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令和の京府医大数学 -2021年-

このシリーズでは、京都府立医科大学の数学の問題を解いていきます。

 

2回目の今回は2021年です。

第1問

 

関数の増減を調べる問題です。

 

(1)絶対値の中身の正負によって場合分けして、増減を調べていきます。

 

(2)(3)はまとめて考えてしまいます。

g(x)を微分すると、g'(x)=f(x+r)-f(x-r)となるので、x+rとx-rが(1)で考えた「絶対値が1以上か1以下か」のどっちに入るかで場合分けをして、f(x+r)-f(x-r)の符号を調べていきます。

r≧1のときは比較的議論がすっきりしてg'(x)が常に0以上であることが言えますが、0<r<1の時は、極値を持つか持たないか、持ったとして考えてる範囲の中にあるか外にあるか、といったrの値による繊細な議論が必要になります。

 

<筆者の解答>

 

第2問

 

確率の問題ですが、実質条件に見合う(k,l)の組数や(k1,l1,k2,l2)の組数を調べる場合の数の問題です。

 

この問題は、まずはA(k,l)が具体的にどうなるかを書き出さないことには始まりません。対称性から1≦k≦l≦6の場合に絞ってA(k,l)が実際にどうなっているかを調べて書き出していきましょう。(※k>lのときは、座標の順番を入れ替えれば作れます)

 

(1) 書き出していくとnは1,2,3,6のどれかになっていて、3以下のものがレアケースだと分かります。nが3以下になるような(k,l)の組数を6^2で割れば、確率が求まります。

 

(2) Bの要素数が7になるには、最低限以下の条件が必要になることが分かります。

1. (k1,l1)≠(k2,l2)

2. n(A(k1,l1) )とn(A(k2,l2) )の少なくとも一方は6

 

こうなると、A(k1,l1)かつA(k2,l2) の要素数をMとした場合、

Ⅰ: n=6同士のとき、M=5

Ⅱ:n=6とn=3のとき、M=2

Ⅲ:n=6とn=2のとき、M=1

Ⅳ: n=6とn=1のとき、M=0

の4パターンに絞れます。ただ、どの集合も(0,0)を含んでいるのでM=0にはなりえず、実質考えるべきはⅠ~Ⅲの3パターンです。

 

あとは、各場合について組み合わせを根気よく探していくしかありません。

(探していくと、実はⅢの場合しか組み合わせがないことが分かります。Ⅰの場合は数が多すぎて厳密には調べられてないですが、M=5なんてシンクロ率の組み合わせはおそらく存在しないと思います。。。)

 

<筆者の解答>

 

第3問

 

正十二面体の体積を計算する問題です。

 

(1)Fは二等辺三角形と台形を屋根とした家みたいな立体になります。屋根の尾根を通って底面に垂直な平面で断面を切ってあげるとよいでしょう。

 

(2) 尾根に垂直な断面できるとθ1の三角比が分かり、(1)の断面からθ2の三角比も分かります。あとは、これらを使ってcos(θ1+θ2)=0の加法定理を考えるとよいでしょう。

結論としては、aは黄金比になります!( この事実が(3)で正五角形が作れる伏線になっています。)

 

(3) 立方体に、尾根の向きを互い違いにしてFを張り付けていくと正十二面体(1つの面が正五角形)が出来上がります。(2)の条件から各正五角形が同一平面上に乗ることが保証されています。

ということで、正十二面体の体積は立方体の体積にFの体積6個分を足せば求まるので、Fの体積を計算することが主眼になります。答案では底面に平行な面で切った断面積を積分する方法をとっています。

 

<筆者の解答>

 

第4問(a)

 

整数係数の2次方程式、3次方程式の解に関する、複素数の問題です。

 

(1) Cの方程式の解をαとして、Dの方程式の解がαとなるようにp,qをm,nの式で表現していきます。

 

(2) 以前阪大辺りで出題されたことのある「2の3乗根が、整数係数の2次方程式の解になりえないことを証明する」問題です。

 

2の3乗根は、p=0,q=-2とすればDが成立することは明らかでしょう。しかしCの解になりえないことの証明は結構難しいです。

 

2の3乗根をCの式に代入すると、「4の3乗根」が登場してしまいこれが邪魔です。ここで発想がいるのですが、式全体に2の3乗根をかけてあげると、「4の3乗根」の式がもう1つ作れて、「4の3乗根」を消去することができます。

 

あとは、2の3乗根が無理数なことを使って、m,nが存在しないことを説明していきます。背理法でよいでしょう。

 

(3) z=cosθ=isinθとおくと見通しが良くなります。これをDの式に代入して、θ,p,qのあり得る組み合わせを調べていきます。

 

<筆者の解答>

 

第4問(b)

 

いわゆる「ルーローの三角形」を回転させたときの、頂点の軌跡を考える問題です。

問題文のKは「ルーローの三角形」と呼ばれる特殊な図形で、自動車のエンジンの一種「ロータリーエンジン」のローターに使用されていたり、正方形の穴をあけるドリルに使われていることでも有名な図形です。

ルーローの三角形 - Wikipedia

 

(1) この範囲では、Aはサイクロイドを描きます。OPと弧APの長さが等しい事を利用します。

 

(2)その後のAの軌跡を丹念に場合分けして追っていきます。Lの概略は結局、

サイクロイド→円弧→直線→円弧→サイクロイドとなり、x=π/2で対称な曲線となります。

 

(3)サイクロイドの部分は積分で計算し、残りは長方形+円弧+直角三角形なので面積計算は容易です。前述のようにx=π/2で対称なので、この対称性を利用するとよいでしょう。

 

<筆者の解答>