ちょぴん先生の数学部屋

数学の楽しさを、現役メーカーエンジニアが伝授するぞ!

令和の九大理系後期数学 -2024年-

先日行われた2024年度の九州大学の後期数学を解いてみました。

第1問

円と球に関する問題です。

 

(1)円の方程式を立てて、A~Cを通る条件から3本の方程式ができるので連立させます。

今後の都合上、この円にΓと名前を付けます。

 

(2) Eの座標は、Γ上にあることから三角関数を使ってパラメータ表示できます。この状態で△ABEの面積の式を求め、それが25になる条件を調べていきます。途中三角関数の合成が出て来ますが、九大を受ける受験生であれば問題ないですよね。

対応するEの座標が2種類出て来ますが、問題文にあるx座標>y座標の条件から1つに絞れます。

 

(3)考える球面をSとすると、Sが少なくともA,B,Eを通るので、Sとxy平面の交線はΓになっているはずです。そこからSの中心のx,y座標はΓのそれと一致すると分かるので、あとはDを通る情報から中心のz座標と半径が分かるわけです。

 

すると、四面体ABEPの体積が最大になるのは、底面が△ABEで固定なのだからPがz座標最大になる時ですね。体積が3V/5になっているなら、Pのz座標も最大値の3/5になるという話になります。

 

<筆者の解答>

 

第2問

数列の問題で、(3)までは容易なものの(4)が飛びぬけて難しい問題です。(4)は本セット最難問であり、本番では捨てるのが正しかったと思います。

 

(1)(2)

よくある3項間漸化式ですが、今回は特性方程式が重解を持つパターンで関係式が1つしか求まりません。ですが、その場合は大概等差数列の形に帰着できるので厄介事はありません。

 

(3)数学的帰納法を利用すればよいでしょう。

 

(4)前述の通り、この小問だけが飛びぬけて難しいです。

問題文に長ったらしいヒント文がありますが、私はそのヒントを使った解法を思いつくことができなかったため、あえてヒントを無視した解法で解きました。

 

とりあえずan(x)=0の解がキーになっているので、具体的に調べてみることにします。

 

n=3ぐらいまででは気付きにくいのですが、n=4での解の形を見るとピンとくる人がひょっとしたらいるかもしれません。「n=4での解って、cos72°の形に似ているぞ?」と。

 

この気付きからn=3までの解も振り返ってみると、何と解が全てx=2cos{ kπ/(n+1) } (k=1,2,・・・,n)の形になっているのです。

 

もしこれが偶然でなく必然なのであれば、全ての解が確かに絶対値2未満に収まる実数ですし、全て互いに相異なりますので、題意をばっちり満たすことになります。

 

なので、この仮説が正しいことを帰納法で証明していきます。

 

そのために、x=2cosθと変数変換してan(x)を変形してみます。経験がないと気付きにくいのですが、θの式に書き換えるとan(x)=sin(n+1)θ/sinθとなることが分かります。

 

これが分かることで、上記の仮説が無事立証されます。

 

あとは、角度の大小関係から、解が交互に並ぶことを示すことができます。

 

余談ですが、an(x)は以前ご紹介した第2種チェビシェフ多項式そのものになっています。内積の概念を関数にも・・・直交多項式 その1 ~チェビシェフ多項式~ - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com)

正直この背景知識があったからこそ(4)の解法が思いつけた節が強いですね。

 

問題文のヒントを利用した解法も、後日考えてみることにします。

 

 

 

[追記] 問題文のヒントに沿った別解を思いつきましたので、追加します。

 

証明したいことは、-2とc1の間、c1とc2、c2とc3、・・・、cnとcn+1の間、そしてcn+1と2の間、計n+2区間に1つずつ実数解が存在することです。

 

区間の両端の値が異符号であればその区間の中に少なくとも1つは実数解がなければいけなくて、an+2(x)=0はn+2次方程式なので実数解の個数は最高でもn+2まで、という事実から、各区間の実数解が1つずつだ、と言えそうです。これを帰納法の文脈で証明していきます。

 

この両端の値の正負を調べるのにヒントの因数分解が役に立つというわけです。

 

おそらくこれが出題者側が想定している解答だと思います。

 

<筆者の解答>

 

↓(4)のヒントに従った別解です。

 

第3問

確率漸化式の問題です。

 

今回の問題、いきなり(3)が求まってしまい、そこから芋づる式に(1)(2)が求まる格好なので、まとめて解説してしまいます。

 

複素平面において「iをかける」という操作は、原点周りに90°回転させることと対応しています。i^2=-1は符号反転、i^3=-iは-90°回転です。なので、今回zが取りうる値は1,-1,i,-iの4種類しかありません。

 

なのでPnはzn=1となる確率と同義で、Qnはzn=-1となる確率と同義になります。zn=iとなる確率をRn, zn=-iとなる確率をSnを新たに定義してあげれば、この4つの確率で漸化式を作れます。

そして、この4つの確率の和が1なことを利用すると、Pnだけの漸化式とQnだけの漸化式が即座に作れてしまいます。この2つは単純な2項間漸化式なので容易に解くことができてしまいます。

 

このPn, Qnの一般項から(1)も(2)も簡単に分かってしまうわけです。

 

<筆者の解答>

 

第4問

4次関数と接線に関する問題です。

 

(1)これは教科書レベルでしょう。

 

(2)Cとlを連立すると、(x-k)^2と残りの2次式に因数分解されます。解の個数が2つしかないということは、(i)残りの2次式=0がx=kとそれ以外の2解を持つ、(ii)残りの2次式=0がk以外の重解を持つ、の2パターンが考えられるのでそれぞれ検討します。後者の場合がk=1の場合に相当します。

 

(3)積分計算を行うのですが、せっかくなら因数分解した形で行いたいですね。その状態で積分区間下端が0になるように変数変換すると見通し良く計算できます。

 

<筆者の解答>