ちょぴん先生の数学部屋

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令和の一橋後期数学 -2023年-

先日行われた2023年度の一橋大学の後期数学を解いてみました。

※一橋の後期は文系向けにも関わらず数Ⅲが出題範囲に含まれています。なので、どうしても数Ⅲの知識が不可避な問題については「※数Ⅲ必須」とコメントを付けておきます。

第1問

 

整数問題です。

 

2023が7×17^2と素因数分解できるので、与式は√m+√n=17√7とできます。

このとき、m,nはともに「7×平方数」の形でないといけないと分かります(m=の形にするとそのことが証明できます)。こうなれば、m=7a^2, n=7b^2とすると与式はa+b=17という超絶シンプルな式になります。

 

答案の前半部分は方針を検討してる途中過程なので、参考程度にして頂ければ大丈夫です。

 

<筆者の解答>

 

第2問※数Ⅲ推奨

 

互いに外接する3つの球面に関する問題です。

 

まずは、△A1A2A3の各辺の長さをxの式で表すことが先決です。答案では半径を一般化して公式を導出した後にそれぞれ計算しています。

 

こうすると、余弦定理によってcosθがxの式で表現できるので、あとはxを動かした時のcosθの値域が分かればよいことになります。そうなるとxの範囲が気になってきますが、これは三角形の成立条件から調べることができます。

 

cosθの値域を調べたければ実質x+1/xの値域を調べればよいわけですが、最小値については相加相乗平均で調べられるものの、最大値がよく分かりませんね。

 

一応、f=x+1/xとおいて、これをxの2次方程式と見なしたときに上記の範囲の実数解を持つようなfの条件、という形でも処理出来なくはないですが、非常に面倒です。

 

ここは結局、x+1/xをxで微分してしまうのが最も簡便です。冒頭で「数Ⅲ推奨」としたのはこれ故です。数Ⅲ要素は高々1/xの微分だけなので、これくらいは文系の受験生でも知ってて損はないです。微分なしだと上述のようにかなり面倒になってしまうので。

 

<筆者の解答>

 

第3問

 

確率漸化式の問題です。

 

まずは時刻nでA,B,C,Dにいる確率をan, bn, cn, dnとして、それぞれの漸化式を表から作りましょう。話はそれからです。

 

(1) a1=b1=d1=0, c1=1に注意して漸化式を使ってb3を計算すればよいです。

 

(2)これは漸化式をよく観察しないと糸口が掴めないでしょう。

漸化式の右辺を覗いてみると、4本すべてについてbnとcnの係数が一致しています。ということは、bnとcnはbn+cnと一まとめにして考えれば良さそうですね。

 

実際にbn+cnの漸化式を作ると、an+bn+cn+dn=1を使えばan, dnを消去でき、完全にbn+cnだけの漸化式にできます。

この漸化式を解いた結果をbnの漸化式に代入することでbnが求まります。

 

但し、n=1の場合だけn≧2での一般項と値が一致しないので例外扱いする必要があります。この点に要注意です。

 

<筆者の解答>

※1枚目の右側に一部(2)の没案が入り込んじゃってますが、気にしないで下さい。。。

 

第4問

 

3次関数の接線に関する問題です。

 

Pのx座標をtとして、Qの座標と、P,Qでの接線の式をtで表していきましょう。

 

この両接線が直交するなら傾きの積が-1になるので、そこからtの4次方程式ができます。この4次方程式が実数解を持つようなaの条件を調べればよいわけです。

 

この4次方程式は実質t^2の2次方程式となっており、tが実数ならt^2は負にならない、という点に注意が必要です。

 

[訂正] 最後の場面で分母分子をひっくり返し損ねてました。正しくはa≧4/3です。

 

<筆者の解答>

 

第5問[Ⅰ]

 

第5問は恒例の選択問題です。[Ⅰ]の方は数列の問題でかなり面倒な問題です。数Ⅲが理解できている受験生なら迷わず[Ⅱ]を選択してください。

 

こちらの漸化式ですが、ここから直接anを調べることは無理そうなので、n=1,2,3あたりで実験して様子を見てみましょう。n=4くらいまで検討すれば規則性が見えてくるはずです。

 

anの形の予想ができたら、あとはこれを数学的帰納法で証明するわけですが、まぁその過程の計算が長い事長い事・・・かなり面倒な処理です。

 

去年の問題もそうでしたが、数Ⅲができないことによるディスアドバンテージが凄まじいことになっています。

 

<筆者の解答>

 

第5問[Ⅱ] ※数Ⅲ必須

 

円周率が3.1よりも大きいことを証明する問題で、あの有名な東大の問題を彷彿とさせます。とはいえ、こちらは誘導が丁寧なので、それに従っていれば方針に迷うことはないでしょう。

 

(1)π/12=π/3-π/4を利用すれば加法定理で計算できます。

 

(2)左辺ー右辺を微分して増減を調べる数Ⅲの典型問題です。

 

(3)これまでの誘導から、(2)の不等式にx=π/12を代入すればよさそうです。最終的には√3の近似値が必要ですが、今回は小数点3桁の精度で評価すれば十分です。「人並みにおごれや」です。

 

<筆者の解答>