みなさん、こんにちは。
今回は、高校数学で習う「階乗」の一般化にあたる、「ガンマ関数」について紹介します。
1. ガンマ関数
1-1. 定義
ガンマ関数は、以下のように積分を使って定義されてます。
変数はsで、定義域は「実部が正の複素数全体」、実数に限定すれば「正の実数全体」となります。
実は、この関数は高校数学でお馴染みの「階乗」を、自然数だけでなく正の実数全体に拡張したものになっています。
1-2. 「階乗」の一般化になっていることの証明
「階乗」の一般化になっていることを、証明してみます。
Γ(s+1)を一回部分積分すると、下のようになります。
sを自然数nに限定してこの関係式を繰り返し使うと、
このようにΓ(n+1)はn!だと求まります。(Γの中身と階乗の中身が1ずれて定義されているのが気持ち悪いですが、このように定義するのが流儀になってます。)
sが自然数の時はこのようにガンマ関数は階乗になるのですから、逆に、sが自然数でない場合もこのガンマ関数の結果を「階乗」と見なすことができます。
(※厳密には、複素関数の「一致の定理」の考え方から、階乗をガンマ関数を使って「正の実数全体」に「解析接続」できる。というロジックです。解析接続については、この記事で紹介しています。1+2+3+・・・= -1/12 !? ~解析接続の不思議な世界~ - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com) )
1-3. (1/2)!の計算
というわけで、実際に自然数でない正の実数に対して「階乗」を計算してみましょう。
例として、(1/2)!と(3/2)!について計算します。
まず、(1/2)!については、部分積分を駆使すると最終的に「ガウス積分」の形にできて計算可能です。(ガウス積分についてはこちらを参照。ガウス積分 ~統計学で最も重要な積分~ - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com) )
この結果を利用すると、ガンマ関数の性質から(3/2)!も計算できます。
このようにすれば、「中身が正の半整数」の場合の階乗は全て計算可能ですね。
2. ベータ関数
最後に、派生形である「ベータ関数」を紹介しておきます。
ベータ関数は、以下のように定義される2変数関数です。
sやtが自然数の場合は、時々大学入試にも出題されることがあります。実際にその場合を計算すると、部分積分を使って、次のようになります。
このように最終結果は階乗ばかり含むものになりますので、同様にs,tを正の実数全体に拡張してあげれば、ベータ関数はガンマ関数を用いて次のように表せます。
ガンマ関数やベータ関数は、物理や工学の計算の途中過程で頻繁に登場する積分計算なので、これらを知っていると計算の見通しが良くなります。