ちょぴん先生の数学部屋

数学の楽しさを、現役メーカーエンジニアが伝授するぞ!

2024年度 旧帝大+東工大+早慶理工+難関医学部 入試理系数学ランキング

国公立2次試験の前期日程が終わってから2週間になりますので、ここで総括を兼ねた個人的な難易度ランキングを発表します。

 

文系編:

2024年度 旧帝大+一橋+早稲田商 入試文系数学ランキング - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com)

第15位:北海道大学

stchopin.hatenablog.com

今年最も簡単だったセットは昨年4位の北海道大学です。

おそらく去年一昨年の問題が難しすぎて数学力をうまく試験で測れなかったから軌道修正したということなんでしょうが、それにしても平年と比べても大分簡単になった印象です。

ここまで平易な問題が多いと医学部受験生あたりなら満点もそれなりにいるでしょうし、高得点勝負の試験になったと思われます。

 

第1問は三角関数の問題で、非常に簡単です。

第2問が差が付きうる確率の問題で、該当する場合を過不足なく数え上げる必要があります。類題が文系第4問で出題されています。

第3問は漸化式の問題で、教科書の章末問題に毛が生えた程度の難易度と言えます。

第4問はベクトルの問題で、こちらも至って標準的な難易度です。

第5問は面積の問題で、差が付くとしたら(3)の積分計算くらいではないかと。

 

第14位:早稲田大学理工学部

stchopin.hatenablog.com

14位は早稲田理工です。

近年早稲田は大分易しいセットが多い印象で、今年もその例に漏れず、という感じです。第3問(4)には出題ミスがあり、2020年に続き、またしても物議を醸してしまいました。

 

第1問は数Ⅱレベルの円と直線の方程式絡みの問題であり、確実に押さえたいです。

第2問もよくあるタイプの漸化式の問題であり押さえたい所。

第3問は四面体の問題で今回のセットの中では難問の部類です。本番では(2)までは解いて(3)にどれだけ食らいつけるかと言ったところです。

なお、(4)は(3)の結果が最大値が求まらない式になっていて定義域も決まらないという出題ミスです。

第4問は第2問に続いて典型的な漸化式の問題で、解き切りたいですね、(3)の設問に至っては、早稲田を受けるレベルの受験生には過剰です。

第5問はおなじみの曲線の概形を調べて回転体の体積を積分で計算させる問題ですね。第3問の後半を後回しにして、こちらの計算にリソースを割くべきです。積分計算が例のごとく煩雑です。

 

第13位:東京慈恵会医科大学

stchopin.hatenablog.com

13位は慈恵医大です。

慈恵は医学部の問題にしては易しめの傾向なのですが、今回は第3問のような抽象的な難問が出ているので例年より難しく感じました。とはいえ、第3問を除けば平易な問題が多かったのでこの順位となりました。

 

第1問は平易な確率の問題なので、確実に完答すべきかと思います。

第2問も計算こそ煩雑なものの、医学部受験生であれば突破可能なレベル感だと思います。

第3問がアイデア勝負の最難問であり、本番では後回しないし捨てにするのが正しそうです。

第4問は(1)がやや難しめで躓く受験生がいたかもしれませんね。この問題が合否を分ける問題になりそうです。

 

第12位:九州大学

stchopin.hatenablog.com

12位は九州大学です。

九大は平常運転な難易度という感じですが一部難問が混ざっています。また、去年まで数年続いた「共通テスト風穴埋め問題」は不評だったのか、ようやく姿を消しました。

 

第1問は空間内の三角形の面積を考える問題で方針は一本道なのですが、少々計算が煩雑です。

第2問は複素数平面の問題で、図形的に考えるのがポイントです。

第3問は整数問題で発想も難しくないため、ぜひ完答を狙いたいです。文系第3問が共通問題でした。

第4問は正直直線を数え上げるだけのあまり面白くない問題です。文系第4問が共通問題でした。

第5問が今回の最難問で、特に(2)はアイデア勝負の問題で厳しいところです。

 

第11位:京都大学

stchopin.hatenablog.com

11位は京都大学です。

 

京大はここ数年平易な出題が続いていましたが、多少は元の難易度に戻りつつあるという感じです。とはいえ、まだ往年の難問尽くしなセットにはまだ届いていない印象です。

 

第1問は面の塗分けを考える問題で、状況把握を正しく行うことが必要でやや難しいです。文系第2問はこれの廉価版です。

第2問は複素数の領域の問題で今年の阪大のそれに比べればはるかに簡単です。是非とも完答したいです。

第3問は阪大とともに「ねじれの位置」が出題され話題になりましたが、この「ねじれの位置」の意味をしっかり立式できればさほど難しくありません。

第4問は本セットの最難問ですが、コラッツ数列を題材にした実に京大らしい面白い問題です。本番では後回しにすべきですが、後でじっくり解いてみることをお勧めします。

第5問は典型的な面積計算とその極限であり、是非とも完答したいです。

第6問もよくあるガウス記号による不等式評価の問題なので、押さえたいところです。

 

