ちょぴん先生の数学部屋

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平成の東工大数学 2018年

理系数学の最難関の一角、東京工業大学の2018年の問題を取り上げます。

第1問

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2次方程式虚数解の配置についての問題です。式のシンプルさに反し、なかなか複雑です。

 

(1)2次方程式の2つの虚数解は互いに共役の関係にあるので、必ず実軸対称になります。2組の共役な虚数があれば、実部が一致していれば1直線上に並び、そうでなければどうなるか?を考えることになります。

問題文で「同一円周上」と言っているので、最初からそんな理想的な円の式を仮定して中心の位置と半径を求めてしまいましょう。実軸対称なので、円の中心は実数になることに気付けると見通しが良いです。

 

(2) ③の解が(1)で求めた円周上にあればよいのですが、必要十分条件となると漏れが起きやすくなるので注意が必要です。特に、(1)の前半で考えた実部が一致するケースはNGです。なぜなら実部が一致するとき虚部が一致していないので、①~③の解が完全一致することがなく、別々の点が1直線状に並んでしまうことになるからです。これでは円周上に並びようがないですね。

 

<筆者の解答>

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第2問

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一次不定方程式の整数解を求める問題です。2文字のケースは典型問題ですが、3文字の場合はなかなか面倒です。しかも(1)の段階で、(2)の設定を見越した処理ができないと痛い目を見ます。

 

(1) 3文字の場合の1次不定方程式の解は、一般に2文字の任意の整数a,bを使って表現することができます。そして、例えばxをaだけの式で、yをbだけの式で書くと、zはaとbの混じった式で書けます。

ここで、(2)の問題文を先取りして読んでみると、「x^2+y^2を最小化せよ」と訊かれています。このとき、xがaだけの式で、yがbだけの式で書けていれば簡単に処理できるのですが、もしx,yがa,bの混じった式になっていると、2乗を展開して改めて平方完成をしないといけなくなり最小値を求める作業が難しくなってしまいます。

よって、(2)を見越したうえで、2文字混じった式をzに押し付けられるように(1)を解いておかないと、(2)が大変になってしまうわけです。

 

さて、(1)の解法に話を戻すと、35=5×7, 91=7×13, 65=5×13 となっているので、5,7,13で割った余りをそれぞれ考えれば良さそうです。

前述のようにzを後回しにしてx,yの式を先に求めたいので、zが消えるような素数、5か13で割った余りから考察するようにします。5で割った余りを考えればyが、13で割った余りを考えればxが求まります。x,yが求まればzが求まり、zにa,bの両方を押し付けられます。

このようにして方程式の一般解が求まるので、あとはa,bに好きな整数を入れてください。

 

(2) (1)の方針で解くと、x^2 + y^2 = (aだけの式)^2 + (bだけの式)^2 となり、aとbは独立して決められるので、単純にx^2を最小化、y^2を最小化とできるようになります。こうしたかったがために、zにa,bの混じった式を押し付けたわけです。

 

<筆者の解答>

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第3問

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方程式の解の和の極限を調べる問題です。

 

(1) 定石通りに f(x)= e^x (1-sinx) -1 としてy=f(x)の増減を調べます。f'(x)を計算すると、f'(x)の正負を決める部分が三角関数だけの式になります。よって、極大値と極小値が2πの周期で現れることが分かるので、増減表は2mπ≦x≦2(m+1)π (m:整数)で書いてあげれば十分です。

極小値は常に-1なので、極大値の符号がどうなるかを調べましょう。

 

(2) (1)の結果からy=f(x)のグラフが描けるので、anがどこにいるのかを不等式で挟んで評価することができます。それを使ってはさみうちに持ち込んであげればよいのですが、nの偶奇によって不等式が変わるので場合分けが必要になります。

 

<筆者の解答>

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第4問

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体積を計算する問題ですが、(1)の意図をきちんと汲み取って(2)に生かす必要があります。

 

(1) 直線と平面の交点の座標を求める問題です。通る点の情報と法線ベクトルの情報からHtの式がでてきて、Lθの式は容易く出てくるので、両者を連立してあげればよいでしょう。今後のために、ここで求めた交点をQとします。

 

(2) いきなりこの問題文が出ていたら超難問ですが、(1)がちゃんとヒントになっています。どうヒントになっているかを考えてみます。

まず、Htは、回転軸に垂直で原点からtだけ離れた平面になっています。次に、Lθについては、θを動かしてあげるとVの側面その物になります。(1)ではHtとLθの交点Qを求めさせていました。

以上を総合すると、θを一周させたときのQの軌跡こそが、VをHtで切った断面を作ることになります。この断面の外周(つまりQの軌跡)をCtとし、問題文にある「lを回転軸としVに含まれる立体のうち体積が最大のもの」をV'とすると、

「Ctにすっぽり収まるPt中心の円のうち半径が最大のもの」がV'の断面になります。

よって、この半径の最大値が求まってしまえば、V'の断面積が求まり、tで積分すればV'の体積が求まるという流れに持ち込めます。

この半径の最大値は、「PtとQとの最短距離」と言い換えられるので、「PtとQとの最短距離」を求める作業に終始することになります。

本質的にcosθの2次関数となるのですが、tの値によって最小値の場合分けが発生することに注意しましょう。

 

<筆者の解答>

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第5問

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確率漸化式の問題です。

 

(1)問題文のルールに従って、A~DからAに2回の操作で移動させる方法を考えて漸化式を作ります。

 

(2) (1)と同じように、bn+2, cn+2, dn+2の漸化式も立てます。ここからan-bn+cn-dnの漸化式を作ると等比数列の形になります。番号が一個飛びの漸化式なので、nの偶奇による場合分けが発生します。

 

(3) (2)と同じ要領で、an+bn-cn-dn, an-bn-cn+dnの2つについても一般項を求めてしまいます。コツは、anの係数はプラスに固定して、2つのマイナスをどの2つに振り分けるかを考えることです。

こうして(2)を含めて3つの一般項が求まったのですが、もう一本がないとbn,cn,dnが全部消えてくれません。ここで意外に盲点かもしれませんが、an+bn+cn+dnの一般項は簡単に分かりますので、これを4つめの一般項とできます。こうしてanだけの一般項が求まります。

 

<筆者の解答>

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