先日行われた2023年度の東北大学の後期数学を解いてみました。
第1問
領域の包含関係についての問題です。
(1)これはE1, E2の境界の交点の情報を調べれば容易いでしょう。
(2)Eの境界線となる曲線をy=F(x)としたとき、2x^2 +2ax -b ≧ F(x)が任意のxで成立していればDの全てがEに含まれることになりますので、この条件を処理していきます。
が、(1)で調べた通りF(x)は途中で形状が変わるため、xの値による場合分けが発生し実際にはかなり面倒です。
<筆者の解答>
第2問
格子点の集合について考察する問題で、文句なしで本セット最難問です。(1)はともかく、(2)は試験場で解き上げるのは相当無理があり、捨てるべきだと思います。
(1) 条件(i)と(ii)の時点で5点は少なくともPの要素として確定します。残りの4点がPに入りうるかを考えていきます。この場合、4点のうちの1点が含まれると仮定したときに(iii)に照らし合わせて他の点が入るか否かをチェックします。
すると、この4点が丸ごとPに入るか、丸ごとPに入らないかの2択であることが分かります。
(2)上記の通り、この(2)は捨て問です。
(i)から対角線の4点はPの要素として確定するので、残りの12点について考えていくのですが、(ii)よりy=xに対する対称性があるため、実質6点分を考えることになります。
このy=xについて対称な2個ずつの6セットが、どのような組み合わせでPに入りうるかを検討するわけですが、組み合わせの数が多く大変です。
1セットだけ追加される場合、2セット追加される場合、・・・と考えていくと、1セット追加の場合は他のセットが巻き込まれないため、これだけで単独でPになります。ですが、2個以上セットを追加する場合は、(iii)によって他のセットも入らないといけない!などとなっていきます。
実験をいくつか行うと、座標値に注目すると、
・数字のaだけが孤立し、残りの3つの数字は関連しあっている (a=1,2,3,4)
・数字のa,bがそれぞれ孤立し、残りの2つの数字は関連しあっている (1≦a<b≦4)
・数字のa,bが関連し合い、かつ数字のc,dが関連し合い、この2つの間は関連がない
・数字の1,2,3,4の全てが孤立している
・数字の1,2,3,4の全てが関連している
という大きく5パターンに分かれることが分かります。
これは、大学の線形代数の序盤で習う「互換・置換」の考え方そのものです。
(参考文献:巡回置換、互換、符号など「置換」の全てをまとめました! – 「なんとなくわかる」大学の数学・物理・情報 (krrk0.com) )
私自身、学生時代に苦手としていた分野であり自分で説明できるだけの理解が及んでいないネタになりますので、詳細は上記のサイトをご覧いただければと思います。
それはともかく、上記のパターン分けに気付いてしまえば、それぞれの組み合わせの個数を調べて足し上げればいい、という感じになります。
但し、それ以外の場合があるのか調べ切れていないのもあり、この解答にあまり自信はありません。すみません。
(というか、この問題の本質が「互換・置換」だと気付くまでに1時間以上かかってました)
<筆者の解答>
第3問
ベクトルの不等式証明の問題です。
各ベクトルを成分でおいて左辺ー右辺を計算すると2乗の和になる、で瞬殺です。第2問に対してこのあっけなさは一体何なんですかね・・・
<筆者の解答>
第4問
約数の和を題材にした整数問題です。
(1)30の約数を全部調べて力ずくで足し上げるのもなしではないですが、(2)以降を考えると、σ(n)= (素因数の等比数列の和)の積という一般的な公式を使うべきでしょうね。
(2)上記の公式で考えると、nとpが互いに素なのでσ(pn)=σ(p)σ(n)とすることができます。
(3)nが素数の場合と、n=p1×p2×・・・×prの場合とで場合分けして考えます。
前者のnが素数の場合なら、σ(n)=n+1なので簡単です。
後者の場合は、σ(n)=(1+p1)×(1+p2)×・・・×(1+pr)と書けて、2≦p1<p2<・・という条件からr=2,3に限られることが分かります。それぞれについて、因数分解の形からp1, p2, p3を特定していきましょう。特にr=3の場合は実は(1)で調べています。
<筆者の解答>
第5問
複素数平面の問題です。
(1) L上の複素数はz=(1+i)t (tは実数)と書けるので、方程式に代入してtの恒等式に持ち込むとよいでしょう。
(2) z=x+iyをそのまま不等式に代入して同値変形するとx>yが求まります。
<筆者の解答>
第6問
極限の計算問題です。
(1) Sn=Σ1/mとして、面積を使ってSnを不等式評価すればよいです。
(2)最終形から逆算すると、部分積分は「分子を積分、分母を微分」の方針で進めればよさそうだと分かります。
(3) (1)の結果を考慮すると、amのうち極限の値として生き残るのは先頭の1/√2nだけだと予想できます。第2項はΣを取ると部分分数分解で1/nの1次式となるため0に収束し、第3項については積分値が0~1の間の値となることからやはり0に収束します。
ということで、積分値の不等式評価を使ってはさみうちに持ち込むのが良いですね。
<筆者の解答>