ちょぴん先生の数学部屋

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2025年度 東北大理系数学 解いてみました。

2025年も大学入試のシーズンがやってきました。

今回は、東北大学の理系数学に挑戦します。

<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)

1. ランダムウォーク(15分)

2. 数列(15分)

3. 4次関数の増減(30分)

4. 指数関数と対数関数が接する条件・面積・極限計算(20分) 

5. 空間図形(30分) 

6.  正5角形の回転(130分) 

計240分

 

<体感難易度>

2<1<4<3<5<6

 

平易な問題と難しい問題が混在したバランスの取れた東北大らしいセットなのですが、第6問(2)が飛びぬけて難しく捨て問となっています。

 

第6問(2)はいないものとして扱い、第1問・第2問はぜひ完答したい問題、第4問と第6問(1)は出来れば確保したい問題、残りの第3問・第5問は部分点狙い、という感じだと思います。

 

<個別解説>

第1問

ランダムウォークに関する確率の問題です。

 

まずは(1)以降を解いていくお膳立てをします。

 

+1進む事象Aがn回中a回起こり、-2進む事象Bがn回中b回起こるとして、各々の確率と、n回後のPの座標xn(今回は0の場合しか登場しませんが)をa,bの式で表現しておくとよいです。

 

(1)(2)は、このお膳立ての元nの値からa,bの値を調べれば容易に確率計算できます。

 

(3) a,bをnとxnの式で表すと、xn=0の場合は分母に3が現れることが分かります。nが3の倍数ならa,bは整数になるのですが、そうでない場合はa,bは整数にならず不適となります。こういう事情なので、求める確率は0です。

 

<筆者の回答>

 

第2問

数列の問題です。

 

(1)xnとynの漸化式が積の形だらけなので、誘導がなくとも対数を取りたくなります。対数の底は何でもいいのですが、初項がともに2の累乗なので2にしているというわけです。

an,bnの漸化式に変換すると、これまた誘導がなくても漸化式の足し引きで等比数列が作れないかを考えるべきです。ちょっと誘導が丁寧すぎる気がします。

 

kは、anとbnの係数を両辺で比較すれば公比rとセットで求まります。

 

(2) (k,r)の組が2つ求まるので、それぞれに対して一般項を調べbnを消去してanを求めるとよいです。

 

<筆者の回答>

 

第3問

4次関数の増減を調べる問題です。問題文はシンプルですが、場合分けが煩雑でかなり難しい問題だと言えます。

 

(1)(2)は一連の流れになっているため、まとめて考えてしまいます。

 

f'(x)を計算すると、x×(2次式)の形になります。f(x)の増減を知るには、f'(x)がx=0以外にどんな解を持っているかを調べる必要があるので、それをaの値で場合分けして検討していくわけです。

 

まず一番シンプルなのは、2次式の部分が符号変化しない場合です。こうなるのは、2次方程式が重解or虚数解を持つ時です。この場合はf'(x)の符号変化はxの符号変化だけと連動するので、極値は1しかありません。そして残念ながらその極値は極小値です。

 

次は、2次式がxの値に応じて符号変化する場合です。それは2次方程式が2つの実数解を持つパターンなのですが、1点注意が必要なポイントがあります。

 

2次方程式が2つの解を持つからと言って、f'(x)=0全体が3つの実数解を持つとは限りません。2次方程式の解の一つがx=0だった場合、元々あったf'(x)=0の解x=0と合わさり重解となってしまうのです。f'(x)=0が重解を持つ場合はf(x)は極小値しか持たないことは既に検証済みなので、x=0を解に持ってしまうようなaは除外しないといけません。

 

こうしてようやくf'(x)=0がx=0を含んだ3つの実数解を持つ場合にたどり着きます。この場合は極大値が必ず存在します。これで(1)が解答可能です。

 

その中でさらにx=0で極大となる条件を調べるには、f'(x)=0の3つの解の、0との大小関係で場合分けする必要があります。2次方程式の解の符号の組み合わせは、係数の符号で判別可能なので、これでaの条件を調べられます。結論としては真ん中の実数解が極大値を与えることになります。これで(2)も解答可能になります。

 

<筆者の回答>

 

第4問

指数関数と対数関数の接する条件、及び関連する面積計算と極限計算の問題です。

 

問題文の条件は、要するに「2曲線が接している」ということです。

 

(1)x=tで2曲線が接するとすると、f(t)=g(t), f'(t)=g'(t)が同時に成り立つことになるので、連立します。

問題文には「aの値を求めよ」とありますが、一見するとaはnの混じった式になりそうに思えて不安になります。ですが、実際に計算すると、aはちゃんとnと無関係な数値になってくれます。

 

(2)グラフを描いて、積分計算によって面積を求めればよいでしょう。

 

