読者の方からリクエストがあったため、先日行われた2024年の中央大学理工学部の数学の問題を解いてみました。
(もし今後需要があれば、2023年以前の問題についても解いていこうと思います)
第1問
グラフの上下関係に関する問題です。
(1)まずはy=f(x)の形状を調べないことには始まりません。絶対値が2つあるので計4通りの場合分けが発生し、結果的にM字型のグラフになります。
このM字よりも直線y=ax+bが常に上側になるような条件を考えていくわけですが、ここは問題文の誘導に従ってbの値によって場合分けして考えます。
y=g(x)の傾きがM字の左端よりも急だと、どこかで必ず交点を持って上下関係が逆転してしまうことが視覚的に分かるので、aの上限はMの左端の傾き2になります。b=1のとき、ちょうど直線とMの左端がオーバーラップすることになります。
bが1以下の場所では、y=g(x)が(-1/2,0)を通る時がaの上限だとこれまた視覚的に分かります。
(2)接線の式は流石に説明不要でしょう。y=h(x)は下凸のグラフで、かつa=e^pならy=g(x)と接線が平行になるので、接線よりy=g(x)が下側にあれば、g(x)≦h(x)が達成できます。(※逆にそれ以外の場合は交点を持ってしまい所々上下が逆転します)
(3) (1)ではf(x)≦g(x)となる条件を、(2)ではg(x)≦h(x)となる条件を調べていたので、両者の共通部分がDになります。結局面積計算はlogの積分を行うことになり、部分積分が定石ですね。
<筆者の解答>
第2問
確率の問題です。
(1) X-Y-1が3で割り切れる(X,Y)の組み合わせを具体的に調べてしまった方が早いでしょう。
(2)これは詰まった人が多そうな気がしますね・・・
ある整数が3で割り切れるかどうかはその数の符号に依存せずに決まるので、絶対値を取って|X-Y+1|と|X-Y-1|が3で割り切れる状況を考えても同じことです。
ここで、よく見ると、
|X-Y+1|=|(X+1)-Y|
|X-Y-1|=|X-(Y+1)|=|(Y+1)-X|
となって、両者の数はXとYを入れ替えただけの関係になっていることが分かります。
そして、一回カードを元に戻しているのでXとYは最終的に全く同じ動作をしてるわけで、全く同じ確率分布に従ってることが分かります。
というわけで、結局|X-Y+1|が3で割り切れる確率と、|X-Y-1|が3で割り切れる確率は等しいことが分かります。
(3)~(5)
X-Yが3で割り切れるということは、3で割った余りがXとYとで等しいと言い換えられます。
よって、3で割った余りが等しくなるような(X,Y)の組み合わせを調べつくせばOKです。3で割った余りが0,1,2の3通りあるので、そのそれぞれに対して場合の数を調べていくわけですが、nを3で割った余りによってその場合の数の状況が異なってきます。
<筆者の解答>
第3問
関数の漸化式に関する問題です。
(1) よくある(a+b)^2=a^2+2ab+b^2を利用することで解くことができます。
(2)これも典型問題でしょう。sn+2の形を作ろうと思ったら(f+g)sn+1で大まかに作れますが余計な項があるのでそれを差っ引けばよい、という発想です。
(3) (2)の結果でx=0を代入して考えます。2個飛びの漸化式になるので偶奇による場合分けが発生することに注意です。
微分係数の方は(2)の結果を微分してからx=0を代入するようにしましょう。
<筆者の解答>
第4問
積分値の極限計算問題です。
この問題の題材は以前取り上げたウォリス積そのものとなっています。分数を無限に掛け算すると円周率になる? ~ウォリス積~ - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com)
(1) 三角関数の積分は2乗と相性が良いため、(sinx)^2を無理やり抽出して変形していくとよいでしょう。cosxが邪魔になると思いきや、部分積分を利用することで消すことができます。
(2) (1)の結果を利用することで、nInIn-1は番号を2個下げても同じ値になることが分かります。2個飛びなので偶奇による場合分けが発生しますが、結果的には同じ値になります。
(3)sinxがこの積分区間では0以上1以下の関数なのでほぼ自明な事実だと思います。答案では差を取って議論しました。
証明したい式には等号がないのですが、被積分関数が0以上なら少なくとも積分結果は0以上であり、被積分関数が恒等的に0でなければ積分値は正になる、という事実を使っています(積分とは面積なのだから、この事実は明らかですね)。
(4) (3)の結果を利用すると(2)の式の形でnIn^2を不等式で挟むことができます。あとはお判りでしょう。
<筆者の解答>