ちょぴん先生の数学部屋

数学の楽しさを、現役メーカーエンジニアが伝授するぞ!

2024年度 慈恵医大数学 解いてみました。

2024年も大学入試のシーズンがやってきました。

今回は、東京慈恵会医科大学の数学に挑戦します。

<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)

1.  確率(15分)

2.  絶対値付き積分(35分)

3.  2次関数に関する命題証明(60分) 

4.  斜めになった円板の回転体の体積(40分) 

計150分

 

<体感難易度>

1<2<4<<3

 

慈恵は医学部の問題にしては易しめの傾向なのですが、今回は第3問のような抽象的な難問が出ているので例年より難しく感じました。

 

第1問は平易な確率の問題なので、確実に完答すべきかと思います。

第2問も計算こそ煩雑なものの、医学部受験生であれば突破可能なレベル感だと思います。

第3問がアイデア勝負の最難問であり、本番では後回しないし捨てにするのが正しそうです。

第4問は(1)がやや難しめで躓く受験生がいたかもしれませんね。この問題が合否を分ける問題になりそうです。

 

<個別解説>

第1問

 

確率の問題です。

 

条件付確率を計算させているので、まずはベースとなる「赤2白1」を取り出す確率を考えます。この問題のような「戻さず複数個取り出す」場合は、「一度に複数を取り出す」と解釈して確率を求めるのが基本です。

 

このあと、「赤2白1かつ○○が起こる」確率を順に計算していきます。こちらについては具体的に引き方を列挙してしまうのが速いと思います。イについてはa2の値で場合分けするとミスを防げます。

 

<筆者の解答>

 

第2問

 

絶対値付き積分の問題です。

 

(1)直接方程式を解いてしまう方法でも解けますが、(2)でどうせ符号を調べて絶対値を外さないと始まらないので、符号まで分かるように方程式の左辺の増減を考えるとよいでしょう。左辺は単調減少関数なので、端点の値の符号を調べることになります。

 

(2) (1)の方程式の解がある場合とない場合の2パターンに分けて計算していくことになりますが、前者の計算が中々煩雑です。

何度もlogの定積分を計算するのが面倒なので、一旦不定積分の形を調べておくとよいでしょう。

 

(3) (2)さえできていれば、その結果をaで微分するだけですね。

 

<筆者の解答>

[訂正]

(3)の最終解答のlog3の係数は、4ではなく-6です。計算ミスをしてしまいすみませんでした。

 

第3問

 

2次関数に関する命題証明の問題で、本セット最難問です。

そもそも全体的に設定が抽象的である上に、(2)は真偽の判定をしなくてはならないのでかなり厳しいです。おそらく本番では捨てるべき問題だろうと思います。

 

(1)問題文にある条件は前後半に分かれているので、それぞれを言い換えていきます。

 

まず前半について。

直接f(k-1), f(k), f(k+1)が整数である条件を調べるのは煩雑で難しいです。なんとか簡単な形に言い換えたいところです。

 

ここで一般的に

「A,B,Cが整数⇔A, B-A, C-Aも整数」

という言われてみれば当たり前の同値関係が成り立つので、

A=f(k), B=f(k-1), C=f(k+1)として考えることで、f(k)以外の二つをkの1次式に退化させることができます。

 

1次式になった2つの数については、さらに

「M,Nが整数→M+N, M-Nも整数」

が成り立つことを使うことで、2aと2bが整数という結論が得られます。

(※この条件は逆が成り立つとは限らないことに注意)

 

この結論をf(k)に適用すれば2cも整数だと分かります。

 

以上、問題文の条件の前半の結論は「2a,2b,2cが整数」ということになります。

 

次に後半ですが、これは因数定理の適用、つまりf(q/p)=0を考えてあげればよいでしょう。

この式を変形することで、pとqが互いに素であること・前半の結論と合わせると「2aはpの倍数」「2cはqの倍数」という結論が得られ、これがそのまま(1)のお目当ての結論となります。

 

(2)まずは与えられた命題が真か偽かを選択しなければならない点が非常に難しいです。

 

(1)で2a,2cは整数だと分かっているので、もしこの2つのいずれかが奇数(つまりaとcのいずれかが半整数)ならa/pとc/qは両方整数にならないことになります。

 

私は、aが半整数になるようにf(x)をうまく構成できないかを考えました。ベースはシグマ公式Σk=n(n+1)/2で、f(x)=x(x+1)/2 -m(m+1)/2とすれば、xが整数なら常に整数値をとれるし、x-mで割りきれるのでp=1, q=mでうまくいくのではと考えました。

 

このとき、a=1/2, c=-m(m+1)/2, p=1, q=mとなるのでa/p=1/2, c/q=-(m+1)/2とできて、少なくとも前者が整数でないので反例が作れたことになります。

 

もしこの命題が真だとすると、「2aと2cが両方偶数」であることを示さないといけなくて、かつp=2やq=2の場合が例外処理になりそうで面倒だと感じたので、「この命題は偽だろう」と決め打ち、反例を作る方針で突っ走ったという経緯になります。

 

どちらにせよ、アイデア勝負でタイトで極度の緊張に見舞われる試験時間内では解くのが難しいと思います。

 

<筆者の解答>

 

第4問

 

斜めになった円板の回転体の体積を調べる問題です。

 

(1)Dは座標軸に対して斜めになっている円板なので、1本の式で綺麗に表現することができず、「球の方程式と平面の方程式を連立したもの」にならざるを得ません。

 

ということで、まずは平面ABCの式とHの座標を求めることが先決です。

Hの座標は、平面ABCの式から法線ベクトル(OHと平行)が分かり、かつHがABC上にあることから調べられます。

 

さて、この下で「平面z=tがDと交わる」という条件を式で言い換えていきます。

 

これは、当たり前ではありますが「Dの式(でzをtで置き換えたもの)を満たす実数x,y,tが存在する」と言い換えられます。さらに今回はABCの式がxに依存しない形なのでyもtの式で書き換えられるので、「Dの式(でz,yをtの式で置き換えたもの)を満たす実数x,tが存在する」と言い換えられます。

 

最終的な式が、x^2+(tの式)≦1となっていて、x^2は必ず0以上なので、(tの式)≦1であればxが存在できることになります。よって(tの式)≦1を解けばOKです。

 

(2) (1)さえ乗り切ればよくある積分問題になります。

Dの平面z=tによる断面は線分となるので、それを回転してできるドーナッツがKの断面になります。なので、ドーナッツの内径と外形を調べましょう。

 

その上で断面積を求めると、実は「1/6公式」が上手く使える形の積分になります。

積分区間が(1)で求めた通り複雑な形になっているので、何かしら工夫しないとドツボに嵌ります)

 

<筆者の解答>