第10位:東京医科歯科大学

stchopin.hatenablog.com

10位は東京医科歯科大学です。

 

今年の秋に東工大と統合して「東京科学大学」になるため、「医科歯科大」としての最後の試験となった今回のセットは、例年1問はあるような奇天烈な問題は影を潜め穏やかなセットだった印象です。

 

第1問は過去に似たような類題が散見される整数問題です。不等式評価などをその場で考えて組み立てないといけなくて、本番ではやや難な気がします。

第2問は「勾配」なる新規要素を含む空間ベクトルの問題です。が、あまり「勾配」絡みで悩むことはないでしょう。それ以外の要素がむしろ地味に難しかったりします。

第3問は誘導付きの定積分の計算で、誘導がとても丁寧なので完答したいところです。

 

第9位:名古屋大学

stchopin.hatenablog.com

9位は名古屋大学です。

名古屋大としては平常通りの難易度といった感じに思います。

 

第1問は曲線の接線と関連する整数問題で、工程こそ長いですが標準的な問題です。ぜひ完答したいところです。

第2問は複素数解の問題で、こちらも難易度は高くありません。

第3問は本格的な空間ベクトルの問題で、ベクトル分野の深い理解と空間認識能力が必要になるやや難の問題です。

第4問は本セット最難問ではあるものの、非常に面白い問題だと思います。本番では後回しにすべきですけど、後でじっくり時間をかけて解くと味わい深い問題ですね。

 

今年は文系との共通問題はありませんでした。

 

第8位:大阪大学

stchopin.hatenablog.com

8位は大阪大学です。

 

こちらは京大以上にかつての難易度が帰ってきた印象です。ここ数年が簡単めだっただけで、これが本来の阪大の難易度だと思います。

 

第1問は方程式の実数解に関する極限の問題で、そこまで発想も必要ないのでぜひ完答したいです。

第2問は京大第2問と同じような複素平面の問題ですが、難易度は雲泥の差です。本セット最難問と言ってよいと思います。

第3問は京大第3問とともに「ねじれの位置」が出題され話題になりました。この問題は抽象度高めの空間図形の証明問題ということで、往年の京大を彷彿とさせる問題ですね。文系第2問がほぼ共通の問題です。

第4問は回転体の体積で、ごくごく標準的な問題であり完答を狙いたいところ。

第5問は互いに素な自然数の個数を調べる問題で、誘導ありとはいえ工程が長く大変です。第2問に次いで難しい問題です。

 

 

第7位:東京工業大学

stchopin.hatenablog.com

7位は東京工業大学です。

 

今年秋に医科歯科大と統合し「東京科学大学」になる、「東工大」としての最後の試験となった今回のセットは、東工大と聞いて連想するような重厚な問題はあまり多くない、比較的穏やかなセットとなった印象です。

 

第1問は放物線と円が接する条件と中心軌跡を考える問題で、計算量はやや多めなものの方針自体は一本道なので是非合わせたいところ。

第2問は微分方程式の問題で、基本的に誘導に乗っていけば自然と解ける問題です。これも完答を目指したいです。

第3問は点列の問題で方針自体は簡単に立つものの、計算がとにかく煩雑で長いという東工大らしい問題ですね。

第4問は本セット最難問と思しき確率の問題で、初手の方針立てが全てのカギを握ります。

第5問は複素数と整数の融合問題で、難易度は高くないのでこれも完答したいです。

 

 

第6位:日本医科大学

stchopin.hatenablog.com

6位は日本医科大学です。

 

日医らしい全体的に計算量のエグいセットです。決まりきった作業を淡々とこなすのがメインですが、とにかく計算が長く煩雑な上に、第3問(4)は不等式評価で試行錯誤する羽目になるので相当難しいです。

 

第1問はベクトルと関数の増減の問題で、全体を考えると穴埋めとはいえこの問題は押さえたい所。

第2問は確率計算とその極限計算で。やりなれてる人はササっと解けてしまうレベルの問題ではあるので、仕留めたいところです。

第3問は絶対値付きの積分計算で、とにかく計算が長い上に発想力も問われる難問です。本番では後半は捨てた方が良かったかと。

第4問は空間図形の問題ですが、こちらもとにかく計算が長く大変です。

 

第5位:慶応義塾大学理工学部

stchopin.hatenablog.com

5位は慶応理工学部です。

 

難易度は昨年と同等くらいというところでしょうか。ですが、相変わらず計算量が多く時間内に解ききるのは極めて厳しいセットです。まして基本穴埋め解答形式ですから。

 

第1問は例年通りの小問集合ですが、計算や発想が若干面倒で誰でも完答できるボーナス問題では決してありません。

第2問は確率で、今回のセットではかなり易しめな問題なので完答を目指したいところ。

第3問は本セット最難問だと思います。(4)以降は発想の必要な難問であり、(6)に対する誘導になっているとはいえどう使えばいいかが分かりにくいですね。

第4問は力づくでゴリ押すベクトルの問題で、計算ミスさえなければ完答を十分狙えると思います。

第5問は計算力勝負な複素数平面の問題ですが、(4)の方針建てには経験がいるかもしれません。

 

