2024年も大学入試のシーズンがやってきました。
今回は、東京工業大学の数学に挑戦します。
今年の秋に医科歯科大と合併し「東京科学大学」となるため、「東京工業大学」としては最後の入試になります。
<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)
1. 放物線と軸に接する円中心の軌跡 (30分)
2. 微分方程式(30分)
3. 座標平面内の点列(45分)
4. 確率(45分)
計175分
<体感難易度>
2<1=5<3<4
「東工大」としての最後の試験となった今回のセットは、東工大と聞いて連想するような重厚な問題はあまり多くない、比較的穏やかなセットとなった印象です。
第1問は放物線と円が接する条件と中心軌跡を考える問題で、計算量はやや多めなものの方針自体は一本道なので是非合わせたいところ。
第2問は微分方程式の問題で、基本的に誘導に乗っていけば自然と解ける問題です。これも完答を目指したいです。
第3問は点列の問題で方針自体は簡単に立つものの、計算がとにかく煩雑で長いという東工大らしい問題ですね。
第4問は本セット最難問と思しき確率の問題で、初手の方針立てが全てのカギを握ります。
第5問は複素数と整数の融合問題で、難易度は高くないのでこれも完答したいです。
<個別解説>
第1問
放物線と軸に接する円中心の軌跡に関する問題です。
(1)とにかくSaの式の導出に尽きます。(a,a^2/2)がSaを通り、かつx=aでの接線の傾きが放物線と円とで等しくなる条件からSaの中心と半径が求まります。(2)を見越すと、最初はaはそのままにして計算を進め、最後にa=1を代入するのが良いと思います。
(2)Cの中心のx,y座標をそれぞれaで微分すればCの接線の傾きがaの式で表せます。
<筆者の解答>
※初稿には最後の場面で計算ミスがありましたので、差し替えました。失礼いたしました。
第2問
微分方程式の問題です。基本的に誘導に忠実に計算すれば解ける問題です。
(1) p(t)を微分し、f'(t)とg'(t)に与えられた関係式を代入すると、p'(t)=0が導けます。
これはつまり、p(t)はtによらない定数値を取ることを意味しており、既にt=0での情報が与えられているのでその定数も確定できます(1ですね)。
(2)q'(t)が定数関数ということは、tによらずq''(t)=0になるということです。なのでq''(t)を計算していきましょう。すると、分子の因数にp(t)-1が登場するわけですが、(1)での検討結果からこれがつねに0だと言えるわけです。
(3)q'(t)が定数関数ということはq(t)は1次関数であり、t=0での情報から係数も確定します。
ここから芋づる式にg(t)の形が分かるので、極限計算は容易です。
ちなみに、ここで求まったg(t)はいわゆる双曲線関数の一つ、tanh(x)と呼ばれるものになっています。
(4) g(t)が分かったのでf(t)も分かります。こちらは1/cosh(x)と表される双曲線関数の一種です。関係式はどことなく三角関数のそれと似てますね。
曲線の長さは、被積分関数を計算すると実質f(t)を0≦t≦Tで積分する格好になります。Tは容易に計算できるため、あとは如何に置換積分するかがカギになります。
<筆者の解答>
第3問
座標平面上の点列に関する問題です。
(1)まずはルールに従ってAn, Cnの座標値の漸化式を作りましょう。基本的にはよくある2項間漸化式になるので、解くことができます。
全体的に式がごちゃごちゃして煩雑になるので、慎重に計算しましょう。
(2)ACを底辺にして考えるとSnが見通し良く計算できるでしょう。
(3) BAnを計算してから極限を取ろうとすると式がごちゃごちゃしてしまうので、先にAnの極限を取ってからBA∞の値を計算した方がいいと思います。
<筆者の解答>
第4問
確率の問題です。
基本的に「奇数枚オモテ」といった枚数が2個以上飛ぶ場合の確率を直接計算しようとすると、二項係数のシグマ計算のところで詰まってしまいがちです。
なので、こういうケースは確率漸化式によって解く方が有効なことが多いです。
(2)以降は漸化式を立てて解いていってるのですが、(1)ではあえてXnを直接シグマ計算で求める方法でやってみようと思います。
(※本音を言うと、(1)の時点では漸化式で解く発想がまだ浮かんでおりませんでした。(2)以降は漸化式を立てないとどうにもならないと気付き、方針転換したのが実情です)
(1)Xnは、基本的には2項係数を使った「繰り返し試行の確率」のΣを取ったものになります。ただし、Cの右側の数字が奇数限定というのが普通の2項定理との違いです。
(一応nの偶奇で場合分けしたものの、結果論不要な場合分けでした。)
さて、奇数限定の2項定理をどう攻略するか?これには通常の2項定理を活用します。
ここはテクニカルなのですが、あえてパラメータxを導入して、(px+q)^nの2項定理を考えるのです。
x=1を代入すれば全ての項が+に、x=-1を代入すれば奇数番目の物だけが-にかわります。この2つの情報から奇数番目の和と偶数番目の和を綺麗に分離することができます。
これでシグマ計算が実行でき、Xnの一般項が求まります。
(1)でこのような力技が取れたのは、pkが定数だったからです。(2)以降はpkがkに依存した関数になるのでもはやこの方法が使えず、漸化式の利用が必須となります。
(2)さて、漸化式をどのように作るか?です。
C1~Cnを「同時に」投げる、という問題文の状況、よくよく考えると本当に同時ではなく、各コインが投げられるタイミングにはズレがあるはずです。
つまり「同時」に投げようが、C1~Cnを1枚ずつ順番に投げようが、本質は変わらないのです。この解釈の変更が、漸化式作成を可能にします。
C1~Cn-1のn-1枚を同時投げた後、Cnを投げると読み替えてあげると、n枚で「成功」となる状況は、
・n-1枚時点で「失敗」→Cnで表が出る
・n-1枚時点で「成功」→Cnで裏が出る
の2パターンあるので、これを数式に落とせば漸化式が作れます。
こうして作られた漸化式はこの第4問においては万能の物で、XnもYnもZnも全て同じ漸化式に従います。違うのはpkの形だけです。よって(1)も同じ漸化式を利用することで解くことができ、結果は直接シグマ計算して得られた物と一致します。是非自分でやってみて下さい。
漸化式さえできてしまえば、あとは解くだけです。Ynのそれは、両辺にn+1をかけてあげれば等差数列の形に帰着でき解けます。
(3)Znも(2)で作った漸化式に従いますが、pkの値が区間ごとに変化しますので、区間ごとに場合分けして一般項を調べる必要があります。
最終的にZ3mまで求まると、その形はネイピア数eの定義に近い式の積になっていますので、極限計算ではそれを利用しましょう。
<筆者の解答>
第5問
まず、α^n=1となってる以上、αの絶対値は全て1でないといけません。つまり、f(x)=0の解の絶対値は全て1になります。
さらに、α^n=1となる自然数nが存在するということは、ド・モアブルの定理を逆用すると、αの偏角は全て2mπ/n (m:整数)の形でなければならないと分かります。
より分かりやすく言い換えれば、αの偏角は全てπ×(有理数)の形になるということです。
f(x)=0の解は実数解を持つ場合と虚数解を持つ場合に大別されてそれぞれアプローチが異なってくるので、場合分けして実際に解を求めて検討しましょう。
<筆者の解答>