ちょぴん先生の数学部屋

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平成の東工大数学 2015年

理系数学の最難関の一角、東京工業大学の2015年の問題を取り上げます。

第1問

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分数型漸化式を解き、それにまつわる数列の極限を求める問題です。

 

(1) このタイプの漸化式をノーヒントで出題してくるのが東工大の恐ろしさですね。。このような分数型の漸化式を解かせる問題は、普通は誘導が付きます。

さて、このタイプの漸化式の解き方は、an+1とanをαに置き換えてできる特性方程式を解いて、an+1 - αを計算するという方法になります。この方法に触っている受験生はそんなに多いとは言えないので、数学強者が受験する東工大ならではの強気の出題です。

 

もし上記の解法を知らなければ、nが小さい数の時に実験をしてanの形を予想し、それを数学的帰納法で証明すればよいです。(別解にて紹介。とはいえ、一般項の予測は若干難しいかも)

 

(2) (1)の結果を使ってbnを計算すると、bn = 3 +4/(n+1) × Σk/(2k-1) /n という示したい不等式の右辺に近い形になります。

よって、Σk/(2k-1) /n ≦1を示せばよいのですが、発想が必要です。積分を使ってnだけの式で上から押さえ、その式をさらに評価します。その際にlogx /xの増減まで動員して答案では調べております。。最悪(2)が解けずとも(3)は解けるので、後回しにしても良いでしょう。

 

(3) はさみうちの定理を利用します。答案では(2)で作った、Σk/(2k-1) を積分を使って評価してできた不等式を利用して示しましたが、bn≧3は明らかなので、(2)の結果と合わせて、3≦bn≦3+4/(n+1)ではさみうちを使う方がもっと賢かったかもしれないですね。

 

<筆者の解答>

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第2問

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ベクトルを使って四面体の体積を最大化する問題です。慶応の過去問で散々複雑怪奇なベクトルの問題をやりまくった後なので、このくらいの難易度ではビビりませんよ()

 

(1)典型的なベクトル表示を求める問題です。先にa,b,cの大きさと内積を計算しておくとよいでしょう。内積余弦定理から計算できます。

 

Hについては、△ABCと同一平面にあることからp+q+r=1が分かり、OH⊥AB, OH⊥ACからもう2つの方程式も求まります。垂直の2条件は、対称的になるようにAB,ACという2本の辺を選んでいます。こういうちょっとした工夫で計算ミスを抑制できます。

 

H'についても同様に、AH'⊥OB, AH'⊥OCという垂直の2条件を使って解きます。

 

(2)四面体の高さをOHとAH'の2種類計算しましたが、底面積が簡単に分かるのは△OBCの方なので、高さとしてAH'を採用します。(1)の結果を使ってAH'の長さをxを使った式で求めましょう。

OBCの面積は一定なので、AH'の増減がそのままVの増減になります。よって、AH'を最小化すればよいのですが、xの取りうる値の範囲に注意しましょう。AH'>0になることと、△OABが三角形として成立する条件から考えればよいでしょう。

 

<筆者の解答>

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第3問

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回転体の体積を使って、ガウス関数積分値を評価する問題です。

 

(1)回転する前の図形を図に描いて考えます。するとAは、下側は円柱、上側は

y=e^(-x^2)を回転してできる立体という構成になりますので、それぞれを分けて体積を計算しましょう。積分計算は、t=x^2と置換すると簡単にすることができます。

 

(2)Aの式をx,y,zで表現したあとにx=tで断面を切ります。今回の場合は、x^2→x^2+z^2と書き換えればAの側面の式ができます。

x=tによる断面の両端がz=±√(a^2 ^ t^2) でカットされる形になるので、当然両端がz=±aまである場合より断面積は小さくなります。

 

(3) S(t)をtで積分したものが(1)のVになるので、(2)で示した不等式の両辺をtで積分してあげればよいでしょう。ということで、実は(1)の答えは(3)の問題文でしっかりネタバレされていたわけです(笑)

 

余談ですが、(3)の右辺の積分の中身は「ガウス関数」と呼ばれるもので、統計学に登場する正規分布を表す重要な関数です。さらに、a→∞にした積分値を「ガウス積分」と呼びます。

(3)の左辺でa→∞の極限をとると√πとなりますが、実はこれが「ガウス積分」の計算結果そのものになっていることが知られています。

 

<筆者の解答>

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第4問

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点の速度ベクトルについて考察する問題です。

 

(1) 速度ベクトルvの成分表示は、x,yをtで微分すれば求まるので、OPとxの内積を計算でき、結果cosθ(t)をtの式で表現できます。0≦θ(t)≦πに注意しつつ、cosθ(t)の極限を求めればよいでしょう。

 

(2) vとy軸が平行な時、vのx成分=0となるので、tant = 2/tという方程式ができます。この方程式の正の実数解のうち、最小のものがt1, 2番目に小さいものがt2になるわけです。

y= tant , y=2/t という2本の曲線を考えてあげると、tantの周期性から、t1' = t1 +πを考えるとtan t1' = tan t1 となり、t1'とt2が同じ連続な曲線上にあるので大小比較ができます。

 

<筆者の解答>

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第5問

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最小公倍数、最大公約数についての問題です。

 

(1) a,bの最大公約数がGのとき、互いに素な自然数A, Bを使って、a=GA, b=GBと書くことができて、最小公倍数LはL=GABと表すことができます。よってf(a,b) = ABとなります。

このとき、nがk個の異なる素数を1個ずつ掛け算してできている自然数なので、G, A, Bは全部違う素因数を含んだ数になり、かつその素数は全てnを構成する素数の一部になっています。なので、ABは当然nの約数になるわけです。

 

(2) f(a,b) = bのとき、(1)で調べた関係を使えばa=G^2だと分かります。ここで、もしG≧2だと、aが同じ素数を2個以上含むことになってしまい、nの約数という条件に反してしまいます。よって、G=1が必要で、結果a=1となります。

 

(3)AとBが互いに素な時、S(AB) = S(A) + S(B)となること、G,A,Bがすべて互いに素なことを利用しましょう。

 

<筆者の解答>

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