ちょぴん先生の数学部屋

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2024年度 名大理系数学 解いてみました。

2024年も大学入試のシーズンがやってきました。

今回は、名古屋大学の理系数学に挑戦します。

<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)

1.  曲線に2本の接線が引ける条件と関連する整数問題(25分)

2.  3次方程式の複素数解(25分)

3.  空間ベクトル(30分)

4.  確率を用いた積分値の導出(55分) 

 

計135分

 

<体感難易度>

2<1<3<4

 

名古屋大としては平常通りの難易度といった感じに思います。

 

第1問は曲線の接線と関連する整数問題で、工程こそ長いですが標準的な問題です。ぜひ完答したいところです。

第2問は複素数解の問題で、こちらも難易度は高くありません。

第3問は本格的な空間ベクトルの問題で、ベクトル分野の深い理解と空間認識能力が必要になるやや難の問題です。

第4問は本セット最難問ではあるものの、非常に面白い問題だと思います。本番では後回しにすべきですけど、後でじっくり時間をかけて解くと味わい深い問題ですね。

 

<個別解説>

第1問

曲線に2本の接線が引ける条件と関連する整数問題です。

 

(1)これは流石に教科書レベルでしょう。f(x)を微分して増減を調べます。

 

(2)Cのx=sでの接線がP(t,0)を通るとして関係式を作り、これをsの方程式と見なしたときに正の実数解が2つある条件を調べればよいことになります。この方程式は2次方程式なので、お馴染みの判別式・軸の位置・端点の符号の3点セットをチェックしていくことになります。

 

(3) (2)で考えたsの2次方程式で解と係数の関係を使うと、αとβが整数になるには少なくともtは整数じゃないといけないと分かります。

 

その下で方程式を解くと、整数解となるには√の中身が平方数でないといけないと分かります。ここからtの値の候補が求まるので、これが(2)の結果と合致するかどうかを調べればよいことになります。

 

<筆者の解答>

 

第2問

3次方程式の複素数解について考察する問題です。

 

(1)当然因数定理を使うのですが、まずはcに依存しないzをcの恒等式と見なして探すという発想で考えるとよいでしょう。

 

(2)一見すると複雑な3次方程式に見えて手に負えないように見えます。

ところが、αの値からαのべき乗が周期的になってることが分かるので、αの次数を下げることができます。

そうすると、αzを一塊として考えれば、なんとQ(z)はP(αz)となってしまいます。これで、(1)の結果を利用してQ(z)=0の解が求まることになります。

 

(3) (1)の結果からP(z)=0の解は全て実部が1だと分かっているので、Q(z)=0の解の内実部が1になりうるものがβの候補となります。

この候補が(1)の解それぞれと一致しうるどうかを調べていけばOKです。

 

<筆者の解答>

 

第3問

空間ベクトルの問題です。

 

(1)A~Cの座標から全て計算できます。

 

(2)Hの方程式を作ることでHの法線ベクトルが求まります。このときOQベクトルはこの法線ベクトルの定数倍になり、かつQがH上の点なのでQの座標が求まることになります。

あとはQの座標をAを始点とした形に書き直してあげればOKです。ABベクトルとACベクトルの各係数を文字で置くとよいでしょう。

 

(3)もしs,tが実数全体ならばKはHそのものとなるので、s≧0, t≧0ならKはHの一部ということになります。どういう一部かと言えば、半直線ABと半直線ACで囲まれたエリアとなります。そして(2)の結果からQはKの外にあることが分かります。

 

PQ上の点Rの位置ベクトルはAPベクトルとAQベクトルを使ってパラメータ表示でき、それとAR=rACを連立させることで、rをs,tの式で書けることを言えればOKです。

 

(3)求めるのはOSの長さですが、先ほど考えたKとQの配置を考えれば、

OP^2=OQ^2+QP^2と三平方の定理で求まり、QRが最小になるには、Pが半直線AC上にあって(つまりP=Rとなっている)なおかつQR⊥ACとなっていればいいことが図形的に分かります。

 

よって、そんなrを探してあげましょう。

 

<筆者の解答>

 

第4問

確率を用いて積分値を計算する問題です。本セット最難問です。

 

(1)ともに余事象を考えると確率が計算できます。

 

(2)確率(特に今回のような、確率変数kが飛び飛びな値を取る場合)を計算するにあたっては、普通は連続量を取り扱う「積分」なんて登場しません(あって区分求積法を使う時くらいです)。

なので、普通に考えれば直接f(k)が与式のような積分を含んだ形で求まるわけがないのです。

 

一方で、(1)での考察から、Σを使った形ならf(k)を簡単に表現できます。

 

ということは、以下の方針で考えてはいかがでしょう?

1.f(k)をまずはΣの式で計算する。

2.与式の右辺をg(k)とする

3.実はf(k)とg(k)が恒等的に等しいことを証明する

 

3を証明したくば、次の2つが証明できればよさそうです。

(a) f(1)=g(1) :初項が等しい

(b) f(k+1)-f(k)=g(k+1)-g(k)がkによらず成立する:満たしてる漸化式が等しい

 

ということで、この2つを証明することを考えましょう。(b)のg(k+1)-g(k)の方の計算は部分積分を使って2項係数をf(k+1)-f(k)のそれに近づけることを考えると見通しが良いです。

 

こうして、確率が積分を使った式で書き変わることが分かりました。

 

(3) p=1/2として、与式の積分の形になるようにf(k)=g(k)を近づけていくことを考えます。すると、2項係数の和が要求されるのでそれを何とか計算していきます。

 

ちなみに、(3)の積分だけなら、大学で習う「ベータ関数」の知識を使うとあっさり計算できてしまうので、別解として紹介しました。

( ベータ関数についてはこちら(1/2)!=???  ~階乗の一般化:ガンマ関数・ベータ関数~ - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com) )

 

<筆者の解答>