ちょぴん先生の数学部屋

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平成の東工大数学 2016年

理系数学の最難関の一角、東京工業大学の2016年の問題を取り上げます。

第1問

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放物線と点との距離、放物線と円との距離を調べる問題です。一見難しくなさそうに見えますが、かなり手強い問題です。。地雷枠と言えましょう。

 

(1) P (p, p^2/4)とおいてPQ^2を計算するとpの4次関数になるので、これの最小値を求めればよいのですが、、、

PQ^2 = f(p)としたとき、f'(p)はキレイに因数分解された形にできるので、f'(p)=0が何個の解を持つかによって場合分けをします。

解の個数が2個以下の時は、f'(p)は単調増加なのでf(p)を最小にするpはすぐに分かります。ここまでは難しくありません。

 

問題は解の個数が3個ある時です。このときは、3つの解の大小関係をきちんと調べる必要がありますし、最小値の候補が2つ出てきてしまいます。最大の難所は、この2つの候補のうち小さいのがどちらかを調べる作業です。

f(a)でないほうの候補f(α)は直接計算するのがイヤになるほど複雑な形をしています。よしんば計算をやり遂げても、f(a)の大小関係を調べるのが非常に大変です。

ここは、f(a)が最小になると決め打ちをして、f(α)-f(a)を下からどんどん押さえていき正であることを示すのが一番現実的でしょう。とはいえ、この評価をするにせよかなりの発想力が要求されます。

 

(2) (1)を乗り越えれば、実はサービス問題です。(1)で求めた放物線とQとの最短距離と、C2の半径√2aとの大小関係を調べることで、

・C1とC2が交点を持つ場合

・C1とC2が交点を持たない場合

の2パターンの議論をすることができます。

交点がある場合は、PとRをその交点に重ねてしまえば当然PRは最短となります。交点がない場合は、(1)で調べたPとQを結んだ線分上にRを持ってくればPRは最短となります。

このように(1)さえできれば(2)は簡単なのですが、、、(1)さえできれば!!っていう歯がゆい思いを味わわせてくれる意地悪な問題です。

 

<筆者の解答>

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第2問

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サイコロの目に応じて三角形を構成する確率の問題です。と言いつつも確率要素はオマケに近く、実質(X,Y,Z)の組み合わせを調べ上げる問題です。

 

(1) △PQRが正三角形になるのはX=Y=Zの時と直感的にはすぐに分かりますが、きっちり論証しようとすると面倒です。長さの条件だけで攻めると泥沼にはまってしまうので、角度の条件を使ってT1~T3がすべて合同になることを示すという戦略の方が見通しが良いです。

 

(2)T1~T3のうち2つが正三角形になる条件は、X+Y, Y+Z, Z+Xのうち2つが6になることです。このような(X,Y,Z)の組み合わせを調べましょう。

 

(3) Sは、△ABC- (T1+T2+T3)で計算でき、X,Y,Zの対称式で書くことができます。これを最小化することがメインテーマなのですが、対称だからと言ってX,Y,Zの対称性を保ったまま処理しようとするとうまくいきません。ここは、あえて対称性を崩し、Y, Zを固定してXだけ動かして考えていきます。その後Y,Zを動かします。

 

最後の確率計算の際は、きちんとX,Y,Zの対称性を思い出してあげないと場合の数を数え間違えてしまうので注意です。

 

<筆者の解答>

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第3問

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互いに外接する、同一平面に乗った球の接地点の配置を考察する問題です。

 

(1) 2つの球の中心とP1, P2は同一平面にあるので、その平面で球の断面を作ればよいでしょう。P1P2は三平方の定理で求まります。

 

(2)3個目の球Sの半径をr, 接地点をPとしてS1, S2に外接させて考えます。このときにrを動かしてPの軌跡を考えればよいのですが、直線P1P2をx軸、P1P2の中点を原点とする座標系を設定して考えれば、(1)の結果を使いつつ数式で処理することができます。

Pの軌跡は、r1=r2のとき直線に、r1≠r2のとき円になることが示せます。

 

<筆者の解答>

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第4問

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階乗の割り算について考える、整数問題です。

 

(1) nが素数pの時は、(p-1)! = 1×2×・・・×(p-1)の中にpで割り切れる整数がないので、(p-1)!はpで割り切れません。n=4のときは実際に計算して確かめればよいですね。

 

(2)nは4以外の合成数の時は、

・n = ab (a,b:互いに素な2以上の整数)

・n = p^m (p:素数, m: 2以上の整数)

のどっちかになるので、それぞれについて考えていきます。

 

前者の場合は、1からab-1までの自然数の中に、aで割り切れる整数がa(b-1), bで割り切れる整数がb(a-1)と見つかり、aとbが互いに素なのでこれらは相異なります。

 

後者の場合は、m≧3の場合とm=2のときとで場合分けが発生します。

m≧3のときは、1からp^m -1 までの自然数の中に、pとp^(m-1)の両方が含まれているので、p^mで割ることができます。

m=2のときは、1からp^2 -1 までの自然数の中に、p=2の場合を除いてp, 2pの両方が含まれているので、p^2で割ることができます。例外扱いしたp=2の場合が、まさに(1)でみたn=4の場合に他なりません。

 

<筆者の解答>

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第5問

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パラメータ表示された曲線の概形と、面積を計算する問題です。

 

(1) dx/dt, dy/dtを計算してx,yの増減を調べればよいのですが、3倍角の式を知っていないとdx/dt, dy/dtの符号をうまく調べられないので注意です。忘れてしまった場合は、2倍角の式と加法定理から導出できますので焦らずに解きましょう。

 

(2) 典型的な面積計算の問題です。積分三角関数の積が入り混じった形となりますが、この形は積分と相性が良くありません。倍角の式や和積の式を使ってできる限り三角関数の積の形を解消しておきましょう。

 

<筆者の解答>

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