終的にb=1/2とすればよいですね)。

この状態でnを∞に飛ばせば、(2)(3)の結果からタが計算できます。

 

<筆者の回答>

(1)の別解

 

第5問

小問集合です。

 

(1)複素数平面の問題です。

とりあえず、分母を払って両辺2乗してガリガリ計算していきましょう。このとき、|z|^2の係数が0であればCは直線に、そうでなければCは円になりますね。後者の変形については典型問題でしょう(半径が煩雑な形になりますが、幸いにして要求されているのは中心だけですね)。

 

前者の直線の場合は、直接「複素平面の形式での式」から求まるかもしれませんが、自分自身あまり慣れていない手法だったので、よく馴染んだxy平面での直線の式に帰着させて考えることにしました。

 

直線の式がx,yの式で書けると、この直線の法線ベクトルが分かります。今回原点と直線との最短距離を考えているので、この法線ベクトルの定数倍が、求めるzに対応しています。あとは元の直線を通るように定数倍を決めてあげて、あとはごり押しで計算しました。この計算が中々大変でした。

終結果は、αの式で書くよりも、αの複素共役の式で書いた方が綺麗になります。

 

[追記]テについては、Cを「垂直2等分線」の式に直すことで、複素数のまま解く別解を提案頂きましたので、そちらでも解いてみました。

 

(2)整数問題です。こちらはよくある典型問題なので、是非とも完答したいです。

 

結局のところ、1/a+1/b+1/cが自然数になるようなa,b,cの組み合わせが分かればよいわけです。

a≦b≦cの大小関係を利用すると、この和が3以下だとわかるので、1,2,3になる場合を個別に検討していけばよさそうですね。各場合について、まずはaを特定して、因数分解を利用して残りのb,cも決めていく、という段取りでよいでしょう。

 

但し、落とし穴が1つあります。上記の検討で(a,b,c)=(1,1,1)という組が求まるのですが、この時にf(a)+f(b)+f(c)を計算すると0になってしまいます。これは「自然数」という条件を満たさないので、この組み合わせだけは候補から外さないといけません。この点に要注意です。

 

<筆者の回答>

テの別解