(3)式の形によっては∞-∞の不定形になってしまい、厄介な極限です。しかし、全体を通分し分子をnで整理すると、実質取り組まないといけない極限計算は、n(e^(1/n)-1)の部分だけとなります。(※∞×0の不定形です)

 

この極限は、分母に無理やり1/nを持ってくることで解決できます。この操作を行うことで「微分係数の定義」の形にできるというわけです。

 

<筆者の回答>

 

第5問

空間図形の問題で、(3)をどう解くかがカギになります。

 

(1)Qをパラメータ表示し、z座標が0になる条件からパラメータの値を決めるというお馴染みの解法です。

 

(2)求める交点をRとします。こちらも、Rをパラメータ表示し、S上にある条件からパラメータを決定すればよいです。

 

(3)今回の大問のメインディッシュともいえる問題です。一見すると(1)は(3)に直結しているものの、(2)は(3)と無関係に思えます。だとするなら何故わざわざ(2)を解かせたのか?それを頭の片隅に置きつつ解いていきます。

 

αの方程式は法線ベクトルの情報から容易に立てられるので、(a,b,c)はSの式を満たすだけでなく、αの式をも満たすという、a,b,cについては実質2つの関係式が求まります。

 

この関係式をうまく使って(1)の結果に代入すればQの座標がパラメータ表示できてお終い・・・とできればいいのですが、実際にはこの方法ではうまくいきません。

 

球面の条件と平面の条件をうまく両立できる変形が、(少なくともすぐには)思いつきません。

 

何か突破口はないかと、藁をもすがる思いでS,N,P,Qを図に起こしてみると、閃きました!

 

「あれ?この問題、Qを(2)の形で表現して、逆にP側をp,qで表現した方が楽なのでは?」

 

と。

 

そうです。a,b,cの方をありきにしたからうまくいかなかったのです。というわけで発想を切り替え、p,qの方をありきにして考えることにします。

 

p,qをありきにした場合、Pの座標はp,qでどう書けるか?実は、それこそが(2)で求めたRそのものです!(2)のRが、そのまま(3)ではPの役割を果たしています。

 

こうして、a,b,cがp,qの式で書けることになります。(2)を経由しているため、この時点でP(a,b,c)がS上にあることは保証されています。あとは、α上にある条件を追加するとpとqの関係式が出来上がるわけです。

 

伏線だと思ってたものが実は伏線ではなく、逆に伏線じゃないと思っていたものが実は伏線だった、という非常に面白い問題構成になっていたのです。

 

<筆者の回答>

 

第6問

正五角形の回転に関する問題で、(2)は文句なしに本セット最難問であり捨て問です。ただし、(1)は典型問題に近いため、解けるとよいと思います。

 

(1)正五角形の内角は108°なので、余弦定理を使うと対角線が計算できるわけですが、問題は、その三角比の計算です。特に今回は、(2)もそうですが、sin36°、cos36°の値が必要になります。

 

一度は導出した経験があるといいのですが、これらの導出方法は決まっています。

θ=36°とおくと、3θ=180°-2θという関係から、cos3θ=-cos2θが成り立ちます。この両辺を倍角の公式を使ってcosθの多項式にし、cosθの3次方程式を解く、という算段です。

 

(2)正五角形という題材自体慣れないのに、それを回転した挙句重ねた共通部分を考察するという、ゲロを吐きそうな要素がてんこ盛りです。問題文を見ただけで裸足で逃げ出し白紙回答した受験生が殆どだったと思います。実際、試験戦略上はそれが最善手です。私自身、この実質(2)だけで解き切るのに2時間近くかかりましたから・・・

 

いきなり正五角形全体を考えると難しいので、対称性を生かし、1/5だけ切り取った部分を考察するとよいです。

 

回転角θがどの部分にどのように表れるかを考察しつつ眺めると、最終目的である外周は実は正10角形になることが分かります。というわけで、この1辺の長さを計算できれば実質勝ちです。

 

長さが分かっていない辺が殆どで、角度の情報だけ無駄に多くある状況なので、辺の長さを調べるには正弦定理が有効となります。答案では、正五角形の辺から、両端の長さを求めて差し引くことで正10角形の1辺を求める作戦を取りました。

 

これで外周がθの式で書けたわけですが、それでもsinやcos、中身の角度もθ/2と36°-θ/2が混在してて、とてもじゃないがこのままでは増減を調べられる状況にありません。

 

ここは、式が汚くなること覚悟で加法定理で分解することで角度の中身をθ/2で揃え、分母分子を割り算することでtanだけの式に持っていきます。これで増減が調べられます。

 

外周が最小になるθは直感的に真ん中の36°だろうと想像できますが、式の上でもちゃんと証明できました。

 

本当、化け物な問題でした・・・

 

<筆者の回答>