先日行われた2024年度の一橋大学の後期数学を解いてみました。
※一橋の後期は文系向けにも関わらず数Ⅲが出題範囲に含まれています。なので、どうしても数Ⅲの知識が不可避な問題については「※数Ⅲ必須」とコメントを付けておきます。
第1問
整数問題です。
定石通り左辺は因数分解し、10!も素因数分解しておきましょう。
m+nもm-nも偶数なので、全体を4で割っても整数のままです。このとき、A=(m-n)/2, B=(m+n)/2とすれば、(m,n)の組と(A,B)の組が綺麗に1対1対応になります。
あとは、右辺の残った素因数たちをどうやってA,Bに振り分けるか、という話になります。AとBの大小を意識せず振り分ける方法は各素因数の個数を使って調べることができますが、実際にはA<Bの大小関係があります。
ですが、今回10!÷4が平方数でないのでA=Bにはなりえません。なので、対称性からA<Bとなる振り分け方とA>Bとなる振り分け方はちょうど同数存在することになります。
結局、AとBの大小を気にしない場合の振り分け方を半分にしたものがお目当ての物になります。
<筆者の解答>
第2問
3次式の同定問題です。
まずは1個目の積分の関係式を整理しないことには始まらないでしょう。愚直に左辺を計算する以外にありませんが、最終的にpの恒等式として係数比較ができます。
未知数はa,b,c,mの4つなのに対し、係数比較で出てくる方程式は3つしかありません。そうなると1つは未確定な文字が残ってしまうことになるわけですが、何を残すか?a,b,c,mの中の仲間外れはどう考えても唯一「整数」に限定されてるmですので、mを残すのが賢明でしょう。a~cをmの式で解きましょう。
その上で、2個目の極値の条件を検討します。
f(x)が極値を取るxはf'(x)=0の解ですが、今回の場合はf'(x)が綺麗に因数分解できません。ですが、f'(x)=3(x-m)*{x-(m+1)}+1/2という惜しい形までは変形でき、この形からx≦mまたはx≧m+1のときはf'(x)>0で確定してしまいます。
なので、f'(x)=0なら少なくともm<x<m+1でなければならないと分かります。
ここからmが確定することになります。
<筆者の解答>
第3問
確率の問題で、本セットの中でもかなりの難問です。特に(2)は。
まずは、A1~A3の各点の移動確率を図にしておきましょう。
(1)途中A2を経由することなくPk=A1となる確率とPk=A3となる確率を定義して、漸化式を立てて解いていくことを考えるとよいです。
(2)当然ながらPk=A2となるkの個数で場合分けをしていきます。0個のときは単純ですが、1個・2個のときがかなり大変です。
それぞれl回目、m回目でPk=A2となるとして確率計算をしていくわけですが、(l,m)の組が何通りあるかを考える必要があり(解答では余裕がなかったためメモ書き程度の記述になってしまってます。)、さらに、lとmが特定の値の場合について例外処理する必要があります。
最終解答はえらく汚い形ですが、少なくともn=2の場合の検算では合っていたのでおそらく大丈夫だとは思います。
[訂正] kが2個の場合のm≧l+2かつm=nのケースについて、l,mの組数の数え間違いがありました。mはnに固定されているためlの個数だけ数えればよくn-2通りが正解です。
結果、(C)の結果と最終結果に修正が入ります。失礼いたしました。
<筆者の解答>
↓ 最終解答訂正
第4問
円と直線の交点に関する問題です。
私の場合、まず本回答のような方法を取りました。
その心は、CとL1, CとL2, CとL3の交点座標をそれぞれ調べて交点の総数の「延べ数」をまとめ、実際に重複が起こっているかを調べて潰していく、というものです。
しかし、この方法は面倒な解法で、解き終わった後にもっと簡便な別解を思いつきました。
今回L2とL3は完全に固定されてて、L1とCだけが動かせる状況です。交点総数を3点になるように後からL1を調整すればいいので、まずはCを動かすことを考えます。
Cの中心はy軸上を動くので、L2,L3との交点総数は0,2,3,4のどれかです。L1含めて交点総数が3になるには、L2/L3との交点総数は2か3になるしかありません。
2のときは、CはL2/L3に接する位置にあって、L1がCの上端ないし下端で接する位置にあれば交点総数を3にできます。
3のときは、Cは原点を通る形となり、L1は残り2交点を通るように設定すればいいわけです。
このように図形的に考えると簡単に解くことができます。
<筆者の解答>
↓別解(こちらが推奨です)
第5問[Ⅰ]
例年通り第5問は選択問題となっています。
例年では数Ⅲを使わない[Ⅰ]の方が難しく、数Ⅲを使う[Ⅱ]の方が簡単なことが多いのですが、今年に関しては[Ⅱ]の方が難しいので、[Ⅰ]を選ぶ価値が十分あります。というか、むしろ[Ⅰ]は調べれば解けるパターンなのでお得だったまであります。
さて、[Ⅰ]はフィボナッチ数列を13で割った余りを調べる問題です。
anを13で割った余りをbnとすると、bnには必ず周期性が生じます(このことは鳩の巣論法で示すことができます。詳しくは東大2014年理系第5問の解説をご覧ください。平成の東大理系数学 -2014年- - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com) )。
なので、bnを周期が一巡するまでひたすら調べることさえできれば、周期性からb2024の値を調べることができます。bnはmod13の合同式の枠組みではanと同じ漸化式に従うので具体的に調べていくことが可能です。
<筆者の解答>
第5問[Ⅱ] ※数Ⅲ必須
指数関数を使って、n変数の相加相乗平均の関係を証明する問題です。
(1)指数関数を左辺に集めてt=x-yとすれば、よくある典型問題になります。両辺差を取った関数を微分して増減を調べるパターンです。
(2)これは意外と思いつかないかもしれません。(1)の式でx=ai, y=Σai/nとして辺々和を取るとうまくいきます。
発想のポイントは、左辺が和の形、右辺が積の形になっていて同時に作るのは難しそう。だから、積の形は予めyとして作ってしまい、和を後からとってみよう、という点です。
最悪(2)の証明が出来なくても、(2)の結果ありきで(3)は解けますので、(3)を先に着手しておくのも手です。
また、テクニカルな別解があるので、下に参考に乗せておきます。
(3) bi=e^aiとしてしまえば、ほとんど(2)から自動的に示せてしまいます。
<筆者の解答>
↓(2)の別解 ※かなりテクニカルで、こちらの記事を参照しました。
相加相乗平均の不等式:意味・例題・おもしろい証明 | 高校数学の美しい物語