第4位:慶応義塾大学医学部

stchopin.hatenablog.com

4位は慶応医学部です。

 

相変わらず、これ、本当に試験時間100分ですか!?って試験です。第1問~第3問までは昨年よりもやや易かもしれませんが、第4問のボリューム・難易度が明らかに飛びぬけています。正直、今回のセットは第3問までの勝負だったかと思います。

 

第1問は例年通りの比較的平易な小問集合なので、確実に仕留めたいところです。

第2問はこれも定番の確率漸化式です。これも何とか答えを合わせたいところ。

第3問は分数関数の問題で方針に迷うことはそれほどないのですが、計算過程が長いの一言。

第4問は四面体、6面体の問題なのですが、これだけで解き切るのに2時間半かかってしまいました。やることが多い+空間図形なので状況把握が困難の2重苦に陥る捨て問です。第3問までをしっかり解いて、時間に余裕があれば第4問に触っとくという感じになってしまうでしょうし、なおかつ穴埋め解答のため(1)の解答すら間に合わなくなる可能性があります。本番では大人しく捨てるのが正解だったと思いますね。

 

第3位:東京大学

stchopin.hatenablog.com

3位は東京大学です。

 

昨年に比べると大分易しめのセットだった印象で、昨年のようなヒッカケ要素も少なめで取り組みやすいと思います。6(2)を除けばどの問題も時間さえかければ十分解ける難易度です。というよりここ数年が難しすぎただけのような。

 

第1問は領域図示の問題で、本セット最易問なので確実に完答すること。

第2問は絶対値付き積分の問題で、全体を考えるとこちらも是非とも完答したいところです。

第3問は「確率漸化式」という方針にさえたどり着ければ一本道ですが、偶奇による場合分けが発生することに注意が必要です。

第4問は放物線と円が絡んだ問題ですが、方針建ては難しくないものの計算が煩雑で本番で完答しきるのは難しい気がします。

第5問は東大の大好きな体積の問題で、発想面もあまり難しくありません。

第6問は3次式が素数になる条件を考える問題で、(1)こそよくある典型問題ですが、(2)の証明が想像以上に難しく本セット最難問と言えます。

 

今年に関しては文系との共通問題はありませんでした。

 

第2位:東北大学

stchopin.hatenablog.com

2位は東北大学です。

 

いつもは「ちょうどいい」くらいのバランスの取れたセットを出題してくる東北大ですが、今年に関しては個人的には東北大史上最凶のセットでは?と思うくらいに激難なセットに感じました。少なくとも東大のセットよりは難しい印象で、本番この問題を目にした受験生はパニックになったのではないかと想像できます。

全体として、細かい小問で部分点を拾い集めることはできても完答するのは至難な問題が多い印象です。

 

第1問は2次関数の問題で今回のセットでは最も易しい問題です。正直この問題を落とすと完全に後がなくなるので確実に完答したいです。文系第1問が共通問題でした。

第2問は(1)の不等式評価が「理系出題」であるがゆえに却って難しくなっています。文系であればまだ手が付けられたかもしれません(詳しくは記事にて)なお(2)は(1)とは独立に解けるので、(2)だけ解いて部分点を稼ぐのが有効です。文系第3問が共通問題でした。

第3問は確率漸化式の問題で、(4)をどう考えるかが分水嶺です。

第4問は球の交線となる円に関する問題で、(3)までは何とかなっても(4)が難しいです。

第5問も(3)まではスムーズにいけますが、それを利用する(4)が意外と面倒です。

第6問は曲面の面積ということで誘導は付いてるもののかなり難しいです。

 

第1位:京都府立医科大学

stchopin.hatenablog.com

栄えある1位は、京都府立医科大学です。今年に関してはここがダントツだったと思います。

 

昨年よりも難化したというか、どの問題も重厚で1問あたり平均1時間もかかってしまうぐらいの相変わらず難しすぎるセットです。

 

第1問はfでゲシュタルト崩壊しそうな合成関数の方程式の問題で、このセットの中ではまだマシな部類ですが、それでも完答しきるのは骨が折れます。これでまだマシって・・・

第2問は確率の問題で、(2)まではスムーズにいくものの(3)の評価が発想力勝負で難しいです。

第3問の五角形の面積は、本セットどころか今年度解いた入試問題の中で一番大変だったかもしれない問題です。とにかく計算が長く煩雑の一言。一応初等幾何の解法を思いつければ大分ショートカットできますが、それを本番で思いつけるかと言われると・・・

第4問の回転体の体積は、ボリュームこそそれなりにありますが何とか押し切れるレベル感ではあります。

 

 

 

というわけで、理系編のランキングでした。今年も受験お疲れさまでした。