ちょぴん先生の数学部屋

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2024年度 慶応医学部数学 解いてみました。

2024年も大学入試のシーズンがやってきました。

今回は、慶応義塾大学医学部の数学に挑戦します。

<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)

1(1).  三角形の外心・内心(15分)

1(2).  楕円の接線(10分)

1(3).  三角関数の増減と積分(5分)

2. 確率漸化式 (30分)

3.  分数関数と直線の交点(65分)

4.  四面体・六面体(160分) 

 

計285分

 

<体感難易度>

1(3)<1(1)=1(2)<2<3<<4

 

これ、本当に試験時間100分ですか!?って試験です。第1問~第3問までは昨年よりもやや易かもしれませんが、第4問のボリューム・難易度が明らかに飛びぬけています。正直、今回のセットは第3問までの勝負だったかと思います。

 

第1問は例年通りの比較的平易な小問集合なので、確実に仕留めたいところです。

第2問はこれも定番の確率漸化式です。これも何とか答えを合わせたいところ。

第3問は分数関数の問題で方針に迷うことはそれほどないのですが、計算過程が長いの一言。

第4問は四面体、6面体の問題なのですが、これだけで解き切るのに2時間半かかってしまいました。やることが多い+空間図形なので状況把握が困難の2重苦に陥る捨て問です。第3問までをしっかり解いて、時間に余裕があれば第4問に触っとくという感じになってしまうでしょうし、なおかつ穴埋め解答のため(1)の解答すら間に合わなくなる可能性があります。本番では大人しく捨てるのが正解だったと思いますね。

 

<個別解説>

第1問

 

小問集合です。

 

(1)三角形の外心・内心の座標を調べる問題です。

外心については外接円の式を調べることで、内心については線分の比が頻出することからベクトルを使って解くとよいでしょう。

 

(2)楕円の接線に関する問題です。

lの式はすぐに求まるので、△OPQの面積もX,Yの式で容易に書けます。このとき、X,Y自体が楕円上の点なのでX=√3cosθ、Y=√2sinθとパラメータ表示すると増減が見やすくなるでしょう。

 

(3)三角関数の増減と積分を調べる問題です。

微分するとcosxの3次関数になることから符号が調べられます。積分については、この手のタイプは通常は積和の公式で和の形に変えるのが基本なのですが、今回の場合は置換積分で容易に解けます。

 

<筆者の解答>

 

第2問

 

確率漸化式の問題です。

 

(1)最初に袋1からどの色を取り出すのかで丁寧に場合分けして確率計算していきます。

 

(2)

き~さ:an+bn+cn=1を利用することでbnだけの漸化式にできます。

し~せ:dnに変換すると漸化式が階差数列の形になります。

 

<筆者の解答>

 

第3問

 

分数関数と直線の交点に関する問題です。

 

(1)(2) f(x)を微分して増減表を書けば事足ります。念のため、極小値と極大値の定義を間違えないようにしましょう。極小値は下凸の底、極大値は上凸の頂点です。

 

(3) (2)で描いたグラフとy=mxとの交点を図形的に調べるのもなくはないですが、交点の個数が少し分かりにくいです。ここは、多少面倒でも、m=f(x)/xの形にして交点の個数が一目瞭然になるように工夫した方が良いと思います。

 

(4)部分分数分解そのものなので、与式から逆算して係数比較すればOKです。

 

(5) (4)のヒントのおかげでA(m)をx(m)だけの式で書くことができます。あとは、x(m)の定義からx(m)をmの式で表現できるので、これでA(m)がmだけの式で書けたことになります。B(m)も直角三角形の面積からmだけの式で書くことができます。

 

A(m)/B(m)を計算すると0/0の不定形の極限の形になってしまいます。分母分子で共通した部分を一まとめにするなどしてできるだけ見やすい形を心がけましょう。

logが絡んでいるので、極限計算には「ネイピア数eの定義」が利用できないかを考えるといいです。

 

<筆者の解答>

[訂正] こ について、最後にlogをつけ忘れておりました。なので、loge=1が正解です。失礼しました。

 

第4問

 

四面体・六面体の問題で、本セット文句なしの最難問です。基本的に本番では捨て推奨ですが、(2)まではなんとか粘れるかもしれません。(3)以降は手を付けないのが無難です。

 

(1)まずはベクトルの知識を使って四面体の各辺と平面z=tとの交点の座標をtの式で表現しないことには始まりません。この段階ではtの条件は度外視します。

 

こうして一通り調べると確かに1<t<2では4点が存在できることが分かるので、あとはt→1,2としたときに点がどこに近づくかを愚直に調べればよいです。

 

(2) (1)で求めたW,X,Y,Zを図に落とすのが先決です。そのとき、1<t<2で各座標の大小関係がどうなっているかを丹念に調べないといけません。

 

1<t<2でのA(t)を調べるだけでは体積が求まらないので、残りの0≦t≦1, 2≦t≦3のそれぞれについて同様にA(t)を調べる必要があります。この結果をtで積分すれば四面体の体積が計算できます。実はA(t)がt=3/2について対称なことに気付けると多少計算を楽にできます。

 

(3)ここからは本番では手を出さない方がいい問題となります。

Eの情報を調べることで六面体がどんな図形になっているかが分かるので、先にせ・そを解いた方が良いです。

問題文に書いてある通り、ベクトル表示したときの係数の和と1との大小関係を調べることでEと△ABCの位置関係が分かります。問題文ではAを始点にした場合だけが書いてあるので、同様にB,Cを始点にした場合についても調べないとEの位置関係がはっきりしません。

 

さらに、点Oについても△ABCとの位置関係を見ておかないと六面体の形状が判然としないため、Oからαに下した垂線を別途考えないといけません。

 

結果、考えるべき六面体は、辺BCのところで凹んだ歪な形をしてることが分かります。こんな変な形状をしてるのも、色々と煩わしいところです。

 

(4) (1)と同様にAD,BD, CDと平面z=tとの交点を調べ、W~Zの図にどんな点が追加されるかを考察します。六面体が前述のような凹んだ形状をしているため、単純にW~Zと追加した点の外周を繋いだものがU(t)になるか自身は正直ありませんが、もはやそうじゃないと先に進まないのでそう決め打って計算を進めました。

 

するとU(t)がtの2次関数になるので、最大値は平方完成することで求まります。

 

<筆者の解答>